びっくりする薬の話A 薬害を引き起こした薬が今は特効薬 2016/8/20

多発性骨髄腫という血液のガンがあります。今から半世紀ほど前では、多発性骨髄腫を発症すると5年後の生存率は10%程度でした。その後、治療方法が進歩し、現在では65歳未満の患者の場合、5年後の生存率が50%以上まで改善していると報告されています(J Clin Oncol. 28:830-4, 2010)。

その治療に大きく貢献しているのが、商品名でサレド、レブラミド、ポマリストという医薬品です。サレドは、1960年代初めに日本中を震撼させた薬害のサリドマイド事件を引き起こした原因薬物のサリドマイドと同じ薬であり、レブラミド、ポマリストはサリドマイドと同じ種類の医薬品です。

薬害を引き起こしたサリドマイドは、わが国では「安全な」睡眠薬として1958年に販売が開始され、その後「妊婦のつわりを緩和し安眠を約束する」という目的で妊婦に愛用されるようになりました。

1961年に西ドイツのレンツ博士が「サリドマイドの副作用で奇形児が生まれる可能性がある」と報告し、1962年にサリドマイドが販売中止になりました。サリドマイドを服用したお母さんから生まれた奇形児は、わが国では約900人とされています。これが薬害のサリドマイド事件です。

サリドマイドは、睡眠を目的に使用する場合には、とても恐ろしい毒となりますが、多発性骨髄腫という病気に使用する場合には、多くの患者さんを延命させることができる貴重な薬です。

薬剤師は薬の説明をする際に、「クスリ」は逆から読むと「リスク」であるから、正しく使用しないと危険であると説明することがあります。薬局で購入する大衆薬には、薬を安全に使用するための説明文書が同封されています。病院や薬局で出される処方薬にも説明文書が付いています。それらをよく読んで正しく使用しましょう。

もちろん、多発性骨髄腫に使用するサレド、レブラミド、ポマリストには、極めて重要な使用上の注意があり、「妊婦には使用しないこと」、「授乳中は使用しないこと」、「女性患者、男性患者ともに使用中は確実に避妊すること」など薬害を再発させないための対策がとられています。

杉山 正 博士(薬学) 岐阜薬科大学実践社会薬学研究室教授

岐阜薬科大学薬学部卒業。1982年から25年間、岐阜大学医学部附属病院薬剤部へ勤務した後に、2007年4月に現職である岐阜薬科大学実践社会薬学研究室の教授に着任しました。2015年1月からは京都府立医科大学在宅チーム医療推進学講座の特任教授を併任しています。

研究室には、多くの病院薬剤師、薬局薬剤師が大学院博士課程の学生あるいは研究生として在籍しており、医療現場で直面している課題を解決するための研究を行っています。最近は、在宅医療を推進するための研究ならびに地域薬剤師の生涯研修にも取り組んでいます。

本ブログでは、びっくりするお薬の話を紹介したいと思います。

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