珈琲の旅〜福岡 Part5 前編  2016/6/8

福岡市赤坂にある「珈琲美美」

いつもありがとうございます。初夏を迎え、日差しが厳しくなって参りました。アイスコーヒーが美味しい季節になりましたね。

さていよいよ福岡珈琲の旅の最後になりました。福岡の珈琲店といえば、やはり「珈琲美美」さんですよね! モカ・コーヒーの世界の第一人者といってもいい方です。

森光宗男氏

「珈琲美美 森光宗男」
1947年福岡県久留米市生まれ、72年より5年間、東京吉祥寺「もか」標交紀(しめぎ ゆきとし)師のもとで珈琲を学ぶ、77年福岡市今泉で自家焙煎・ネルドリップの店を開き、2009年同市赤坂に移転、現在にいたる。

一階の豆売りコーナー

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「珈琲美美 プロフィール」・・ワタル(株)のホームページ「モカクラブ」より抜粋
言わずと知れた九州の名店‘珈琲 美美’。あくまでも「一杯の珈琲」から世界を観るという立場を貫き、ネル・ドリップの澄んだ珠玉の珈琲にこだわり多くの珈琲通が足を運びました。2009年5月、31年間店を構えた天神今泉を離れ赤坂、護国神社向かいへと移転されました。

白と木を基調としたおしゃれな外観から中を覗くとガラス越しに焙煎機が見えます。店内に入ると香ばしい珈琲の香りが優しく出迎えてくれます。1階では外から見えた焙煎室があり豆の販売を行っています。2階にあがると白を基調とした壁、ガラス窓を多く利用し開放感溢れる内装になっており、窓から眼にする木々は穏やかな気持ちにさせてくれます。

木造りのカウンターやテーブルは力強さと柔らかさを兼ね備えています。カウンター5席、テーブル4台(12席)。

オーナーの森光宗男氏は、幼少時代にハワイ・オアフ島に移民した叔母から送られて来るクリスマスプレゼントにワクワクしたと言います。その中には、アラビア人がコーヒーカップを持ったヒルズの赤い缶かMJBの缶がいつも入っており、当時の森光少年には、異国の香りと文化に大きな衝撃を受けたといいます。

その後、この叔母の下に居候するチャンスが訪れた森光青年は、そこで観た日系移民の生活にさらに大きなショックを受け、帰国後の1972年から5年間、名店‘吉祥寺もか’に入店し、標氏の指導を受けられました。

1977年の12月に現在の福岡市に‘珈琲美美’を開業しますが、アメリカン・コーヒー全盛時代の福岡では、深煎りのコーヒーはなかなか受け入れられず、開業当時はお客の来ない日が続いたそうです。

しかし、シャブシャブのコーヒーだけは絶対に提供すまい・・・と、舌に記憶している感動したコーヒーの香味を目標に、信念を持って営業しておりました。当時、個性を貫く頑固さに興味を持って応援してくれたお客さんに助けられ、現在まで来られたとオーナーは言います。

その後、清澄で、濁りのない微妙微細な‘美美’のコーヒー、福岡で支持されはじめるのにそれほど多くの時間はかかりませんでした。また、「モカだけに、あのスパイシーな香りがなぜあるのか?」という疑問からのスタートが毎年のようにイエメン、エチオピアに足を運ばせ、2009年の1月もエチオピアを訪問されました。

今でもイエメンの急な山岳地帯に植えられたコーヒーの木を見た時に神秘の植物であると感じるそうです。祖先が大切に残してくれた恵みのコーヒーは、歴史という時間を経ても変わることなく受け継がれ、今の姿を保っています。

ネル・ドリップ法の先導者でもあった標氏の偉業を尊ぶ森光氏や門下生は、更なるネル・ドリップの普及に努められています。珈琲美美では、ネル・ドリップの他、故標氏の珈琲への意思を受け継ぎ‘吉祥寺もか’で使用されていた焙煎機、35年以上前から活躍しているdittingコーヒーグラインダーを使用しています。

大切に育てられ、大切に受け継がれたモカコーヒーに敬意の気持ちを持って接するオーナーの丁寧にネルドリップされた琥珀色の珈琲は、甘くスパイシーな香りで優しい甘さがあり、ほろ苦く力強い余韻は活力を生みます。

珈琲はモカに始まりモカに還る。これは長きに渡りモカの香り(パヒューム)を愛する森光氏の思いです。
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滴一滴

「滴一滴」

珈琲美美に飾られている言葉です。私が「心の師」と尊敬している森光宗男さん。40年以上も珈琲だけで営業している店です。

私が森光さんと知り合ったのは、1996年に都留市の「バンカム都留」の中村さんに「福岡にモカコーヒーに精通した方がいますよ!」と教えていただいたのがきっかけでした。その年、毎年通っていた倉敷珈琲館の帰り(?)に、時間がありましたので、お電話して寄らせていただきました。

新幹線の博多駅に降りると、さっそくタクシーを拾い店の名を告げると、「どちらからみえましたか?」と聞かれましたので、「岐阜からです」と答えました。すると「何しに見えたのですか?」とまたまた質問がきたので、「コーヒーを飲みに!」と答えると、「コーヒー一杯を飲みにわざわざ岐阜から?」と驚かれ、その後に、「あんたはアホか?」と、とんでもないことを言われました。

「いくらなんでもアホはないでしょう!」と思いましたが、確かに普通の人からみたら、新幹線を使って岐阜くんだりから一杯のコーヒーを飲みに来るなんて狂人的に感じるのでしょうね。ざっと計算するだけで一杯いくらのコーヒーになるかを考えれば「アホ」、いや、「珈琲バカ」なのでしょう。

ドアを開け店(今は赤坂に移転しましたが、当時はまだ今泉にありました)に入ると、珈琲の香りが染みついたとても雰囲気のある重厚感のある店内でした。その時は、その後、何回もこのドアを開けることになろうとは思いもよらなかったのですが・・・。挨拶をして、珈琲を注文しました。

豆の計量、選別、粉砕、ネルの準備、お湯の温度の確認、蒸らし、抽出、出来上がり、湯煎されたカップに注ぐ、提供等等々まで、すべての工程に一縷の緩みもないその姿に、私は見惚れてしましました。

ゆったりと丁寧に行われるそれらの所作からまさに生み出される珈琲は、飲む前から心の中に入り込んでくるのです。こんなに丁寧にコーヒーを淹れる方がいるのか? と、同業者ながら感心しきりでした。

珈琲は、静かで柔らかく何の抵抗もなく口の中に広がりました。少し頼りないくらいの静かな味ですが、飲み込んでいく内に香味ともに満足感でいっぱいになるといった感じの珈琲です。
森光さんといえば、モカコーヒーの第一人者だということは当時から誰もが認めるところでしたので、2杯目はここでしか飲めない「エチオピア・ゴールデンハラール・モカ」を頂きました。

エチオピアのハラール地方の奥地ハラワチャ村の近辺のゴールデンビーンズの木からしか取れない豆で、当時エチオピアのモプラコ社のヤンニ社長が森光さんにと特別に携えた豆で、日本でも美美でしか飲めなかったまさに幻の珈琲でした。

その香味は、エチオピア・ハラールモカの独特な花のような香りが満載で、味はスパイシーで、これぞナチュラル・ハラールというインパクトのある香味でした。

エチオピアの輸入制度の変革(ECX)や農薬問題などで近年まで入荷がなかったまさに手に入らない幻でしたが、今年ようやく購入できましたので楽しみにしていてください。

珈琲を飲みながらいろいろなお話をしていたら、「来年の正月から2週間イエメンに珈琲の旅にいきます」との話が出ました。以前からコーヒー産地に行くことが夢だった私は、即座に、
「私もご一緒できませんか?」と口走っていました。すると、「いいですよ!一緒に行きましょう!」

いとも簡単にこんな言葉が返ってきたではありませんか。確かに初対面で「連れてって」とお願いする方もおかしいのですが、初めて会ったどこの馬の骨ともわからない人物に、いとも簡単に「OK」を出すと方もいかがなものでしょう・・・? 今思っても、その懐の深さに本当に感心いたします。

さて一緒に行くことが決まったことは良いのですが、20年間の珈琲屋人生で2週間も現場を離脱することはなかったので、どのようにその2週間をスケジュールするかも含め、さまざまな難問が満載で、まずはそれをクリアーしなければいけませんでした。出発を決めたその日からまさに「イエメン珈琲の旅」は始まったのです。

2週間くらいして森光さんからイエメンの歴史や文化の資料のコピーが送られてきました。その中には、イエメンはどんな気候か、何を持っていけばいいのか、必要なのか、などの資料は一切入っていませんでした。

それは森光さん特有の優しさで、暗黙のうちに、「私が連れて行くのではないですよ。今井さんの旅にするのですよ!」といわれたのでした(と私は理解したのですが・・・)。それからイエメン渡航までの間、資料を買いあさり猛勉強しました。年が明けいよいよイエメン珈琲の旅が始まりました。

成田空港で落ち合いまずはエジプトのカイロに向かい、その後、カイロからイエメンの首都サヌアに到着です。その地の風景はアラビアンナイトの世界で、一瞬夢かと思うような場所に立っている自分が本当に不思議でした。

降り立った時間が深夜だったため、ホテルは閉まっていましたが、必死でノックをして何とか中に入れてもらいました。次の日からの珈琲の旅は今までにない経験をたくさんしてきました。毎日が初めて経験する衝撃的な事ばかりで、あっという間の2週間でした。

その後、森光さんとはイエメン3回、エチオピア3回、ケニア、タンザニアとさまざまなコーヒーの旅をご一緒させていただきました。

旅の時の森光さんの口癖は、「珈琲の神様がついているから大丈夫!」です。実際、様々な苦難に出会ったのですが、その度に「珈琲の神様がついているから大丈夫!」で乗り越え、それを良い方向に持って行っていく姿を何度も一緒に体験してきました。まさに神通力とでも言うのでしょう!

森光さんには本当に珈琲の神様がついていると当時も今も私は思っています。これは森光さんと苦難を共にしてきた人だけが感じる事なのでしょうが・・・。

今、福岡で・・いや、日本でも・・いや、世界でも、モカ・コーヒーをこれほど研究、実践している方は他にはいないと思います。それも自らの手と足で珈琲の原点を探し求める旅をし続けているのです。

産地にも出かけず、思考だけでいろいろ書かれたり言ったりしている方は大変多いのですが、産地に行くと卓上の論理とは違う事に気が付き、いかに実践が大切なのかを痛感します。

「百聞は一見にしかず」

ですね。とにかく一緒に旅をしていると、森光さんの思考や行動のすべては珈琲に繋がっているのです。お傍にいて、すべてが勉強になるのです。私の今があるのは、森光さんのおかげといっても過言ではありません。

(続く)

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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