抽象画と珈琲〜書家 川口茜漣 2017/6/2

おかげさまで、40周年を迎えました。

いつもありがとうございます。お陰様で、待夢珈琲店は平成29年5月28日に開店40周年を迎えました。これもひとえに皆様方のおかげと心より感謝申し上げます。40年を思い起こせば、本当にアッという間でした。

その間、店を3店移転し、やる気と根気だけで、日々少しずつ皆様にご理解いただける店創り、味創り、人創りに邁進してまいりましたが、まだまだ未熟な部分が沢山あり皆様に助けられることばかりです。これからも精一杯精進して頑張りますのでよろしくお願いいたします。

25周年には「25周年記念セレモニー」を行いましたが、次は50周年にて盛大にお祝いのセレモニーを行いたいと思います(生きていればですが・・・・笑)。よって今回は特に何も行いませんが、感謝の気持ちは日々持ち続け50周年に向け、その時までに皆様に誇れるような味、店、人格になっているように努力いたしますので末永くよろしくお願い申し上げます。

川口 茜漣作(左)、坂本 泰漣作(右)、

さて、今回は、待夢珈琲店に飾ってある書の作家「川口茜漣」さんを紹介したいと思います。

当店は旧店舗から25年以上、店の壁を無料で開放して毎月いろいろな芸術家の方に作品を飾っていただいています。今まで、絵画、写真、イラスト、陶芸等、書家など、いろいろな芸術家の方に壁面を彩りよく飾っていただきました。

私自身は、才能はあってもお金がなく個展が開けない若手の芸術家の方々の応援として、無料で当店を使っていただき展示し、多くの方々に知っていただくことで、「飛躍」してくれることを願いとしてまいりましたが・・・、近年、若手の優良な方が本当に少なくなって参りました。

勿論、芸術関係に進む若者は今でも多くいるのでしょうが、とてもわかりやすく手軽な作品が増えたように思います。商業デザイン系などは、パソコン一台あれば誰もがデザイナーとなり得ますし、お金も手間も時間もかかる油絵を先行する若者はほとんどいなくなったそうです。

簡単便利、手軽で安い!などが芸術の世界にも感染?しているのでしょうか。これは前号に書いたように、現代の自家焙煎珈琲屋や喫茶店の世界にも言えることなのですが、誰もがわかり易い、飲みやすい商売として成り立つものが優先されているように思います。

自家焙煎珈琲屋も、香り重視の苦味の弱い軽い味わいのコーヒー豆を焙煎する若者の店が多くなってきたように思います。確かに深煎りのどっしりした味わいのコーヒーを目指して開店される方もみえますが、その方々のコーヒーはマニアのコーヒーとして扱われ、多くの方に納得していただく味ではなく、前者の店のように沢山のお客を集客する店にはなりにくいようです。

マニアのコーヒーを提供している店主はよく、「本物の味が分かる方がいなくなった」と嘆くのですが・・。これはこれでよくわかりますが、嘆いていても何も進みませんし、嘆きは自分へのオゴリと私は思っています。

私は抽象画が好きで、所有している絵画の8割は抽象画です。よって、抽象画を店に飾る機会も多く、その時のお客の反応を楽しんでいます。抽象画は説明のできる絵ではありません。よく、「何が書かれいるか解らない!」などという方がとても多くいますが、抽象画は感じる絵なので、私に聞かれても説明ができません。色彩や構図やタッチなど、絵に直面し、自分の感性と対峙してそこから何かを感じ取るのです。それは観た側のそれぞれの感性ですので、同じ絵でも人によって感じ方がまったく違うのです。要はその方の感性がそのまま絵の感想に現れるのです。絵を語る時、実は自分自身や自分の感性、概念を語っているのです。

川口茜漣作

そういった意味で珈琲はある種、抽象画に似ています。はっきりした形がないのに、その人の味覚、触覚や感覚だけで、「美味しい」という幸せを感じたり、「不味い」という不快感を覚えたりします。抽象画の世界も形がないのに、観て清々しい気持ちになったり、力や希望を感じたり、絶望感で暗くなったりします。

よく店に「美味しいコーヒーをください」と言ってくるお客様が多く来ます。お客の好み、味覚は様々です。苦味一つとっても、同じコーヒーを「苦い」という方と、「苦くない」という方がいます。よって、すべての方に合う珈琲は存在しませんので、こういってお見えになるお客が一番難しいですし困ります。コーヒーは嗜好品の飲み物ですので、好みが人によって違いますので「絶対美味しい」は存在しません。お客は自分の味覚と感性で楽しんでいますし、それで良いのです。

楽しみ方にも確かにレベルというものがありますので、どの立ち位置で楽しむかはそのままレベルの違いと言ってしまいますが、それはコーヒーだけではなくすべての事に言える話ですね。

しかし、私は誰もが「美味しい!」と言っていただけるコーヒーがいつかはできないかと密かに思っています。苦い、酸味がある、濃い、薄いなどと関係なく、「理由は分からないが、美味しいコーヒーですね!」なんて味覚や理屈を超えた珈琲が出来ないか?と、そんなことを企てている今日この頃です。

「雨」  川口茜漣作

当店は、現在、禁煙室では毎月「待夢・カフェギャラリー」として、作家さんに個展をしていただいています。喫煙室の方は、私のお気に入りの絵画を飾っています。

今は、私の大好きな書家「川口茜漣」さんの書(抽象的)を飾っています。毎日見ているとその日の自分を映し出してくれ、自分の指標となっています。特に、メインに飾ってある「雨」という大作は迫力満点で、過去と未来、静と動、絶望と希望、優しさと冷たさ、繊細さと大胆さ、黒と白など、表裏一体、相反する世の中のすべての事が含まれていて、画の中でいろいろな物語が繰り広げられている世界観は、まさに宇宙規模のとても深い作品なのです。

特に気に入っていることは、「媚びていない」ことです。観る側に媚びず、自分と墨のもつ力強さと繊細さとの対話のみによって無限の世界に仕上げられています。私も豆との対話のみで珈琲と向き合いたいと常々思っていますが、どうしても媚びてしまうのです。この作品を観たとき、自分の未熟さを痛感させられました。

「音の雫」 川口茜漣作
「珈琲の中国語版」川口茜漣作

ほかには、「音の雫」という抽象作品と、入口に二点、こちらは書で、「珈琲」を中国語で「咖啡」と書いていただきました。昔は王様の飲み物だったので「珈琲」という王辺がついていましたが、現在は、誰もが口にする飲み物という意味で、口辺の「咖啡」としました。

後は、当店の「珈琲訓」です。これは、新店舗の開店当時から飾ってあります。(達人に訊け「今井利夫の珈琲三昧2013/11/2号」参照)是非一度皆様もご覧いただきたいと思います。

「新しい太陽」坂本 泰漣作

これらの素晴らしい作品を描かれるのは津市在住の坂本康子(川口茜漣)さんで、私の講座、中日文化センター栄の珈琲教室に6年以上も通ってくれています。ドリップの腕もさることながら、2年ほど前から手網焙煎器を駆り、焙煎も習得しているプロ顔負けのコーヒーの腕を持つ書家さんなのです。また、坂本さんのご主人(坂本泰漣)も画家で、素晴らしい抽象画をお書きになられます。

私は、松坂屋で開催された個展に一度だけ観に行かせていただきましたが、『太陽』をテーマに作品を描かれていました。太陽の光と熱のエネルギー(生命の源)を、すべての生き物が享受し存在し生きている地球そのものを描いているような素晴らしい作品です。
現在は自宅、津の中日文化センターなどでも一般の方に教えています。

ということで、今回は、坂本ご夫婦の個展情報を紹介させていただきます。是非ご観覧くださいませ。

《展覧会情報》
「川口 茜漣・坂本 泰漣 二人展」
《会期》 2017年6月3日(土)〜6月11日(日)
《場所》 三重県伊賀上野、ギャラリー「ART SPACE IGA・・アートスペースいが」
〒518-0867 三重県伊賀市上野福居町3305 TEL:0595-22-0522 
会期中休廊なし

ご夫妻

川口茜漣(カワグチ セイレン)
本名:坂本康子。1960 名古屋市に生まれる

坂本 泰漣(サカモト タイレン)
略歴
1959 広島に生まれる
1984 愛知県立芸術大学卒業

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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