リニア・鉄道館に行こう(40) 太多線を走ったケ90 2016/12/31

太多線国有化で浜松工場入りしたケ90

リニア・鉄道館には、屋外に2種類の車両が展示してあります。今年10月5日に公開した「リニア・鉄道館に行こう(38)」で取り上げた117系電車。それに、このケ90形蒸気機関車です。

「ケ90」とは変わった形式ですが、ケは「軽便(ケイベン)」のケで、JR在来線の軌間(レールとレールの幅・ゲージ)1067mmより狭い762mmの軌間で使用する機関車です。

国有鉄道が軽便鉄道を造ることはなかったのですが、ケの付く機関車がいくつか在籍していました。その理由は、大きく二つあります。一つは鉄道建設に際して使用する工事用機関車。もう一つは、買収した私鉄が使っていた機関車です。

このケ90は後者の例で、いま太多線と名鉄広見線となっている新多治見〜広見(現・可児)〜御嵩間で、大正7年12月28日から大正15年9月25日まで営業をしていた東濃鉄道で活躍していました。東濃鉄道は、後に登場する笠原線と駄知線を運営し、いまもバス会社として盛業中の同名の会社とは無関係の会社です。

なお、太多線をみると判るとおり、国有化されたのは多治見〜広見間だけでした。広見〜御嵩間は、その後に開通して今は廃止されている伏見口(現・明智)〜八百津間とともに東美鉄道を経て名古屋鉄道となっていますが、太多線部分も、国有化時には東美鉄道となっていました。

余談ながら、いま名古屋鉄道の新可児駅が頭端式となっていて、犬山方面と御嵩方面が同じ方向に発車するのは、もともと、現・太多線が御嵩方面に直通する線形となっていたためです。その後に太多線が美濃太田まで開通し、名古屋鉄道が犬山から新可児までの線路を敷いたことで、いまの線形となったようです。

JR東海の社員研修センターから搬出されるケ90

国有化された太多線は軌間を1067mmに改軌しましたが、改軌までの間は引き続き使用されたためケ90の形式を得ています。東濃鉄道・東美鉄道時代の形式は、最初の機関車ということで「A」だったそうです。大日本軌道鉄工部製という国産ですが、2両在籍していて、もう1両はケ90形ケ91号となります。

2両のケ90形は昭和3年9月まで活躍したものの、その後に活躍の場がなくなり昭和5年5月に廃車となります。その際に2両とも浜松工場に移されたようですが、構造が単純なためか解体されることなく保管され、昭和10年3月にはケ90が名古屋鉄道局の教習所に教材として展示されます。ケ91はしばらく浜松工場に保管されていたようですが、昭和26年10月に東京・神田にあった交通博物館に運ばれて展示されていました。しかし、翌年には新館増築のためとして浜松工場に戻りました。

2両とも教習用となったため、内部の構造が判りやすいようボイラー部やピストン部などが切り開いてあります。

ケ90が保存された教習所は、国鉄・中部鉄道学園を経てJR東海の社員研修センターとなりました。平成22年2月11日になると、翌年に開館を控えたリニア・鉄道館で展示するために、C57 139とともに搬出されました。上の写真は、その搬出時の様子です。なお、JR東海の研修施設はいま、別の場所に移転・統合されています。

浜松工場近くの公道上に保存されているケ91

一方のケ91ですが、長らく浜松工場で保存されたうえで、いまは「堀留ポッポ道」という遊歩道で公開展示されています。

この遊歩道は、浜松駅が高架化されるまで、浜松駅と浜松工場を結んでいた線路の廃線跡を利用したものです。廃線跡を巡る目的も兼ねて行くと、一層楽しいところです。リニア・鉄道館のケ90ともども、小さな車両を間近で見られますので、機関車の構造をじっくりと観察するのに適していますよ。

さて、このコラムでは、2013年2月5日から毎月1回程度のペースでリニア・鉄道館の収蔵車両を紹介してきましたが、このケ90をもって収蔵されている全39両の紹介がすべて終わりました。途中、新幹線300系量産車が700系量産先行試作車に展示替えされたため、実際には40両を紹介してきました。

長らくのご愛読をありがとうございました。

新年からは、紹介できていなかったリニア・鉄道館の車両以外の展示について、順次紹介したく思っています。また、並行して、明治村に保存されている鉄道車両・施設の紹介を行っていく予定です。

新年になっても、引き続きのご愛読をお願い致します。良いお年をお迎え下さい。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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