【地名の由来15】「知立」が「池鯉鮒」と書かれたのはなぜ? 2012/10/4

「鯉」や「鮒」にちなむ知立神社(多宝塔)

「知立」と書いて「ちりゅう」と読めと言われれば、「なるほど」と納得するのですが、それにしても珍しい地名ですね。関東では「りゅう」と「ち」にアクセントを置いて読んでしまうのですが、愛知ではもちろん「ち」と「りゅう」にアクセントを置いて発音します。

この地は古代から「知立」「智立」と表記され、そのルーツはこの地に鎮座する知立神社にあることは事実のようです。由来に関しては諸説ありますが、いちばん信憑性の高い説は、知立神社の御祭神とされる「伊知理生命」(いちりゅうのみこと)の「知理生」(ちりゅう)に由来するというものです。ただし現在祀られている神様の中には「伊知理生命」はなく、この神様は謎に包まれています。

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この「知立」はなぜか鎌倉期以降になると「智鯉鮒」と書かれることになり、江戸時代になると「池鯉鮒」が一般的になります。東海道の宿場としては岡崎宿(三十八次)に次いで池鯉鮒(知立)宿が三十九次でした。

神様に由来する「知立」がなぜ「池鯉鮒」つまり「池の鯉や鮒」に変わってしまったのでしょう。それは昔の人々のユーモラスな遊び心によるものといえるでしょう。今の知立神社に行ってみればわかることですが、土地の低い所に神様は鎮座されています。いわばここに池があって昔は鯉や鮒の産地であったということです。

きっとこの地でとれる鯉や鮒は美味で、旅人があの宿に入れば美味しい川魚が食べられるという思いで池鯉鮒宿を目指したに違いありません。現代でも旅の楽しみは現地の美味しいものを食べることに尽きると言ってもいいからです。

東京の上野の北に「日暮里」という街があります。戦国時代に開発された時は「新堀」(にいほり)、つまり「新しい堀」だったのですが、江戸時代の後期には「日暮里」と書かれるようになり、誰いうともなく「日暮らしの里」と呼ばれるようになっていったのです。これは江戸文人の高貴な遊び心によるものでした。

この「知立」にも同じことが言えます。知立神社近くの池で獲れる鯉や鮒を食べるのを楽しみに必死に歩き続ける昔の旅人の姿が目に見えるようです!「日暮らしの里」が絵になるように、この知立も立派な絵になっているのです。知立には昔からそのような文人墨客が行き交っていたのでしょう。

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プロフィール

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ノンフィクション作家

1945年長野県松本市生まれ。東京教育大学(現筑波大学)、同大学院博士課程修了。筑波大学教授、理事・副学長を務めるも、退職と同時にノンフィクション作家に転身。

柳田国男研究をベースに、学問の狭い枠を超えた自由な発想で地名論を展開。最近出した『名古屋 地名の由来を歩く』(ベスト新書)、『地名に隠された「東京津波」』(講談社+α新書)はそれぞれご当地でベストセラーに。新著『名古屋「駅名」の謎』が好評発売中。

その他、「地名を歩く」シリーズでは「京都」「東京・江戸」「奈良」編、「駅名の謎」シリーズでは「大阪」「京都奈良」「東京」がある。テレビ・ラジオなどでも活躍。博士(教育学)。

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