薬の飲み合わせを避けるためには?(2)〜お薬手帳を利用しよう〜 2016/4/21

「薬の飲み合わせを避けるためには?」3回シリーズの2回目は【お薬手帳を利用しよう】です。

薬剤師の重要な仕事に飲み合わせの防止があります。薬剤師は飲み合わせの悪い組み合わせが処方された場合にはそれをチェックし、処方した医師に伝えて薬の変更を相談します。しかし、医師や薬剤師でも飲み合わせのチェックがしにくい場合もあります。

「ソリブジン事件」という薬害が飲み合わせの恐ろしさを示しています。ソリブジンは帯状疱疹(皮膚病)の特効薬として開発され、1993年に発売されました。しかし、発売後の約1か月間にソリブジンを服用した15名の患者さんが死亡してしまいました。

死亡したすべての患者さんは、フルオロウラシル系という抗がん剤も同時に服用していました。ソリブジンと抗がん剤の飲み合わせが悪かったのです。ソリブジンは肝臓でこの抗がん剤を分解する酵素の働きを止めてしまうため、抗がん剤が肝臓で分解されずに体内に蓄積してしまい、蓄積した抗がん剤の量は通常の10倍以上になってしまいました。

抗がん剤は通常の量でも副作用が出ますので、10倍以上に蓄積した抗がん剤の副作用で患者さんが亡くなってしまったのです。この事件の最も大きな原因は、製薬会社がソリブジンと抗がん剤の飲み合わせの危険性を医師、薬剤師に十分に連絡していなかったことにあります。

もう一つ、重要な原因があります。ソリブジンは主に皮膚科の医師が処方する薬、フルオロウラシル系抗がん剤は主に内科・外科あるいは婦人科の医師が処方する薬であり、患者はそれぞれの薬を別の病院、診療所の医師から処方され、それぞれ別の薬剤師が調剤していました。

そのため、調剤した薬剤師は飲み合わせが危険な2種類の薬を患者さんが服用していることを知らず、飲み合わせをチェックできなかったのです。

「ソリブジン事件」のように、薬の飲み合わせは、異なった薬局で調剤された薬の間でも生じます。そこで重要になるのがお薬手帳です。お薬手帳には患者さんが飲んでいるすべての薬が記載されます。

他の薬局で調剤された薬がお薬手帳に書いてれば、薬剤師は患者さんが服用しているすべての薬を把握することができ、他の薬局で調剤された薬との飲み合わせもチェックできるのです。

私達が調査した結果、患者さんがお薬手帳を薬局に持参したおかげで複数の医師から処方された薬での飲み合わせがチェックできた事例が多くありました。お薬手帳があれば、ソリブジン事件も防げた可能性があります。

2カ所以上の薬局で薬を調剤してもらい、薬局毎に別々のお薬手帳を持っている患者さんがいます。これではお薬手帳は役に立ちません。お薬手帳は1冊にまとめましょう。お薬手帳は、飲み合わせのチェック以外にも役立ちます。

東日本大震災の時には、お薬手帳を持っている患者さんにはいつも飲んでいる薬を緊急の診療所でスムーズに処方することができました。熊本地震でも、医療機関と連絡できない場合には、お薬手帳があれば滅失等した薬を調剤することが認められています。

お薬手帳はいつも携帯していましょう。医師から検査結果のシートをもらった時はお薬手帳に貼っておくといいでしょう。これについては、次回の【かかりつけ薬剤師】の時にお話をします。

杉山 正 博士(薬学) 岐阜薬科大学実践社会薬学研究室教授

岐阜薬科大学薬学部卒業。1982年から25年間、岐阜大学医学部附属病院薬剤部へ勤務した後に、2007年4月に現職である岐阜薬科大学実践社会薬学研究室の教授に着任しました。2015年1月からは京都府立医科大学在宅チーム医療推進学講座の特任教授を併任しています。

研究室には、多くの病院薬剤師、薬局薬剤師が大学院博士課程の学生、研究生、客員研究員として在籍しており、医療の現場で直面している課題を解決するための研究を行っています。最近は、在宅医療を推進するための研究ならびに地域薬剤師の生涯研修にも取り組んでいます。

本ブログでは、お薬を安全に飲み続けるためのコツを、特に飲み合わせに焦点を当てて、わかりやすくお伝えしたいと思います。

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