あの人にあこがれる 2016/7/10

毎日、同じ私の顔を見て「今日も頑張ろう」と思える人。

「ああーーー老けたな! なんだか面白くないな。あの人みたいにキレイで、若かったからな」

と誰かを羨むのか? 大きな違いがあります。あなたは前者ですか? 後者ですか?

 深海魚ひかりにとおくすむものは
 ついに目をうしなうとあり
             (堀口大学)

深い海の底にすむ魚は、太陽の光より遠く離れています。そこで、ついに目が見えなくなるということです。

私たちが生まれたとき、はじめから見えていたわけではありません。音も聞こえませんでした。それが時間と共に見えるようになり、聞こえるようになっていくのです。なぜでしょうか。それは光があるからであり、音があるからです。

私たちは目や耳があるから見えるのではありません。そこに光や音があるから私たちは世の中のものが見えてくるのです。

よく、「私は健康であれば何もいらない」とおっしゃる方がいます。もちろんその気持ちはわかります。しかし人間は五体満足だから幸せなのでしょうか? そうではありません。仮に健康で生まれても、それに慣れてきて「こんなアホに何で生まれたのか」とぼやいていくのです。

大切なのは「真実の光明」にあうということがないと、何も感ずることもできなくなります。親鸞さんは「無眼人無耳人(むげんにん むみにん)とおっしゃいました。つまり、目はあっても本当のものが見えてない、この耳はあっても聞けない無耳人となってしまうことを歎かれたのです。

では何が、見えなくも聞けなくもしているのでしょうか。それは人間が必ず持っている「煩悩」があるからです。

親鸞さんは「凡夫とは惑染のもの」と正信偈でお示しくださっています。つまり煩悩にそまってしまい何も見えなくなっているのです。ですから生きていても何も感じることができません。

数年前、生まれたわが子が盲目であったというだけの理由で、「この子が成長しても、さぞつらい思いをするだろう、そんなことならいっそ何もわからないいまのうちに」と、わが子を窒息死させた事件がありました。

わが子がつらい思いをするのではなくて、実は自分がつらいのです。母の煩悩のために尊いいのちが一つ犠牲にされました。盲目の子をかかえて若い母の人生は、たしかにきびしいものでありましょう。しかし「この子のおかげで」と、「おかげ」に育てられる目が、この母親にはなかったのです。

 智慧の光明はかりなし
 有量の諸相ことごとく
 光暁かふらぬものはなし
 真実明に帰命せよ
   (浄土和讃)

「光暁」の「暁」には「あきらか、さとす、つげる」という意味があります。今、私がこうして生きていることに満足できない、むしろもっと完璧に生きたいと思う私に「有量でよかった」、他の者とかわる必要がなかった、私は私でよかったとあきらかにさとらせ、つげてくれるもの、それこそはかりなき智恵の光明のはたらきなのです。

先日、高校の授業で学生と話していると「先生、毎日がつまらない。あの人みたいに生きられたら人生おもしろいやろうな。あんな人にあこがれるな」と言いました。

さてこの「あこがれる」というのは自分が自分を忘れて、自分以外のものになろうとする、なれる筈はないのに、人間の眼が外に向かっているところから、ついあこがれるのです。

「あこがれる」は「あくがれる」から転じた言葉で、「あく」とは居り場所、「がれる」は離れるということを意味します。だから「あこがれる」とは、自分の居り場所を離れる、幸福をあこがれるとは、自分の居り場所に満足できないで、青い鳥をさがすように外へ外へと追いかけていくことなのです。

しかし、どれ程、外へ求めても満足もなければ安心もありません。実は、その自分の居り場所にこそ、阿弥陀の願いの光がかけられてあったのです。煩悩に流され、本当の生き方を見失い、なれないことにあこがれるのです。

どうか大地をしっかり踏みしめ、自分の居り場所をみつけましょう。そしてしっかりしたまなこを持ち、耳の穴を空け「本当の生きる道」を歩みましょう。

PR情報

記事一覧

人が「キレる」理由ってなんでしょうか

毎日、暑いですね。夏バテしていませんか? 暑いとつい短気になってしまいますね。 私もつい「イラっ」としたことがありました。 暑さの中、さらにお腹がすい…

2019/8/3

誰かの言葉に傷ついたら

いよいよ7月に入り、本格的な夏を迎えますね。皆さんいかがお過ごしでしょうか。 さて、私たちは人間関係の中で生きています。その関係性がもっとも左右される…

2019/7/4

ストレスと上手に付き合う

●ストレスが溜まる

2019/6/8

高額な参加費のセミナーには気をつけよう

すっかり新緑の頃となりました。また時代も平成から「令和」に変わろうとしています。皆さんようこそおたずねくださいました。 さて、読者さまから相談をいただ…

2019/4/29

自信がもてる生き方

待ちに待った春ですね。あちらこちらで桜の開花が楽しめます。 この「待ってました」という感動はどうして沸き起こるのでしょうか。 それは長い冬に耐えてき…

2019/3/30

誰に頼って 生きているの?

ようこそおたずねくださいました。 おおきに あなた様はお元気ですか? いよいよ待ちに待った春ですね! とはいっても花粉症の季節でもあります。 くれぐれ…

2019/2/24

理不尽な目に遭ったとき どうしたら?

ようこそおたずねくださいました。僧侶の川村妙慶です。 あらためまして、本年もよろしくお願いします。 インフルエンザが流行っていますね。くれぐれも気をつ…

2019/1/30

今年 一年のお礼

●私を生きよう! 僧侶の川村妙慶です。こうしてたずねていただき、ありがとうございます。 2018年から2019年へと移り変わる瞬間です。 皆さんにとっ…

2018/12/31

やる気はあるのに発揮できない

ようこそおたずねくださいました。おおきに。 すっかり秋から冬を迎える季節ですね。 寒暖差もあります。皆さんお元気ですか? 今ではハイキングを楽しまれる…

2018/11/21

急に寂しくなったとき どうしたら?

ようこそおたずねくださいました。おおきに。 すっかり秋ですね。 さて読者のさとりっちさまよりこんなメールをいただきました。 ---------------------------…

2018/10/23

プロフィール

16

達人に質問をする

真宗大谷派僧侶・アナウンサー

京都在住(福岡県出身)
20歳で真宗大谷派(東本願寺)の僧侶となる。と同時に社会経験をと、関西を中心にアナウンサーとして活躍。

15年前から立ち上げたHPでは
2007年ヤフー人名検索1位になり話題になる。「川村妙慶の日替わり法話」は一日3万件のアクセス。

現在 中日文化センター「心が元気になる講座」講師。

NHK京都、大阪文化センター講師。FBS読売文化センター講師。KBSラジオ「ほっかほっかラジオ 妙慶のちょっといい話」レギュラー。

産経新聞「明日へのヒント」・京都新聞「暖流」日経ヘルスプルミエ
連載中。

全国へ講演で回る。また著書も多数出版。

近著に「女の覚悟」講談社・「大丈夫!何とかなるから 」KKベストセラーズ、「妙慶の怒りをおさめる35の話し」こう書房 他

☆川村妙慶のテレフォン法話
075-431-7603(なむあみ)

関連リンク

  • 会員登録
  • ログイン
今日の天気(21:00発表)
名古屋
晴れ
34 ℃/23 ℃
東京
曇りのち時々晴れ
29 ℃/22 ℃
大阪
晴れ時々曇り
33 ℃/23 ℃
  • 現在、渋滞情報はありません。
  • 登録路線が未設定です。
  • 公式 Twitter はこちら
  • 公式 Facebook はこちら
クラウドファンディング 夢チューブ 中日新聞
東京新聞 電子版
中日新聞の人材研修 ビジネストレーニング「ビズトレ」
中日販売サポート
東海テレビ 庄野アナと 新聞を音読してみよう!
中日防災ナビ
こどもウイークリーのこーなー
過去の企画・特集