自然と正しくつきあうために 有毒植物誤食について(その1) 2017/5/10

スイセン

寒かった冬が終わり、サクラの花が咲き誇る時期になると多くの植物が一斉に活動をはじめます。それは同時に有毒植物を誤食して食中毒のシーズンが始まったことを意味します。

4月14日付けの全国ニュースとして、ニラとスイセン間違え、青森県で5人が有毒植物誤食による食中毒事件が報道されました。こんな内容です。「青森県三戸地方保健所管内に住む10代から80代の2つの家族、合わせて男女5人が自宅近くの道端に自生していたスイセンをニラと間違えて採ってみそ汁の具にして食べ、吐き気などの食中毒症状を発症し治療を受けた」というものです。

有毒植物の誤食の原因はいくつかありますが、もっとも多いのが植物の形態によるものです。とりわけスイセンとニラとの誤食は毎年のようにおこっています。厚生労働省のホームページ
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yuudoku/index.html)
によると、スイセンによる食中毒は平成19年〜平成28年の期間に事件数44件、患者数179名(うち死亡者1名)が報告されています。スイセンとニラの葉は確かに形状がそっくりです。しかし、ニラはご承知にように特有な臭いを持つのに対して、スイセンにはその特徴がなく明確に区別することができます。スイセンの有毒成分はアルカロイドと呼ばれるグループに属するリコリンという物質です。

リコリンによる死亡事例は少ないのですが、平成28年北海道で悲惨な事件が起こってしまいました。平成28年5月3日のニュース報道です。岐阜県飛騨市古川町の地場産市場「榧(かや)の里」にて有毒植物のイヌサフランがギョウジャニンニクとして販売されていたことが明らかになり、5月2日までに3束の購入者が分かっておらず、手元にある場合は食べないように注意を喚起した、という内容です。これはこの商品を買ったひとから榧の里でギョウジャニンニクだと思って買った男性から「味が苦い」と連絡があり発覚したようです。

イヌサフランの有毒成分はコルヒチンと呼ばれるアルカロイドです。アルカロイドは分子内に窒素を含む一群の化合物で多くのものが苦味を持っています。よくほろ苦いものは体によいと言われますが、苦味を持つ天然物質は毒性を持つものが多いのが実情です。体によいということで量をたくさん摂ることで食中毒のリスクが高まってしまいます。最近、道の駅などで地元の名産品をよく見かけます。提供者はプロの人たちなのですが、そんな人たちも間違ってしまうくらい似ているものがあるのです。

類似した例をもうひとつ紹介しておきます。2011年4月30日付けの中日新聞に以下の記事が掲載されました。「岐阜・郡上直売所で販売 注意を 岐阜県生活衛生課などは29日、郡上市大和町剣の農産物直売所「郡上旬彩館やまとの朝市」で購入した山菜「ハンゴンソウ」を食べた山県市の男性(67)と女性(39)が食中毒の症状を訴え、岐阜市内の病院に入院したと発表した。男性は一時重症となったが、2人とも容体は安定している。同課は、男性が購入した山菜の中にハンゴンソウに形が似た有毒成分を含むナス科の「ハシリドコロ」が混入していたことによる食中毒と断定し食品衛生法に基づいて回収命令処分とした。同課は「ハシリドコロの毒は加熱しても分解せず、食べれば死亡する危険性もあるため、注意してほしい」と注意を促している。」

別の新聞記事ではこの山菜を取ったのはその道20年のベテランだったとのことです。岐阜薬科大学の酒井先生に提供していただいた写真を掲載しました。見分けることが難しいことがわかっていただけるでしょう。

イヌサフラン
ハシリドコロ(上)とハンゴンソウ(下)








岐阜薬科大学教授(薬用資源学)
田中稔幸

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