なぜお薬が貴方の人生をかえるのか〜寿命に効く薬とは? 2017/4/10

高血圧の薬について薬局の窓口で患者さんに説明をしておりますとき、私はたまに「これは○○さんの寿命に効きますよ」と説明することがあります。いきなり見ず知らずの薬剤師から'寿命に効く'といわれて、驚いた顔をさせる方もおられます。

「これは血圧を下げる薬でしょ」と患者さんは本当によくご存じです。「血圧が下がったから今日はお医者さんの先生に褒められた」とおっしゃることもあります。それはそうなのですが、生活習慣病のお薬とされる血圧の薬の効き目を、ただそれだけと思われているのであれば、たんへん勿体ないことです。

高血圧の薬は、血圧を下げる働きがあります。お年を召された方は、完全に健康なお年寄りでも、みなさん若い時に比べて少しずつ血圧は高くなっています。これは誰でもそうです。

ただものには限度あり、慢性的にずっと過度の高血圧が続くと、動脈硬化が進み、脳卒中、心疾患、慢性腎臓病を引き起こすことが知られています。特に脳卒中は、命を落とすこともあり、例え命が助かっても運動障害や言語障害が残りやすく、長いリハビリが必要となることがあります。

もちろん心疾患には心筋梗塞などがあり、これも大変恐ろしい病気です。また、血圧が高いと腎臓にも負担がかかりますから、慢性腎臓病へと進みやすく、ひいては脳卒中や心筋梗塞の危険も高まります。

高血圧の薬を飲まれている方は、花粉症とか腰痛とかとは違い、普段の生活では、高血圧自体で苦労されることは殆どないでしょう。しかし、ずっと高血圧が続くと、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こすリスクは、”少しずつ”ですが”確実に増して”いっているのです。脳卒中、心筋梗塞は一度起これば、その人と家族の方々の日常生活をたった1日で一変させてしまいます。なので、高血圧の薬は寿命に効きますとお話する訳です。

「血圧の薬なんて、飲み忘れても痛くもなんともない」「効いとるかどうかもわかりゃせん」と窓口でおっしゃる方もおられます。私の父親も、同じことを言います。帰省の度に説明しますが、息子が一応薬学部の先生なのも関係ありません、父親なので当然息子の話を聞くはずもなく、お互いいい歳なのにいつも親子喧嘩になります。

多分、このブログをここまで読んでくださった方は、私の父親ではないと思います。ですから、本人のリハビリの辛さ、後遺症の心配、家族の介護の苦労に、ある日突然向き合わなければならなくかもしれないと考えると、高血圧の薬を毎日飲み忘れなく正しく飲み続けるのは大切なことだということに同意して頂けますでしょうか?

中村光浩
昭和62年 岐阜薬科大学大学院修士課程修了。昭和62年(株)大塚製薬工場入社、代謝分析研究および臨床開発に従事。平成5年より岐阜大学医学部附属病院薬剤部(製剤主任、薬品試験主任)。平成18年より岐阜薬科大学 医薬品情報学研究室において、臨床ビッグデータ解析、生体マトリックス中薬物濃度の高感度分析法、メタボロミクスによるバイオマーカーの探索(癌、皮膚バリア機能を対象)をテーマとした研究を行なっている。岐阜大学大学院 連合創薬医療情報研究科 非常勤講師。岐阜県大学薬剤師協議会 会長。

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