「静かな時限爆弾」アスベストはおそろしい 2016/11/15

人体に与える影響
アスベストは天然の繊維状の鉱物で、「石綿」(いしわた、せきめん)」と呼ばれ、「燃えない」、「引張に強い」、「摩耗しにくい」、「電気を通しにくい」、「混ざりやすい(セメントなどに)」などの特色があり、かつ糸状や布状に加工しやすく、安価なため、「奇跡の鉱物」と称賛され、建物の壁の吹き付け材や建材として、またシール断熱材、自動車ブレーキ等に広く使われていた。

しかし、その繊維一本一本の太さは0.02〜0.35μmと髪の毛の5千分の1と非常に細かいため、空気中に飛散したアスベストを吸い込むとアスベストの繊維が肺の内部に刺さり、そのまま排出されず、肺に刺さったままのアスベストが20年から40年という長い潜伏期間を経た後、肺がんや中皮腫等を発症する可能性が高い。

このうち、悪性胸膜中皮腫については、発症2年後の生存率が約20%、発症5年後の生存率が約3.7%と極めて低いことなどから、アスベストは、現在では「静かな時限爆弾」と言われ、おそれられている。

防止策
日本では1960年代以降の高度成長期にビルの耐火・断熱等を目的としてアスベストが大量に消費されたが、アスベストによる被害が各地で報告されたことから、被害を防止するため、1975年9月に吹き付けアスベストの使用が禁止された。

また2004年にはアスベストを1%以上含む製品の製造・使用などが、更に2006年には0.1%以上の製品の製造・使用などが禁止され、現在では、一切の製造・輸入・使用・譲渡・提供が禁止されている。

しかし、環境省によれば、製造・使用が全面的に禁止された2006年までに建設された建築物でアスベストを含む建材が使用されているものは全国で約280万棟あり、これらの解体時期が2020年〜2040年頃にピークを迎え、年間10万トン前後のアスベストが排出されると予測されることから、今後の解体に当たって建築物周辺の住民の健康への影響が懸念されるとしている。

解体に当たっては、解体事業者が周辺への影響が出ないよう細心の対策・注意を払うことは当然であるが、周辺住民の方々もアスベストの吸引を防止するため、通常のマスクではなく、アスベストの体内への侵入を完全に防止する防塵マスク(近くのホームセンターなどでの購入は可能)を着用するなど細心の注意をはらう必要がある。

稲垣隆司 岐阜薬科大学学長

岐阜県土岐市出身。岐阜薬科大学卒業、国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)環境衛生課程修了後、愛知県に勤務。愛知県においては大気、水質、廃棄物、自然環境等すべての環境保全行政に従事、平成16年度から環境部長、平成18年度から副知事(一期4年)を歴任。愛知県退官後は、名古屋競馬椛纒\取締役社長、学校法人名古屋学院大学理事長を歴任後、平成27年4月から岐阜薬科大学学長。その他、現在、ボランティアで愛知・東海陸上競技協会会長、愛知県レクリエーション協会会長、愛知県消防設備安全協会理事長、日本介護事業連合会東海支部長等を務める。

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