食品と薬学(2) 〜食品と薬にも相性がある?〜 2016/10/26

私たちは毎日の食事で肉や野菜など様々な食品を口にしています。食品には、昔から「鰻に梅干し」や「スイカに天ぷら」など、相性の悪い食べ合わせが知られています。それらの科学的な信憑性は置いておくとして、食品と薬の食べ合わせ、飲み合わせはあるのでしょうか?

実は、やはり食品と薬にも相性の良し悪しがあるようです。その悪い例の一つが、グレープフルーツと血圧を下げる薬(カルシウム拮抗剤)の組み合わせです。グレープフルーツに含まれるベルカモチン(bergamottin)というフロクマリン誘導体は薬の効果を強くしてしまい、ときに必要以上に血圧を下げてしまうのです。

このことは薬の添付文書にも記載されていますが、他の柑橘類については触れられていません。なぜなのでしょうか? 本稿では市販のグレープフルーツジュースとオレンジジュースを使った実験についてお話しします。

ベルガモチンが薬の作用に影響する成分ですから、その有無をそれぞれのジュースについて調べれば良さそうです。しかし、ベルガモチンはさほど高含量ではありませんので、検出するには濃縮が必要となります。そこで、前処理としてジュースに酢酸エチルという有機溶媒を加え、分液ロートで振り混ぜます。

酢酸エチルは水とあまり混ざりませんので、暫くすると分液ロートの中は酢酸エチル層(上層)とジュース層(下層)に分かれます(この前処理にはジュースの製造時に加えられた砂糖を除く意味もあります)。上層だけを取り出して、濃縮したものを試験用エキスとします。

前稿と同様TLC分析を行いました。図をご覧ください。

両方のTLC板とも、左からベルガモチン標品、グレープフルーツジュースから調製したエキス、オレンジジュースから調製したエキスです。

確かにベルガモチンはグレープフルーツジュースには認められましたが、オレンジジュースには認められませんでした。同じ柑橘類でありながら、含まれている成分が違っていることがお分かりいただけたことと思います。

食品と薬の相互作用については、上の例以外にも、「納豆(ビタミンK)と抗血栓薬(ワルファリン)」、「チーズ(チラミン)と抗パーキンソン病薬(MAO阻害薬)」などが知られるようになってきました。

薬食同源と言いますが、食品にも数多くの化学成分が含まれています。読者の皆様も食べ合わせ、飲み合わせにご留意ください。

大山雅義 岐阜薬科大学 生薬学研究室 教授

岐阜薬科大学大学院博士後期課程修了。国立がんセンター研究所や米国製薬ベンチャーなどを経て、平成16年に出身である生薬学研究室に研究助手として着任。平成25年8月より教授を拝命しています。

研究室では、主に天然物化学と呼ばれる研究分野に注力し、国内外の多種多様な植物が創り出す化学物質の構造やその生物活性などについて研究しています。一方で、国際中医師という資格を活かし、漢方薬の啓蒙にも努めています。

本ブログでは、街の薬局で手に取ることができる一般用漢方製剤(OTC漢方薬)を中心に話題を提供していこうと思います。

PR情報

記事一覧

美と健康は表裏一体

前回は、肌の老化に関して紫外線や乾燥の影響をお話ししましたが、実は、肌の老化には全身の健康状態や全身の老化も関わっています。 前回記事「見かけ年齢に大…

2019/11/30

見かけ年齢に大きなインパクトをもつ肌の老化

7月20日公開の第2回目のコラムで、見かけ年齢を左右する要因として、「シワ、シミが目立たない」、「肌ツヤが良い」、「タルミが目立たない」という肌の老化…

2019/11/20

健康情報や美容情報の氾濫に飲み込まれないようにするには

現在、シミ(肝斑に限る)用の医薬品、化粧品的なシミ・シワ・肌荒れには薬用化粧品(医薬部外品)、健康や肌状態を訴求した特定保健用食品、そして、有効性を…

2019/11/10

新しい糖尿病治療薬:経口GLP-1作動薬

第1回記事:新しい糖尿病治療薬 第2回記事:新しい糖尿病治療薬:グリフロジン製剤 筆者が薬学生だった頃、「タンパク質のような高分子は消化管から吸収され…

2019/10/30

食品の安全性を考えるB 〜食品添加物は悪者なのか?〜

今回も前回、前々回に引き続き、食品の安全性についてのお話です。今回は食品添加物について考えてみたいと思います。 前回記事『食品の安全性を考えるA 〜食…

2019/10/23

新しい糖尿病治療薬:グリフロジン製剤

第一回記事:新しい糖尿病治療薬 糖尿病と言うぐらいですから、尿に糖が排泄される病気であることは容易に想像がつくでしょう。実際、糖尿病では尿糖が陽性と…

2019/10/20

新しい糖尿病治療薬

読者の皆さんの中にも、成人病検診などで「耐糖能が悪化していますね」と言われたご経験のある方も居るのでは? かく言う筆者も、年々ヘモグロビンA1c(どの程…

2019/10/10

食品の安全性を考えるA 〜食品中に存在するリスクって何?〜

今回も前回に引き続き、食品の安全性についてのお話です。今回は食品中に存在するリスクについて考えてみたいと思います。 前回記事『食品の安全性を考える@ …

2019/10/4

食品の安全性を考える@ 〜天然由来成分は本当に安全なのか?〜

食物を食べるということは、我々人間が毎日行うごく当たり前の行為であり、また生きていく上で必要不可欠なものです。それ故に、食品は安全なものでなければな…

2019/9/10

クスリにまつわるお金のはなし 〜製薬会社のお弁当〜

日本の国民医療費は、最近では年間42兆円、一人当たり33万円を超えています。これらの費用のほとんどは、私たちが毎月収めている健康保険料や税金、患者自己負…

2019/8/30

プロフィール

19

達人に質問をする

本学は、美しい金華山と長良川などの自然に恵まれ、また歴史と文化の薫漂う岐阜市の北部に位置し、80有余年に及ぶ歴史の中で、建学の精神である「強く、正しく、明朗に」をモットーに、「人と環境に優しいグリーン・ファーマシー」を基本理念とした薬学教育を通じ、安心で安全な医療に貢献できる薬剤師や、人と環境にやさしい方法で薬を創ることのできる研究者や技術者を養成しています。

地域に生き、世界に伸びる大学として、今までの実績を基にさらに発展し続ける努力を重ねております。

関連リンク

  • 会員登録
  • ログイン
明日の天気(17:00発表)
名古屋
晴れ時々曇り
17 ℃/6 ℃
東京
晴れ一時雨
17 ℃/7 ℃
大阪
晴れ時々曇り
15 ℃/7 ℃
  • 東名で渋滞情報あり。
  • 登録路線が未設定です。

企画特集(PR)

  • 公式 Twitter はこちら
  • 公式 Facebook はこちら
クラウドファンディング 夢チューブ 中日新聞
東京新聞 電子版
中日新聞の人材研修 ビジネストレーニング「ビズトレ」
中日販売サポート
東海テレビ 庄野アナと 新聞を音読してみよう!
中日防災ナビ
こどもウイークリーのこーなー
過去の企画・特集