コーヒーの名著 Part3 2017/3/2

倉敷珈琲館25周年記念本「珈琲・かん」

いつもありがとうございます。
少し間が開きましたが、今回はとても希少で貴重な「ミニ本シリーズ」をご紹介いたします。

発行元は、「珈琲と文化」の季刊誌を20年以上も出版している「いなほ書房」です。代表は星田宏司氏で日本コーヒー文化学会の常任理事にもなっています。星田さんは珈琲業界の生き字引としても有名で、コーヒーの事なら何でも知っている方です。

私はコーヒー文化学会からの付き合いですが、入会時からいろいろと目にかけていただきいろいろな貴重なお話を聞かせていただきました。

星田さんは創刊当初から「珈琲と文化」の季刊誌以外の様々な単行本も出しています。特に珈琲の名人、達人といわれる人にスポットを当て、それぞれの方の本を数多く出版しています。

その始まりがミニ本シリーズなのです。

いなほ書房ミニ本シリーズ

とても小さな本で。大体200部くらいしか出版しなかったようです。

始まりは1980年頃で、豆本シリーズ
@ 「珈琲談義」寺下辰夫著
A 「日本珈琲店史」珈琲文化研究会編
B 「日本最初の珈琲店」珈琲文化研究会編
C 「茶房 きゃんどるの50年」武富達也でした。
私はこの四作目までは残念ながら所有していませんので、どんな本であったかはわかりません。

この次の五作目から12作目までは持っていて大変楽しく読ませていただきました。

今ではいずれも中古書店でも探すことが出来ない本ばかりですが、内容的にはとても素晴らしいもので、廃版後、再版した本も数冊あります。但し再販本は普通の大きさの単行本としての出版となりました。

「苦味礼讃」標交紀(シメギ ユキトシ)著

D 「苦味礼讃」標交紀(シメギ ユキトシ)著
吉祥寺に合った名店「もか」の店主。今は故人でありますが、未だに多くのお弟子さんや崇拝した方々が全国で自家焙煎珈琲店を営んでいて、その珈琲流儀が受け継がれています。昨年、再販本が出ました。そちらはミニ本に数十ページ加筆されています。

E 「コーヒー閑話」伊藤博著
愛知県豊橋市の珈琲研究家で故人です。多くの珈琲本を出版されていますが、もとは学校の先生で、珈琲好きが高じて珈琲研究家になってしまったという珈琲凶の方です。私を日本コーヒー文化学会にお誘いくださった人で、人間的にとてもやさしく素晴らしい方でした。

倉敷珈琲館「珈琲・かん」

F 「珈琲・かん」珈琲館編
1985年倉敷珈琲館の25周年記念本として出版した本で、関西の珈琲研究家「襟立博保」氏とお弟子さんの乗金芳子さんご夫妻などで書かれた名著中の名著で、普通に販売された本と、倉敷珈琲館特製の芭蕉布の装丁本の2バージョンがありました。

私は1989年に初めて訪ね、渾身の「ドライブラック」という濃度の濃い珈琲を頂きながら、いろいろなお話をさせていただきました。珈琲の香味の素晴らしさもさることながら、珈琲創りに携わる人はまず人格や人間形成を磨かなければならないなど、多くの事を学びました。

その後、味の基準、店創りの基準、自分自身のチェックをするために毎年訪問しました。多くの事を教えていただきました。今の私の店創り、味創りの基準はすべてここから始まったように思います。

今は、仕事から退き他の方にお店を譲られましたが、カウンターではお弟子さんが頑張っているようです。始めた尋ねた時に特別バージョンとしてプレゼントしていただいたのが、芭蕉布で織った表紙、ケースの「珈琲・かん」の本でした。中身は同じですがまったく思いが違います。

その本には、珈琲館をオープンするまでの苦労、学ぶことの重要性、焙煎の修業、豆との対話、物創りの心得、人間としての在り方などなどが多方面にわたり哲学的に書いてあります。特に、襟立博保氏との子弟としての信頼関係や教わったことなどが詳細に綴ってあります。

技術の事は一切触れていなく、私はこれまで千冊を超える数多くの珈琲本を読んできましたが、これほどまでに素晴らしい本はありません。今でも一年に数度は読み返しその思いに涙します。

珈琲に携わる方には是非お読みいただきたい一番の本ですが、残念ながら廃版となっていますし、再版の予定もありませんので中古書店で探すしかありませんが、見つけられるのが皆無なのです。

当店の「珈琲訓」として使っている言葉
◎縁尋機妙
◎一期一会
◎余情残心
は、この本より抜粋させていただいたものです。

G「ブラジルのコーヒー」伊藤博著
ブラジルコーヒーの歴史、生産状況、コーヒーの環境などをわかりやすく書いてあります。

「大作曲家と珈琲」鞍信一著 再販本

H  「大作曲家と珈琲」鞍信一著
ベートーベンなどの作曲家とコーヒーにまつわるお話を書いた本で、再販本もあります。鞍さんは、1910(明治43)年、金沢市生れ。1930(昭和5)年、雑誌「モダン金沢」を発行。1933(昭和8)年8月8日、市役所うらの広坂に、喫茶店「モナミ」を開業し、その後、レコードの資料館や音楽堂、ホール「モザール」を備えた「金沢喫茶村」に発展させた。戦後、金沢の労演・労音の設立に尽力するなど文化活動を支援する傍ら、戦前から造詣の深かったクラシック音楽の啓蒙にも携わる。またクラシックレコードのコレクターとしても有名で、SP・LPあわせて五万枚以上を収集。合わせて世界の歴史的蓄音機も集め、それらは今「石川県立歴史博物館」に寄贈されている。1991(平成3)年、83歳で死去

I 「珈琲・豆知識」伊藤博著
珈琲豆の生い立ちから焙煎までを分かりやすく簡素に書いている。

J 「珈琲哲学序説」寺田寅彦著
「経済往来」1933(昭和8)年2月号に発表されたものをリメイクした本です。
寺田氏は地球物理学者。漱石の門下生でもあり、吉村冬彦の筆名で作品を書き、数多くの随筆があり、いまでも多数の読者に愛読されている。

◎  寺田寅彦『コーヒー哲学序説』より
始めて飲んだ牛乳はやはり飲みにくい「おくすり」であったらしい。それを飲みやすくするために医者はこれに少量のコーヒーを配剤することを忘れなかった。粉にしたコーヒーをさらし木綿の小袋にほんのひとつまみちょっぴり入れたのを熱い牛乳の中に浸して、漢方の風邪薬のように振り出し絞り出すのである。
とにかくこの生まれて始めて味わったコーヒーの香味はすっかり田舎育ちの少年の私を心酔させてしまった・・・・。

K 「コーヒー読本」関口一郎著
珈琲に必要な事を器具から抽出法まで写真入りで詳しくかいてある。

L 「ロンドンのコーヒー・ハウス」小林章夫著
17世紀中ごろから18世紀にかけて、ロンドンで流行したコーヒーハウスをたどった本。

M 「珈琲の俳句」乗金健郎著
倉敷珈琲館の芳子さんのご主人(故人)が出された「珈琲の俳句集」。
私は珈琲館に毎年尋ねましたが、カウンターで随分いろいろなお話をしていただきました。

この会でミニ本シリーズは終焉したようです。
とても希少な名著ばかりですが、技術を書いている本はほとんどありません。その方の人間味があふれた本ばかりです。今、最も必要なことかもしれませんね。

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プロフィール

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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