見えた!神秘のコロナ〜アメリカ皆既日食〜 2017/8/29

皆既日食は、月が太陽をすっぽり隠してしまう現象。限られた地域でしか見られない。

★劇的な日食
日食とは、月が太陽と地球の間に入り込むために、月が太陽を隠してしまう現象である。つまり、日食は太陽-月-地球が一直線に並ぶ新月のときに起こる。とはいっても新月になるたびに必ず日食が起こるというわけではない。それは、月の通り道である白道が、太陽の通り道である黄道に対して約5°傾いているために、白道と黄道の交点付近で新月にならないと、太陽と月とが重ならないからだ。

さらにドラマティックにしているのは、太陽と月の見かけの大きさがほとんど同じであるところにある。実際の大きさは、太陽は月の約400倍もあるのに、地球からの距離は月は太陽の約1/400しかないからである。しかも、地球は太陽の周りを、月は地球の周りを楕円軌道で回っているために、地球に近づいたり遠ざかったりして微妙に見かけの大きさが変化する。だから私たちはいろいろなパターンの日食を見ることができる。これはもう神様から贈られた奇跡としか言いようがない。

8月21日(現地時間)、アメリカ合衆国を西から東へと月の影が横断する皆既日食が見られた

●8月21日 アメリカ皆既日食

今年2回目の日食である皆既日食が、8月21日に起こる。1999年8月11日にヨーロッパ・西アジア皆既日食から1サロス後の皆既日食にあたり、皆既帯はアメリカ合衆国を太平洋側から大西洋側へ横断していて、オレゴン州セイラム、アイダホ州アイダホホールズ、ワイオミング州キャスパー、ネブラスカ州グランドアイランド、ミズーリ州セントジョセフ、イリノイ州カーボンテール、テネシー州ナッシュビル、サウスカロライナ州コロンビアといった都市が皆既帯に入っている。

私は、確実な晴れを求めて、ワイオミング州キャスパーの西、ボイセン州立公園に向かった

★観測地はボイセン州立公園
今回の皆既日食は、アメリカ西部から東部にかけて、あちこちで見られるが、皆既の継続時間は、西部より東部の方がやや長い。そして気になるのが晴天率だ。大雑把にいうと平地で大都市が点在する東部よりも、ロッキー山脈のある西部の方が晴天率は高い。ただ西部は都市は少ない。という訳でワイオミング州で皆既帯中心線近くに位置するワイオミング州第2の町キャスパーを選んだ。晴天率は92%で申し分ないが、皆既となる午前中は、やや雲が出やすいことから、さらに晴天率が高いキャスパーから約200km西のボイセン州立公園を観望地に定めた。そこは、日食中に全天に雲が一つでも出る確率は2%だそうだ。

ボイセンでは、10時20分に南東の空高度40°に昇った太陽の右上から欠け始め、10時39分の美しいダイヤモンドリングに続いて、幻想的なコロナが広がる。コロナが見えている時間は、2分20秒程度と標準的な長さ。薄暗くなった空に、金星、木星をはじめ冬の1等星がいくつか従え、黒い太陽が浮かび上がる。そして10時41分ごろ再びダイヤモンドリングが見え、13時06分に元の太陽に戻る。

日食当日、美しい旭とともに青空が広がった。雲は若干あるもののおおむね良好

前日から、ボイセン州立公園でテント泊。夜は満天の星空と素晴らしい天の川が、私たちを迎えてくれた。そして、当日の夜明け、明けの明星に続いて今日の主役の太陽が、ボイセン州立公園の貯水湖に姿を見せた。若干雲はあるものの、おおむね良好。日食観測成功の確信を得る。

10時20分欠け始めた太陽は、1139分に皆既となり美しいコロナが広がった。そして13時06分には元の太陽に戻った

10時20分、薄雲の中太陽が静かに欠け始めた。食が深まるにつれゆっくりとだが確実に太陽のエネルギーが弱まってゆくのがわかる。それとともにジワジワ気持ちが高揚してゆく。

11時39分ダイヤモンドリングに続き、あたりが薄暗くなり皆既となってコロナが広がる

11時39分いよいよクライマックス。月の深い谷間から太陽の光が光点となって抜けてくる。そして黒い太陽(新月)がダークブルーの空に浮かび上がる。ダイヤモンドリングだ。数秒後には交点は消え去り黒い太陽の周りに神秘的なコロナが広がる。理性は吹き飛びただただ興奮するのみ。太陽の光を失ったダークブルーの空には、金星など星がちらほら。この世のものとは思えない美しさ。2分20秒後再び月の深い谷間から一筋の光が漏れだす。二度目のダイヤモンドリング。それとともにあたりは明るさを取り戻し日常の風景に戻った。

ダイヤモンドリング−コロナ−ダイヤモンドリングの数分間は、非日常の夢の世界。思わず「神様!」と叫びたくなるぐらい神々しい。皆既日食は、自然界からの最も素晴らしい贈り物。

全天カメラによる空の明るさの変化。皆既になると急激に暗くなる。まさに非日常体験

 

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プロフィール

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天文研究家

1953年三重県四日市市に生まれる。学生時代は名古屋市科学館山田卓先生の下で天文普及活動に参加。天体望遠鏡メーカーに勤務の後、1992年にフリーとなり星を見上げる楽しさを広めるべく、あさだ考房を設立。

天文・科学雑誌に記事を連載、単行本・プラネタリウム番組シナリオ執筆のかたわら、天文宇宙関連の講演・講座、プラネタリウム解説を行っている。

最近は、生涯教育を意識した、プラネタリウム運営支援、プラネタリウム解説指導にもかかわっている。日本天文学会会員、NPO法人アイ・プラネッツ理事長。

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