リニア・鉄道館に行こう(35) 軽量寝台客車オロネ10 2016/6/11

主に急行寝台車として活躍した、10系軽量客車オロネ10 27。窓周りがスッキリしているところに外観の特徴がある。

戦後の復興が進むと、国鉄の利用が年々増大するようになりました。ところが、当時主力だった蒸気機関車では、牽引両数に限界があります。そこで、当時の最新技術を使った軽量客車が設計されました。10系客車です。

10系客車は、昭和30(1965)年に試作車が誕生し、その後に寝台車が先行、続いて座席車も量産されることになります。新製された車両は、既存車両と置き換えるだけで良いので即戦力です。この柔軟さが、その後に主流となる固定編成車両と大きく違うところと言えましょう。

軽量にするために、車体の側面は少し湾曲しています。上の写真で、青いラインのところが最も膨らんでいることが見て判りますよね? この膨らみで車体強度を増しているのです。さらに、大きな窓の上下はツルンとしています。

4月28日に紹介したマイネ40の写真(当コラム最下部に、同記事へのリンクがあります)をみると、窓の上下にシル・ヘッダーと呼ばれる補強材が通っています。また、車体側面は垂直で湾曲していないことも見て取れます。新旧の構造の違いがご理解いただけることでしょう。
この張殻構造の技術を採用したことが、軽量化に大きく貢献しています。

リニア・鉄道館では、マイネ40とオロネ10が隣に並んでいます。それも、車端部が見学者側に向いていますので、ここに記した構造の差を自分の目で確認するのに、とても適しています。

車内は、通路の左右にボックス座席が並んでいる。窓下には開閉式のテーブルがあり、窓上には上段ベッドが収納されている。

オロネ10 27の車内を見てみましょう。通路を挟んで左右にボックスシートが並んでいます。このボックスシートは、背ずりを倒すと下段寝台になります。つまり、枕木とは直角に、レールと同じ方向に寝ることになります。

窓下のテーブルは、寝台使用時に邪魔にならないよう、開閉式になっていることも見て取れます。窓の上には、上段寝台が収納されているボックスが見えています。

このように個室でない開放式で、座席を倒して寝台にする方式を、プルマン式寝台とも呼びます。かつて英米の寝台車営業で名を馳せたプルマン社が提供するのが、主としてこのタイプの寝台車だったためのようです。

閑話休題
10系軽量客車は昭和30年に試作車が完成…と先に記しましたが、その技術は昭和33年に登場する日本のブルートレインの元祖、20系固定編成寝台客車に引き継がれます。さらに、その後に続く新系列客車も、同じような軽量構造となりました。

一方、このオロネ10形式は昭和34年の新製ですから、20系寝台車よりも後の登場です。これは、寝台特急列車には20系をはじめとした固定編成を使用する一方、当時、急激に需要が増えていた夜行急行列車には、A寝台車を増結することを意味していました。

ちなみに、リニア・鉄道館で見られるオロネ10 27は、昭和35年製です。この年まで、寝台車は3等級制でしたので、新製時には2等寝台車でした。ところが、翌昭和36年に2等級制になったため、1等寝台車と呼ばれるようになりました。

さらに、昭和42(1967)年に等級制が廃止され、A寝台車となっています。このときに座席車も、1等車・2等車から、今も続くグリーン車・普通車と呼び方が変わりました。

手前は、就寝時にカーテンを閉じた状態。その先は、上段にベッドメイキングをし、下段が座席の状態。

リニア・鉄道館のオロネ10 27はふだん車内に立ち入ることが出来ませんので、車内の様子は外から見える範囲に限定されています。しかし、今後は公開を予定しているそうです。その際に注目していただきたいのは、その車内の様子です。

上の写真にあるように、車両展示エリアから遠い側は、就寝時に通路側のカーテンを締めた状態を再現しています。続く車両中間付近は、上段の寝台をセットした状態を再現し、布団やシーツも用意されています。思わず、ここで横になって夢見心地になりたくなりますが、さすがにそれはできません。一方、下段は座席状態にしてあります。

その先の車両展示エリアに近い側は、先に紹介した座席状態です。かつての夜行列車は走行時間が長かったので、朝になると係員が乗り込んできて、寝台解体作業を手際よく行っていました。その昼夜それぞれの状態を、比較しながら見学できるようにしているわけです。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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