セルフメディケーションと漢方(1) 2016/6/10

漢方薬を飲んだことがありますか?

ティーパックに入った刻み生薬をコトコト煎じることは今でもありますが、病院でもらう漢方薬も、街の薬局で購入する漢方薬も「エキス顆粒」であることが多いハズです。実はこのエキス顆粒という剤形は、日本独自のものです。

あまり気にも留められませんが、このお蔭で、優れた携帯性と高い品質安定性が保証されています。とはいえ、煎じ液でもエキス剤でも特有な味や香りがあるため、漢方薬は好みの分かれるところと思います。

2013年に刊行された『漢方薬繁用処方実態調査』(根本・伊田 監修)によると、90パーセント近い医師が漢方薬を処方したことがあるそうですが、患者数ベースでみると医師が漢方薬を処方するのは全体のわずか8パーセント程度だということです。

国の医療費削減のため、漢方薬を健康保険適応から外そうというニュースが時折出る割には小さな数字だと思いませんか? もう少し医療経済の側面から掘り下げます。

医薬品全体における「漢方製剤等」

2012年における医薬品総生産金額はほぼ7兆円です。一方、漢方製剤等は約1,500億円であり、わずか2.1パーセントを占めるに過ぎません。珠玉混交な健康食品を販売する業種が2兆円産業といわれていますので、国民の健康寿命の延長には、有効性と安全性に科学的なエビデンスがある漢方薬がもっと活用されるべきではないでしょうか。

さて、漢方薬にも、いわゆる西洋薬と同じように「医療用」と「一般用」の区別があります。簡単にいえば、「医療用」は処方箋薬であり、成分含量が高く、医師や薬剤師の指導が必要となります。

「一般用」漢方薬の生産額は「医療用」の5分の1ではありますが、「一般用」のメリットとして、誰でも自分で気軽に自分の体調や体質に合ったクスリを選ぶこと(セルフメディケーション)ができることが挙げられます。

「漢方製剤等」一般用医薬品の販売額内訳

しかし、現状はテレビのコマーシャルや雑誌の広告等の影響を強く受けて、ご自身の体質やクスリの適応症を考慮せずに、購買されているようです。図を見てお分かりのように、防風通聖散と葛根湯だけで、「一般用」漢方薬生産額の半分を占めんばかりです。

特に、前者はダイエットサプリメントのように誤った認識が持たれている感じがあります。「一般用」漢方薬の中には、商品名がカタカナで表記されているものが少なくありませんので、漢方薬を飲んでいるという自覚がないことも憂慮されます。

検査値には現れない体調不良(未病)を病気になる前に改善するためにも、「一般用」漢方薬を活用することは有効な手立てだと思いますが、正しく実践できるように、次稿もセルフメディケーションと漢方についてお話を続けます。

大山雅義 岐阜薬科大学 生薬学研究室 教授

岐阜薬科大学大学院博士後期課程修了。国立がんセンター研究所や米国製薬ベンチャーなどを経て、平成16年に出身である生薬学研究室に研究助手として着任。平成25年8月より教授を拝命しています。

研究室では、主に天然物化学と呼ばれる研究分野に注力し、国内外の多種多様な植物が創り出す化学物質の構造やその生物活性などについて研究しています。一方で、国際中医師という資格を活かし、漢方薬の啓蒙にも努めています。

本ブログでは、街の薬局で手に取ることができる一般用漢方製剤(OTC漢方薬)を中心に話題を提供していこうと思います。

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