<第44話>夏場所をふりかえって 2016/5/26

稀勢の里は残念でした。

白鵬の強さを改めて知らされた場所でした。白鵬は立ち合い張って、右腕を「く」の字に曲げ、相手の左ひじ、左あごを強襲して前へ出る取り口が目立ちました。

初顔合わせの相手、正代などには右の強い張り手でいっぺんにぐらつかせ、上位の壁を認識されるような相撲でした。荒っぽい取り口が気になりましたが、逆に言えば、横綱に楽しみながら相撲を取られる相手にも問題ありです。

それにしても、鶴竜戦のように十分の体勢で相手に力を出させ、じっくり料理する(決まり手はうっちゃりですが、つり出しのほうがよい)余裕すら見せました。

千秋楽、うっちゃりで鶴竜を破り全勝優勝を飾った白鵬

白鵬の場合は気持ち次第です。目標を持ち、その気になれば、第2期白鵬時代に入ったとも言えます。

稀勢の里はこの2場所、敗れた相手が横綱だけですから、すっかり安定し、自信をつけたと見ます。綱がしっかり見えてきたことは間違いありません。名古屋場所最大の関心事です。

稀勢の里は13勝を挙げ、名古屋場所に綱取りの夢をつないだ

琴勇輝は負け越しましたが、押しに徹する個性を存分に見せ、三役にとどまる7勝をしたことは褒めたいと思います。小結の魁聖も地味ながら、勝ち越したことは立派です。前頭4枚目の栃ノ心が右四つの型を発揮し、技能賞を獲得しました。来場所は関脇に上がることでしょう。勢はムラがありすぎです。

正代は6勝止まりでしたが、妙義龍、勢戦での正攻法が光り、将来性を感じました。前頭8枚目の御嶽海の敢闘賞はだれもが認める活躍でした。正攻法の前へ出る相撲をこれからも続ければ、三役も見えてきます。遠藤の11勝は当然でしょう。足の故障をしっかり直すことです。

十両が面白い場所でした。宇良の最後まで粘っての逆転相撲。石浦の素早い動きなど、小兵の個性派が拍手を呼びました。幕下で優勝した小柳は、久しぶりの大物です。東京農大出身で身長185センチ、体重171キロ。春場所三段目格付け出しデビューで優勝し、今度は幕下優勝。将来の横綱候補と見ています。ケガの治った千代の国(三重県出身)とともに名古屋が楽しみです。

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プロフィール

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日本福祉大客員教授、元NHKアナウンサー・相撲ジャーナリスト

1930年、北九州市生まれ。早大卒業後、53年NHK入局。初任地は名古屋局で、自身初の大相撲実況は54年2月に金山体育館で行われた大相撲名古屋場所(当時は準本場所)。

NHK在職中は名古屋、福岡、大阪、東京と大相撲の本場所開催地の放送局に在籍。81年、大関貴ノ花引退の放送で思わず絶句。“泣きの杉山、泣かせの杉山”と異名をとる。相撲以外でも東京、メキシコ五輪をはじめプロ野球など各種のスポーツ実況を担当。

現在は日本福祉大生涯学習センター名誉センター長、客員教授。名古屋・栄の中日文化センター講座「大相撲の魅力を語る」で講師を務める。深い知識と豊富な経験を基に、講座で興味津々の話題を紹介してくれる。

著書に「大相撲この名勝負」「土俵の鬼三代」「兄弟横綱−若貴の心・技・体」「土俵のチンギス・ハーン 白鵬」「土俵の真実」などがある。

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