痒みを収めるステロイド軟膏の「正しい塗り方」とは? 2017/8/10

★ステロイド軟膏は「塗る」ではなく「置く」?

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今日は軟膏の話をします。
帰省したときに私の母がこう自慢したのです。

「光浩(私の名前)や、最近病院で良いこと聞いたわ。」

「今まで、手の指が赤くなってかゆい時にステロイド軟膏塗っとった。かゆみは塗ったときはおさまっとたが、なんか皮膚が、つるつるになって横に裂けて痛かったんじゃ。それで、皮膚科の先生にきいたら、こうやって、

『トントンって置くようにちょっと塗れば良いよ』

って言われた。そのようにやってみたら、調子良かった。やっぱり聞いてみるもんやわ。」
私の母が皮膚科の先生に聞くまでの塗り方はどうも間違っていたようでした。


★ステロイド軟膏をすり込むのはNG!

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その間違っていた塗り方ですが、貧乏性なので化粧水を使うときのように、よく効くように、よく染み込むようにと思って、ゴシゴシ手とか指にすり込んでいたのです。

塗って直ぐは、かゆみは収まるのですが、一生懸命こすっている分だけあとでかゆくなっていたようです。


★ステロイド軟膏の正しい塗り方

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下の図をご覧下さい。図の下(○)が正しい塗り方です。

皮膚炎に軟膏を塗る場合は、すり込むとそれが刺激になって痛みや赤みが強くなることがあります。また、肝心の炎症部位の軟膏塗布量が少なくなってしまいます。乗せるようなイメージで厚めに塗ると良いとされています。

薬局でご婦人の方のお話を伺うと結構、すり込んだ方が良いと勘違いされておられる方が多いようです。ステロイド軟膏は皮膚を通り抜け易い性質がありますので、親の敵のようにすり込まなくても自然に染み込んでいき良くききます。

かゆみが収まってくると、思わず自分で掻いてしまう(例えば寝ているときに掻いてしまう)ことが無くなるので、皮膚が傷つかなくなり炎症が治まり、そうすると余計かゆみが収まり、掻くことがもっと少なくなり…というふうに、良い方向に症状が向いて、ステロイド軟膏から保湿剤に切換えがすすみ順調に治っていきます。

ご婦人の方が、とにかく、すり込んでしまいがちになるお気持ちはわかりますが、物には限度というものがありますので…


★使用量は自己判断で減量しない!

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ステロイド軟膏には抗炎症作用という、皮膚の炎症(赤みやかゆみ)を抑える働きがあり、アトピー性皮膚炎などに使われます。ステロイド軟膏の副作用は殆ど塗った局所に起こります。私の母の例だと、皮膚萎縮(皮膚がやや薄くなる)という副作用が出ていて指の関節の皮膚が切れてしまっていた訳です。これは、可逆性でステロイド軟膏を減量していくと回復します。

但し、自己判断で減量しないことが大切です。母に横にアカギレみたいに切れていた指を見せてもらったときは、本当に痛そうでしたが、それでもまだすり込んでいたのです。「トントンって軟膏を置くようにちょっと塗る」ようにして上手く治ったので、私に自慢してきたわけですね。

薬剤師免許を取って32年間、私は、毎年盆と正月は必ず帰省していますが、そういえば一度も軟膏の塗り方を母に説明したことが無かったです。せっかく親に、大学(それも薬学部に)にいかせてもらったのに、本当に親不孝ですよね(お母さん、ごめんなさい)。

★ステロイド軟膏は上手く使えば怖くない

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ステロイドというと患者さんも自分でいろいろ勉強されておられて知識をお持ちの方も多いと思います。なので効果や副作用の詳しいことは、この記事では書きません。多くの患者さんは、ステロイドは「とにかく怖い」、「強い薬なんでしょ」とおっしゃることが多いです。「どうしてそうお思いですか?」と尋ねますと、「みんなが言っているから」、「ネットにかいてあるから」以外の理由をおっしゃる方は少ないです。塗り薬などの局所投与とステロイド注射などの全身投与の違いなどもご存じない方が多いのです。

私は一応薬剤師ですから、自分の親に対しても「ステロイド軟膏は効くから、ちゃん上手く使ってね」と言うだけです。くれぐれも偏見や誤解で“ステロイド軟膏という人類の宝”とも言える薬を避けないようにしてください。

医師も薬剤師も十把一絡げにステロイド軟膏をとらえてはいません。5 cmほどの小さな軟膏チューブに書いてある販売名をみれば、顔に塗っても良いステロイド軟膏なのか、体に塗るステロイド軟膏なのか、どれくらいの量を使えば良いのかちゃんと分かりますし、勿論説明いたします。なので、ご心配であればタンスの引き出しに転がっているかもしれない軟膏のチューブを取り出して、街の薬剤師にお尋ねください。親身になって説明してくれると思います。

岐阜薬科大学 実践薬学大講座 医薬品情報学研究室 教授

昭和62年 岐阜薬科大学大学院修士課程修了。昭和62年(株)大塚製薬工場入社、代謝分析研究および臨床開発に従事。平成5年より岐阜大学医学部附属病院薬剤部(製剤主任、薬品試験主任)。平成18年より岐阜薬科大学 医薬品情報学研究室において、臨床ビッグデータ解析、生体マトリックス中薬物濃度の高感度分析法、メタボロミクスによるバイオマーカーの探索(癌、皮膚バリア機能を対象)をテーマとした研究を行なっている。岐阜大学大学院 連合創薬医療情報研究科 非常勤講師。岐阜県大学薬剤師協議会 会長。

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