[注目校監督]指導者でも甲子園 選手たちと同じ目線で 津田学園高校(三重)・佐川竜朗監督 2016/7/12

アマ野球のスター選手から高校野球の指導者に転身した津田学園・佐川監督

 高校、大学と厳しい練習に明け暮れていた。苦しかった思い出しかない。だから切に願っている。「今の選手には卒業するまでずっと野球好きであってほしい」。動きを温かく見守っている。

 PL学園で甲子園出場。明治大では主将、そして日本通運と、高校から社会人まで常に日が当たる道を歩んできた。目標は明確にプロ。特に社会人3年目は絶好調。「いよいよドラフト会議で指名される」と当日を心待ちにしていたが、結局、どの球団からも声が掛からなかった。4年目はけがで満足な成績を残せなかった。

 失意のどん底の時に大学時代の記憶が鮮明によみがえった。人と人のつながりから、由利工高(秋田)の部員を指導。なかなか勝つことができなかったチームが、夏の県大会で8強入りした。「ここまで勝てたのは、いろいろ指導していただいたおかげです」と泣きながら電話で報告してきた。
 
 プロになれないのなら高校野球の監督という選択もある。「高校生に教えるのは楽しかったじゃないか」。決断まで時間はかからなかった。社会人5年目は朝は仕事、昼は練習、夜は大学で教員となるための勉強。ハードスケジュールだったが、新たな目標に向かって突き進んでいた。
 
 教員免許を取得すると津田学園高に。コーチを経て監督に就任した。学校では生徒指導主事の顔も持つ。選手には「試合でどれだけの人が応援に来てくれるか。普段の学校生活が大事」と説く。グラウンドに小さなごみが落ちていたら拾ってほしい。そんな細かいことにも気づけるようになることで、勝敗を分けるようなぎりぎりのプレーにも反映されるのでは、と信じている。

甲子園で勝つことのイメージを膨らませながら、選手たちとグランドで日々汗を流す

 2012年12月だった。一人一人の性格も把握して指導に生かしたいとう思いが強くなった。学校に「ある企業が社宅としていた建物を野球部寮として利用し、隣の空地に家を建てたい」というプランを持ち込んだ。

 話はとんとん拍子に進んだ。家の1階は選手が利用する食堂として開放、2階を夕子夫人(33)との居住空間としている。14年には専用グラウンドも完成。学校のバックアップは心強い。
 
 実はプロに近づいた瞬間もあった。高校3年生の秋、ドラフト会議の直前、某球団のスカウトから実家に「2位か3位で指名する」の電話が入ったという。父親が「一時の華やかな生活より堅実な道を歩んでほしい」の理由で、誘いを断ったことを後日知らされた。憧れていた世界へのはしごを外された当時は「なんでや」と恨んだ。
 
 今では父親の決断に感謝している。高校生と同じ目標に向かってグラウンドに立つのが楽しい。まだ指導者として甲子園を経験したことがないからこそ、「早く一緒に行きたい」の思いが募る。今春の県大会は準優勝。戦力は充実しているのでチャンスはある。「甲子園で勝ったら、泣きながら校歌を歌うはず」。イメージを膨らませながら、最後の仕上げに余念がない。

【プロフィール】 さがわ・たつお 大阪・PL学園高―明大―日本通運で外野手。2005年に現役引退。サラリーマン生活のかたわら、再び明大に通って教員免許を取得。08年、津田学園高の監督に就任。社会科教諭。大阪市出身。37歳。


(2016年夏の「高校野球見どころ解説」は今回で終了です)

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1955年生まれ。スポーツ紙記者を経て、中日新聞編集局運動部記者。

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長年に渡る野球取材の経験から、今年の地方大会の見どころや、情熱を持って選手の指導にあたる監督へのインタビューなどをじっくりお届けします。

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