岐阜県加茂郡・大梅寺の2つも不思議な伝説がある秘仏の聖観音像 2017/6/10

岐阜県加茂郡富加町の大梅寺。『慈雲山大梅寺化縁偈併引』には、次のようなことが書かれていた。

ここに住む人たちが、平安時代に後一条天皇から授かった観音像を、簡単なお堂を建てて信仰してきた。江戸時代になり、井戸宗太という人物が江戸に行き、領主である旗本 前田氏から現在の寺領を貰い受け、観音堂を築いた。元禄8年(1695年)に地元の古老がここに、黄檗宗の今渡円通寺(可児市)から鉄面和尚を招いて、大梅寺を開山したと。

今は無住で、地域の方が守っておられる。今回、特別にお願いして総代さんや学芸員さんの立会い元、拝観させていただけた。とってもありがたい。

守っておられる地域の方も、今回初めて拝観されるという方がいらっしゃるほど、ずっと扉は閉ざされている。観音堂の須弥壇の上には金庫のような扉があり、その中にある厨子に聖観音菩薩立像は祀られている。

作者は不明で、平安時代作、ヒノキ材、像高は約90p。岐阜県指定重要文化財だ。金色に輝く冠や首の瓔珞や手に持つ蓮のつぼみや、光背や台座は、後付け。白毫、天衣や手足など一部修復もされている。

直立して立ち、離れてみると、お顔は黒く見えるが、近くで明かりをあてさせていただき、お顔を拝観するととても温和な優しいお顔だ。浅く彫られた眉と目、こぶりな薄い唇。正面から明かりをあてた場合と、上から当てた場合とでは別人のようだ。


正面からは明かりをあてたら口を開けたようにほんわかして見える。

しかし、上から明かりをあてると口をキュッと結びやや厳しめのお顔に見えた。優しいけど、時には厳しくしかりつけてくれるお母さんのような仏さまだ。

お厨子はまるで映画のセットのように正面だけで、後ろはない。だから厨子から出さなくても後ろの姿を拝観できた。光背の後ろのすきまから拝観させていただくと、背中に斜めに傷がある。

これには、次の伝説がある。

隣村の郷士がある日、夕食の酒に酔って下男の肩に斬りつけた。ところが翌朝になると、下男は無傷。下男は大梅寺の観音様を信仰していて観音様が身代わりになって切られてくれたという。確かに観音様には、下男が切られた位置に傷ができていた。それから人々はこの観音様を『身代わり観音』と呼んで災難から守ってくださる仏様として信仰されたという。

お厨子はまるで映画のセットのように正面だけで、後ろはない。残念ながら光背があるので、後ろからは肩は見えず背中しか見えなかったが、背中右肩には今も切り傷が残っているそうだ。

あとお尻のとこにもなにか四角い当て木のような傷がある。中の木をくり抜くうちぐりのため背中に四角い切り込みはあるが、お尻にあるのは珍しいので、管理されてる方にたずねてみた。その四角い板を外すと紙が収められていたが、火事があった時に、仏像は焼けなかったが熱で中の紙は炭化してしまい炭になってしまったとのこと。その紙に何が書かれていたのか気になるところだ。

あともう一つの伝説がある。

天正6年(1578年)、今の大梅寺になる前、ある晩に観音殿が火に包まれて燃え上がった。燃えさかる火の中から黒いものが飛び出した。堂前の梅の木の側にお立ちになる観音様の姿があった。それで、この観音様を『梅の木観音』とも呼ぶようになったそうだ。

2つも不思議な伝説がある、ありがたい仏像。霊験あらたかだなあ仏さまだなぁとつくづく感じた。この観音様は今も、このお厨子の中から住人を守ってくださっているんだろうなぁ、と優しい気持ちになった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「大梅寺(たいばいじ)」
岐阜県加茂郡富加町羽生
(聖観音像は秘仏で、拝観はできません)

問い合わせ
・ 富加町郷土資料館 TEL 0574-54-1443
・ 富加町教育委員会 文化財係 TEL 0574-54-2177
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

田中ひろみ著「仏像なぞり描き」(写仏)本、好評販売中です!

PR情報

記事一覧

大須の「七寺」の大きな観音菩薩と勢至菩薩💗

大須にある七寺(ななつでら)。正式名は、長福寺(ちょうふくじ)。大須通り沿いにあるが、お堂が奥まっているので通りからはわかりにくい。

2019/12/28

常滑市「大善院」の秘仏本尊「十一面観世音菩薩」ご開帳!

知多西国14番札所の常滑市「大善院」。 知多西国三十三所霊場の開創250年を記念して秘仏本尊「十一面観世音菩薩」が2019年11月1日(金)〜11月30日(土)に特別…

2019/11/14

三重県総合博物館(MieMu)で開催中の「三重の仏像」展へ!

三重県津市にある三重県総合博物館(MieMu/みえむ)で2019年10月5日から開催中の展覧会「三重の仏像〜白鳳仏から円空まで〜」に行ってきた。 (会期は12…

2019/10/29

33年ぶりにご開帳!知多市「大智院(めがね弘法)」の聖観音

知多西国第18番札所。知多四国71番札所。尾張三十三観音10番。東海三十六不動22番。 聖徳太子の開基で、本尊は秘仏の「聖観音」で、ともに秘仏のお前立は「…

2019/10/16

11年ぶりの秘仏・聖観音のご開帳!常滑市「洞雲寺」

常滑市にある洞雲寺。知多四国八十八箇所・第62番の札所、知多西国三十三所霊場・第13番の札所、法然上人知多二十五霊場・第12番の札所。 白鳳年間、奈良の大…

2019/9/18

日間賀島の「たこ阿弥陀」と「鯖大師」

愛知県知多半島の先端の師崎から、約2.4kmの沖合に浮かぶ「日間賀島(ひまかじま)」。 日間賀島はタコとフグが有名。港に降り立つと、大きなタコのモニュメン…

2019/8/30

重文が3体も安置される岐阜市「乙津寺(鏡島弘法)」

岐阜県岐阜市の乙津寺(おっしんじ)。通称「鏡島弘法(かがしまこうぼう)」や「鏡島の弘法さん」や「梅寺」と呼ばれている。毎月21日は、弘法大師のご縁日「…

2019/7/17

60年ぶりの中本尊ご開帳!知多西国三十三所 第一番札所「岩屋寺」

愛知県の南知多にある岩屋寺。知多西国三十三所1番札所 知多四国43番札所でもある。

2019/6/11

100年ぶりのご開帳の知多西国九番札所・持宝院「如意輪観音」!

今年2019年は、愛知県の知多半島最古の霊場めぐりである「知多西国三十三所霊場」ができて250年目の記念の年。 その記念で、特別なご開帳がいろいろ行われてい…

2019/4/27

知多四国七十番札所「地蔵寺」の大きな大日如来像!

愛知県知多市大草にある地蔵寺(知多市大草)。大草にあることから「大草地蔵寺」と呼ばれている。知多四国霊場七十番札所である。

2019/4/15

プロフィール

17

達人に質問をする

仏像イラストレーター&文筆家

丸の内はんにゃ会(女子の仏教サークル)代表、奈良市観光大使。

子供の頃、仏像好きの叔父に連れられ奈良や京都の仏像を見て歩く。

大人になりひさしぶりに京都の三十三間堂に行き、突然仏像へ恋に落ちる。
以来、全国の仏像に会いに行くようになる。

そして、仏像本や仏像講演やカルチャーセンターの講師をするようになる。

著書には
「仏像、大好き!」(小学館)
「拝んでしあわせ奈良の仏像100」(西日本出版社、「田中ひろみの勝手に仏像ランキング」(メディアイランド)
「クイズで入門 日本の仏像」(講談社+α文庫)、「美しき仏像」(ぶんか社)
「ふらりおへんろ旅」(西日本出版社)
「江戸東京再発見 ぶらりスケッチ散歩」
など35冊。

  • 会員登録
  • ログイン
今日の天気(05:00発表)
名古屋
晴れ後曇り
11 ℃/--
東京
晴れ時々曇り
9 ℃/--
大阪
晴れ後曇り
11 ℃/--
  • 現在、渋滞情報はありません。
  • 登録路線が未設定です。

企画特集(PR)

  • 公式 Twitter はこちら
  • 公式 Facebook はこちら
クラウドファンディング 夢チューブ 中日新聞
東京新聞 電子版
中日新聞の人材研修 ビジネストレーニング「ビズトレ」
中日販売サポート
東海テレビ 庄野アナと 新聞を音読してみよう!
中日防災ナビ
こどもウイークリーのこーなー
過去の企画・特集