アレルギーを克服するために (5) アトピー性皮膚炎とかゆみ 2015/9/20

アトピー性皮膚炎は強いかゆみを伴う慢性の皮膚疾患で、よくなったり、悪くなったりを繰り返します。多くの患者さんで血中 IgE 抗体のレベルが上昇しており、アトピー素因が関わると推定されますが、2 割程の患者さんでは血中 IgE 抗体レベルの上昇は認められません。

かゆみはアトピー性皮膚炎患者さんを悩ませる最も大きな問題で、掻くことが皮膚炎を悪化させる最も重要な因子です。掻くことでかゆみが増し、また、皮膚炎も悪化してかゆみが誘発されやすくなるという悪循環が形成されます。

かゆみとは掻きたいという衝動をひき起こす感覚をいいます。アトピー性皮膚炎ではかゆみと掻くこと (掻破) との悪循環が形成されます。かゆみは皮膚の炎症の他、衣擦れ、温度など、様々な環境因子によっても誘発、増強されます。ストレスも重要な因子です。掻くことが習慣になっている場合もあります。

患者さんの手が届かない、背中の上部中央にはしばしばきれいな皮膚が残されますので、掻かなければ皮膚がきれいに保たれることが分かります。また、一部の患者さんでは掻くことが習慣になっており、かゆくないのに掻いてしまい、かゆみを誘発してしまうことがあるようです。掻くことを控えることができれば皮膚症状はよくなるとのことです。

かゆみを抑え、かゆみと掻くこととの悪循環を断ち切ることが患者さんの苦痛軽減、症状改善に役立ちます。現在、かゆみを抑える薬の開発研究が活発に進められています。

アトピー性皮膚炎の薬物治療の中心はステロイド外用剤です。皮膚炎の程度に応じたステロイド外用剤を選び、十分量を用いて炎症を鎮静化します。その後、ステロイドを徐々に減量し、維持療法へ移行しますが、このときにステロイドを中止する場合をリアクティブ療法といいます。近年、ステロイドの使用を間欠的に継続するプロアクティブ療法が勧められるようになりました。

ステロイドの副作用を心配する患者さんは多く、自身の判断で使用を中止したり、使用量を控えめにすることがあるようです。ステロイド治療が不十分になると皮膚炎が再燃しやすく、重症化にもつながるとのことです。専門医の指導を受け、適切な薬物治療を心がけることが大切です。

ステロイド治療によって炎症が鎮静化するとかゆみも軽減しますが、ステロイドには直接かゆみを抑制する効果は期待できないようです。10 年ほど前から使用されているタクロリムス外用剤にはかゆみ抑制効果が期待できる可能性が示されています。

稲垣直樹 薬学博士 岐阜薬科大学薬理学研究室教授

岐阜薬科大学大学院薬学研究科修士課程修了後、岐阜薬科大学助手に採用 (薬理学)。講師、助教授を経て平成 17 年教授昇任。平成 19 年より岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科教授を兼担。薬学博士。

岐阜薬科大学薬理学研究室は昨年開講 50 周年を迎えました。開講当初よりアレルギーの基礎研究を継続しており、実験動物を用いて病態モデルを作成し、病態モデルを用いて治療薬の開発を目指しています。特にアトピー性皮膚炎に伴う痒みに関心を持っています。

本ブログではアレルギーについて理解を深めていただくため、いくつかの話題を取り上げ、簡単にご紹介いたします。

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