〜土壌汚染は何故おきるのか、健康にどのような影響があるのか〜 2016/11/30

東京都の豊洲市場の土壌汚染問題が大きな社会問題となっていますが、土壌汚染は何故おきるのか、健康にどのような影響があるのか、また国等では健康被害を防止するためどのような取組がなされているのかなどを解説します。

(1)土壌汚染とは
土壌汚染とは、重金属や有機溶剤、農薬、油等の物質が自然環境や人の健康・生活に影響を及ぼす濃度以上、土壌中に残留、蓄積している状態をいいます。

土壌汚染を及ぼす原因としては、産業活動等において有害物質が排出されたことにより引き起こされる人為的汚染と、火山灰等に含有する有害物質による自然由来の汚染があります。

なお、豊洲市場の土壌汚染は、当該用地には、昭和31年から63年まで、石炭を蒸留して都市ガスを製造する工場があり、この製造過程で発生した廃棄物であるタールに含まれるベンゼン等7つの物質(ベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウム)が何らかの形でこぼれたり、漏れたりしたことにより土壌及び地下水(六価クロムを除く。)を汚染したものであります。

(2)土壌汚染の特徴・問題点など
土壌汚染は、
@地表面下の問題であるため、目に見えない。したがって調査を実施し、正確な情報を得ることが必要
A土壌中に排出された有害物質は、水や空気と異なり年月を経ても消えることがない。このため、有害物質が地下水まで拡散すると、近隣の土地まで被害が及ぶおそれがある
B汚染された農地で栽培された農作物や汚染された地下水を摂取することにより、人体に健康被害を及ぼす可能性がある
C汚染された土地は資産価値が下落する。また、汚染された土地を保有する企業はブランド力が低下する

などの問題点があります。

(3)土壌汚染による健康被害を防止するための措置
水銀、カドミウム、ヒ素などの有害物質は、腎臓など内臓器官への影響や知覚障害、言語障害、先天性疾患など様々な障害を引き起こします。

このため、国においては1991年に「人の健康を保護し、及び生活環境の保全するうえで維持することが望ましい基準(環境基準)」をカドミウムはじめ27物質について定められました。

また、足尾銅山鉱毒事件やイタイイタイ病などによる農用地の汚染を防止するため、1970年に「農用地の土壌の汚染の汚染防止等に関する法律」が定められました。

更に、工場跡地の再開発が活発になるに伴って、六価クロム・水銀・PCBによる土壌汚染や、有害物質を含む廃棄物の不法投棄による土壌汚染問題等土壌汚染や、地下水汚染が市街地でも顕在化してきたことから、2003年に土壌汚染による健康被害を未然に防止するため「土壌汚染対策法」が制定・施行されました。

この法律においては揮発性有機物質(四塩化炭素はじめ11物質)、重金属(カドミウム及びその化合物はじめ9物質)、農薬(シマジンはじめ5物質)が特定有害物質として指定され、それぞれについて、土壌含有基準や土壌等への溶出量基準が定められております。

また、これら特定有害物質を製造・使用・処理する施設を有する者は、当該施設を廃止する場合、土壌汚染に関する調査を実施する義務が課せられるとともに、調査結果により含有量基準や溶出量基準を超える汚染が発覚した場合は、汚染の除去、若しくは汚染の拡散防止措置を講ずることが定められております。

稲垣隆司 岐阜薬科大学学長

岐阜県土岐市出身。岐阜薬科大学卒業、国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)環境衛生課程修了後、愛知県に勤務。愛知県においては大気、水質、廃棄物、自然環境等すべての環境保全行政に従事、平成16年度から環境部長、平成18年度から副知事(一期4年)を歴任。愛知県退官後は、名古屋競馬椛纒\取締役社長、学校法人名古屋学院大学理事長を歴任後、平成27年4月から岐阜薬科大学学長。その他、現在、ボランティアで愛知・東海陸上競技協会会長、愛知県レクリエーション協会会長、愛知県消防設備安全協会理事長、日本介護事業連合会東海支部長等を務める。

PR情報

記事一覧

美と健康は表裏一体

前回は、肌の老化に関して紫外線や乾燥の影響をお話ししましたが、実は、肌の老化には全身の健康状態や全身の老化も関わっています。 前回記事「見かけ年齢に大…

2019/11/30

見かけ年齢に大きなインパクトをもつ肌の老化

7月20日公開の第2回目のコラムで、見かけ年齢を左右する要因として、「シワ、シミが目立たない」、「肌ツヤが良い」、「タルミが目立たない」という肌の老化…

2019/11/20

健康情報や美容情報の氾濫に飲み込まれないようにするには

現在、シミ(肝斑に限る)用の医薬品、化粧品的なシミ・シワ・肌荒れには薬用化粧品(医薬部外品)、健康や肌状態を訴求した特定保健用食品、そして、有効性を…

2019/11/10

新しい糖尿病治療薬:経口GLP-1作動薬

第1回記事:新しい糖尿病治療薬 第2回記事:新しい糖尿病治療薬:グリフロジン製剤 筆者が薬学生だった頃、「タンパク質のような高分子は消化管から吸収され…

2019/10/30

食品の安全性を考えるB 〜食品添加物は悪者なのか?〜

今回も前回、前々回に引き続き、食品の安全性についてのお話です。今回は食品添加物について考えてみたいと思います。 前回記事『食品の安全性を考えるA 〜食…

2019/10/23

新しい糖尿病治療薬:グリフロジン製剤

第一回記事:新しい糖尿病治療薬 糖尿病と言うぐらいですから、尿に糖が排泄される病気であることは容易に想像がつくでしょう。実際、糖尿病では尿糖が陽性と…

2019/10/20

新しい糖尿病治療薬

読者の皆さんの中にも、成人病検診などで「耐糖能が悪化していますね」と言われたご経験のある方も居るのでは? かく言う筆者も、年々ヘモグロビンA1c(どの程…

2019/10/10

食品の安全性を考えるA 〜食品中に存在するリスクって何?〜

今回も前回に引き続き、食品の安全性についてのお話です。今回は食品中に存在するリスクについて考えてみたいと思います。 前回記事『食品の安全性を考える@ …

2019/10/4

食品の安全性を考える@ 〜天然由来成分は本当に安全なのか?〜

食物を食べるということは、我々人間が毎日行うごく当たり前の行為であり、また生きていく上で必要不可欠なものです。それ故に、食品は安全なものでなければな…

2019/9/10

クスリにまつわるお金のはなし 〜製薬会社のお弁当〜

日本の国民医療費は、最近では年間42兆円、一人当たり33万円を超えています。これらの費用のほとんどは、私たちが毎月収めている健康保険料や税金、患者自己負…

2019/8/30

プロフィール

19

達人に質問をする

本学は、美しい金華山と長良川などの自然に恵まれ、また歴史と文化の薫漂う岐阜市の北部に位置し、80有余年に及ぶ歴史の中で、建学の精神である「強く、正しく、明朗に」をモットーに、「人と環境に優しいグリーン・ファーマシー」を基本理念とした薬学教育を通じ、安心で安全な医療に貢献できる薬剤師や、人と環境にやさしい方法で薬を創ることのできる研究者や技術者を養成しています。

地域に生き、世界に伸びる大学として、今までの実績を基にさらに発展し続ける努力を重ねております。

関連リンク

ピックアップ

  • 中日ボイス『五輪延期に賛成反対?』
  • 会員登録
  • ログイン

企画特集(PR)

  • 公式 Twitter はこちら
  • 公式 Facebook はこちら
クラウドファンディング 夢チューブ 中日新聞
東京新聞 電子版
中日新聞の人材研修 ビジネストレーニング「ビズトレ」
中日販売サポート
東海テレビ 庄野アナと 新聞を音読してみよう!
中日防災ナビ
こどもウイークリーのこーなー
過去の企画・特集