自然と正しくつきあうために 有毒植物誤食について(その2) 2017/5/20

コバイケイソウ

前回、形状が山菜と有毒植物が似ているために起こる事故について紹介しましたが、今回も引き続き注意すべき植物を紹介します。

(前回記事: 5/10 自然と正しくつきあうために 有毒植物誤食について(その1) )

2010年4月岐阜で発生した事件です。「有毒植物を誤食、3人が食中毒症状:県生活衛生課は27日、有毒植物のコバイケイソウを食べ、大垣市と不破郡垂井町の50代の男女3人が、嘔吐(おうと)や血圧低下などの食中毒症状を訴え、同市の病院に入院した、と発表した。(中略)患者のうち1人が26日、郡上市で山菜採りをした際、オオバギボウシと誤って採取。同日夜、別の患者宅において4人で酢味噌(すみそ)あえや天ぷらにして食べたところうち3人が間もなく症状を訴えたという。食べた量は分かっていない。同課では、コバイケイソウとオオバギボウシの若芽は、葉柄の有無や葉脈の走り方に違いはあるがよく似ていることから、山菜採りでは注意してほしいと呼び掛けている。(岐阜新聞2010年4月28日)」

ウルイというのはオオバギボウシの若い葉で山菜として食されたり、植物容器として使われたりします。確かにこの2種の若い葉はそっくりです。自然のプロでも間違うこともあります。そのエピソードを一つ紹介しましょう。本田靖春「評伝 今西錦司」(山と渓谷社)からの引用です。

『伊谷は本谷山の頂上付近で「先生これ食べられますよ」といいながら摘んだギボシを、リュックサックから取り出して女性に手渡した。(中略)今西は、持参の酒をちびりちびりやりながら、「この苦さがいい」と相変わらず健啖家ぶりを発揮する。(中略)ややあって、膳を片づけないうちにとんでもない異変が持ち上がる。伊谷の舌がしびれてきて、煙草の味がしなくなったと思う間に、激しい嘔吐感に襲われたのである。今西も同様であった。二人は表に駆け出して、食べたばかりのものをどっともどした。』

今西錦司先生は、みなさんご存じの通り、岐阜大学の学長を務められたこともある生態学者、文化人類学者で日本の霊長類研究の創始者として知られています。文中の伊谷とあるのは、伊谷純一郎先生であり、今西錦司先生の跡を継ぎ、日本の霊長類研究を世界最高水準のものとしたことで知られています。自然のプロというべき人たちの文字どおり苦い思い出となってしまったのです。

山菜は「ほろ苦さ」が好まれますが、アルカロイドは苦いものが多く、苦いのは体に良いというのは間違いであることを知っておくべきです。

誤食事件を起こす要因のひとつに名前の類似性があります。つまり有用植物と中毒を起こす植物に間違いやすい名前がついているケースです。 

園芸植物や帰化植物に和名をつけるときに命名者は知恵を絞るのですが、わかってもらうためにみんなが良く知っている植物の名前を入れたりすることがたびたびあります。たとえばカロライナジャスミン。花期には黄色の花が咲き、あちらこちらで栽培されるようになりました。ジャスミンというとジャスミン茶がすぐに思い浮かべることができますね。カロライナジャスミンの花も良い香りがします。

カロライナジャスミン

ところがこの植物はジャスミン茶のジャスミンと近縁関係にはありません。それどころか全草にアルカロイドの一種を含み、お茶として花を使って死亡事件に至ったこともあります。園芸植物に名前をつけるときにはくれぐれも注意を払ってもらいたいですね。

岐阜薬科大学教授(薬用資源学)
田中稔幸

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