「活性酸素」は本当は いいやつ だった その6 (最終回) 2016/9/30

「がん」の3大治療法は「外科手術」、「放射線療法」、「抗がん剤療法」です。その内、ある種の抗がん剤療法は、がん細胞の中に取り込まれた抗がん剤がそこで大量の活性酸素を発生させ、その活性酸素が遺伝子を破壊したり、細胞内を攪乱してがん細胞を殺すというメカニズムです。放射線療法においても、放射線が細胞内の水に当たるとそこで活性酸素を大量に発生させるという反応を利用しています。

さらに、最近、「プラズマ」をがん治療に使おうという研究が始まりました。プラズマは自然界ではオーロラとか雷の時の稲光という現象で見ることができます。以前から、プラズマは工業的にはいろいろなところで使われていました。

電子部品の基板を作るのに使われたり、テレビ(プラズマテレビ)、蛍光灯や空気清浄機(プラズマクラスター)に使われています。プラズマはアーク溶接にも使われ、何だか凄く熱そうで人に使ったら一瞬のうちに焼けてしまいそうですが、最近それを常温で取り扱うことができるようになり、医療に使う試みがされています。

このプラズマをがん細胞に照射し細胞内で活性酸素を人工的に大量に発生させ、これでがん細胞を殺そうとするものです。がん治療以外にも、手術時の止血、傷の手当、消毒などへの応用が考えられています。

最後に活性酸素の仲間たちを紹介します。まずは、「一酸化窒素(NO、エヌオー)」。大気汚染物質として昔から良く知られていますが、実は体の中でいつも作られ、血管をしなやかに広げたりする物質としてなくてはならないものです。

また、脳の中でも作られ情報伝達に使われています。心臓の薬であるニトログリセリンを飲んだり、貼ったりすると体の中で一酸化窒素ができ、心臓発作を予防したり、発作を鎮めたりします。さらに、一部の肺の病気に対しNOガス吸入療法があります。

2番目は「一酸化炭素(CO)」。これも不完全燃焼の時の中毒ガスとして有名ですが、体の中でいつも作られ、血管を広げる反応や記憶・学習機能に関係すると言われています。

最後は「硫化水素(H2S)」。毒ガスとして知られていますが、やはり、体の中で作られ、神経での情報伝達に使われています。

これらの活性酸素の仲間は難しい名前で「ガス状メディエータ―」と呼ばれています。まだわかっていない機能がこれから続々と解明されてくることと期待されます。

活性酸素は「病気の元凶」として悪者扱いを受けていますが、元々は、体を維持するためになくてはならないもので、いつも体の中で作られています。この「活性酸素を作る力」と「余分な活性酸素を消す力」のバランスが健康維持に大切です。活性酸素に対する国民的常識が覆される日を迎えるために研究が続けられています。

足立 哲夫 博士(薬学)  岐阜薬科大学 臨床薬剤学研究室 教授

岐阜薬科大学卒業、同大学大学院修士課程修了後、岐阜薬科大学助手(薬剤学研究室)として採用。講師、助教授を経て、平成9年に学内に新設されました臨床薬剤学研究室に異動し、平成15年に教授に昇任しました。

研究室では、主にストレスによる糖尿病、動脈硬化、神経疾患などの病気の発症機序の解明、それらの病気に対する予防薬・治療薬の探索を行っています。最近、「プラズマ」というオーロラや雷などの元を医療に応用しようという試みが始まり、その研究班に参画しています。本ブログでも最終回に簡単に紹介します。

以前は「活性酸素」は体にとって悪いものということで研究を進めていましたが、そうではないことが分かってきましたから、罪滅ぼしも含め、本ブログで「活性酸素」のいい働きを紹介します。

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