リニア・鉄道館に行こう(39) 国鉄バス第1号は岡崎−多治見間 2016/11/19

鉄道記念物に指定されている、国鉄バス第1号

リニア・鉄道館は高速鉄道をテーマにしていることから、実車では鉄道車両が多く展示されています。そのなかで異彩を放っているのが、このバスです。

線路上を走らず道路を走る唯一の展示車両ですが、これが国鉄バスの第1号です。それも国産。国内自動車産業の育成を目指して、敢えて国内メーカーに製造を任せた結果でした。

ボンネットタイプの古風なデザインは、タイヤ廻りにある泥除けとともに、輸入車の影響を受けていることが感じられます。

国鉄バスは、鉄道網を補完する位置づけで、全国を走っていました。「つばめ」マークをつけた車体が目印で、いまでもJRグループが運行するバスは、高速バスを中心に「つばめ」マークをつけています。その国鉄バスの元祖は、愛知県から岐阜県にかけての路線で走りはじめました。

岡崎〜瀬戸記念橋〜多治見
瀬戸記念橋〜高蔵寺

という2路線です。昭和5(1930)年12月20日のことでした。当時、大正11年の鉄道敷設法改正に伴って鉄道建設予定線が増えたのですが、一気に全線着工とはいかない予算的な事情もありました。

そこで、岡多線と瀬戸線という2本の予定線について、沿線都市の分布から乗客数が見込めると判断、その先行・代行機関として、まずはバスを使って利便を図ろうとしたのでした。とはいえ当時のことですから、今では小柄なバスなのですが、走る道の整備からとりかかる必要があったそうです。

ちなみに、この国鉄バス初の路線は、いま愛知環状鉄道として岡崎〜瀬戸〜高蔵寺を結んでいます。岡多線の一部となる瀬戸〜多治見間の鉄道線は実現しませんでしたが、愛知環状鉄道に乗って瀬戸市駅から高蔵寺方面に向かう際、右手方向に多治見への分岐を想定して造られた構造が見られます。

国鉄バス第1号の車内

国鉄バス第1号は、他の展示車両と同じく、近付いて見学できるのがリニア・鉄道館のうれしいところです。車内に入ることはできませんが、見学者用に車内にも照明がついていますので、窓ガラス越しでやや見にくいものの、車内の様子を知ることもできます。

上の写真のとおり、お世辞にも乗り心地が良さそうに見えません。二人掛けのシートは狭そうですし、ビニール張りですから空調のついていない時代に、夏場の車内はさぞべたついて暑かったことと思います。

しかし、シート・網戸・カーテンの色が統一されていて、落ち着いた装飾となっています。全長6.27m、幅1.93m、排気量4,730cc、定員20名という小型のバスです。3ナンバーの乗用車が排気量2,000cc以上ですので、いまの基準からみると、定員20名にしては排気量が小さいですよね。

それでも、昨今増えたコミュニティバスに使われている小型バスは、ほぼ同じ排気量となっています。ただし、エンジン性能が飛躍的に進化していることは、みなさんご存知の通りです。

この国鉄バス第1号は、正面ラジエータ部に「TGE」というエンブレムがついています。東京瓦斯電気工業製であることを表していて、石川島自動車製作所製と合わせて計7台が国鉄バスとして初の活躍を始めたのでした。

バスですから寿命は永くなく、昭和12(1937)3月に現役から引退します。引退後、新鶴見操車場の職員通勤用に使われていたのですが、国産バスとして特に力を入れて整備をしてきた現場から、その価値を訴える声がでました。そこで、翌昭和13年に保存されることが決まりました。

戦前に、それもバスの保存は異例中の異例のことですので、いまや国内最古の現存する路線バスともなっています。この価値を評価して、昭和44(1969)年に国鉄が鉄道記念物に指定しています。

末期の瀬戸記念橋バス停

上の写真は、日本初の国鉄バス2路線の分岐駅でもあった瀬戸記念橋駅です。平成11(1999)年9月に撮影した、末期の様子です。

駅といっても鉄道は通っていませんので、バスターミナルといった方が実状にあっているでしょう。ただし、国鉄時代からのターミナル駅として「みどりの窓口」がありました。上の写真をクリックして拡大すると、左の方に「瀬戸記念橋」の駅名標があり、その左側に「みどりの窓口待合室」の看板が掲げられていることをご覧いただけます。

場所は、名古屋鉄道瀬戸線の尾張瀬戸駅から300mほど東に行った矢田川の対岸で、大正天皇の行幸を記念して名づけられたという記念橋を渡ったところです。平成16(2004)年に廃止となり、跡地は記念橋南交差点と拠点施設「瀬戸蔵」前の小広場となっています。

国鉄バスの同路線を最終的に引き継いだジェイアール東海バスですが、平成21(2009)年に路線バスから撤退したため、いまは名古屋駅と東京駅を結ぶ夜行バス「ドリームとよた」号が、唯一この付近を走る同社のバスとなっています。

このような歴史をもつ、ジェイアール東海バスの2階建てバスが、リニア・鉄道館にやってきます。

2016年11月26日(土)、27日(日)の2日間で、リニア・鉄道館の入館者がバス車内を見学できる時間があるほか、各日11時30分と13時00分の2回、リニア・鉄道館周辺で約30分間の体験乗車もできます。体験乗車は当日館内で受付となっていて、先着順各回25名程度です。車内見学・体験乗車とも追加料金はいりません。

国鉄バス1号と、最新の現役バスを見比べられるチャンスです。リニア・鉄道館として初のバスのイベントとなります。この機会に、リニア・鉄道館を訪れてみてはいかがでしょうか。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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