<第39話>春場所展望 琴奨菊の大きい自信 2016/3/11

ずばり春場所は白鵬が優勝候補の本命です。

優勝35回を誇る大横綱だけに、先場所の千秋楽の集中力が欠けた相撲は残念でした。琴奨菊の優勝が決まった後の日馬富士との横綱同士の結びの一番。ああいう相撲は取ってほしくなかった。大横綱の「大」の字が泣きます。体調うんぬんより気持ちの問題です。勝ってこその白鵬であり、強さを見せてこその白鵬なのです。

優勝から4場所遠のき、話題が他の力士に向けられて、白鵬の存在感が薄くなりかねません。春場所は自分が絶対に優勝しなければならないと言い聞かせて臨むと見ています。全勝は難しいかもしれませんが、今までにない、これまで見せたことがなかった姿でもう一度蘇ってくれると思っています。

稀勢の里はあきらめたと言いたいのですが、まだあきらめません。それにしても碧山など苦手にあっさり負けるのには、進歩がなさすぎると言わざるをえません。ひと足先に大関になったのが琴奨菊ですから、刺激され奮起して、違った姿を見せてくれるのではと密かに期待しています。

もともと力は横綱級であることは周囲が認めるところですから。ファンの歯がゆい気持ちにどこまで応えられるか、精神面ひとつにかかっています。勝とう、勝とうと思わず、自分の力を信じて臨めば、道は開けるはずです。どうしても気持ちが強すぎ、腰高のまま逆転を許す場面が改善されないところが何とも情けないのです。

最後まで優勝争いに加わって、決定戦に出るくらい頑張ってくれないと、今度こそあきらめざるをえなくなります。

佐渡ケ嶽部屋で汗を流す稀勢の里(右)と琴奨菊

琴奨菊は優勝したことの自信が大きいはずです。これしかないという、がぶり寄りで賜杯を手にしたわけですから、そのまま続ければ、夢ではなく綱取りが実現できるかもしれません。あれこれ考えず、ひとつにこだわる姿勢が彼の最大の武器なので貫いてほしい。「琴バウアー」などというパフォーマンスの話題が先行するようでは、前途は厳しいでしょう。

カド番大関が2人います。照ノ富士と豪栄道。それだけに波乱の要素は十分あります。

照ノ富士は稀勢の里戦で痛めた左膝をかばうあまり右膝も痛めてしまい、その右膝を手術して臨む場所となります。膝の状態が完治してはいないと思われるので、受けの相撲を取らないこと。自ら攻めることが必要です。受け止めて料理しようとすれば、必ずまた両膝に負担がかかり、故障しかねません。

豪栄道は右腕が思うように使えない状態だったのがどこまで回復しているか、不本意な成績に終わってしまった反省をどう生かすかでしょう。もともと守りから逆転の相撲が多く、よほどの工夫をしない限り厳しいと見ます。前に出て攻める気持ちを前面に出すこと。低く食らいついたら真価を発揮する力士だけに、懐に飛び込んで攻める形を思い出してほしいです。

先場所、新入幕で三賞を獲得した正代は前頭6枚目まで昇進しました。横綱大関とは対戦しない地位ですから、勝ち越しはもちろん、2桁勝つ可能性も十分あります。序盤大勝ちすれば、終盤横綱大関と対戦するでしょうから、今後が占えるはずです。

人気力士として注目を集め続けてきた遠藤と大砂嵐が十両に陥落したのは残念ですが、ケガ故障さえ治れば、幕内に返り咲くのは間違いありません。大器と期待されるだけに、無理をせず完治を第一に考えてほしいと思います。

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プロフィール

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日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

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