明治村の鉄道5…2つの新橋工場と保存台車 2017/9/22

鉄道局新橋工場の外観

前回「明治村の鉄道4」で紹介した2両の御料車が保存されている建物は、明治村にふさわしい外見をしています。それもそのはず、明治22(1889)年に建てられた鉄道局新橋工場を移築したものなのです。

つい保存されている御料車に注意がいってしまいますが、さすがに明治村だけあって、保存している建物にも本物を使用しているわけです。

外見は木造建築風ですが、屋根は銅板葺となっています。さらに中で見上げると、柱には鋳鉄使用されていることがわかります。これら鋼材は、外板となっている木製品も含めて、すべて国産だということです。

屋根の中心線上に一段高くなっている越屋根がありますが、これは竣工後に明かり採りのために改築されたものということです。ところが、そこに使われている鉄製窓サッシには1889年に鉄道局神戸工場で造られたことを示す文字が刻まれていて、国産とわかります。

当時の日本の大工であれば、尺寸で設計しているはずですが、この建物はそれ以前に輸入材で造られた工場建物にならって、フィート・インチを採用しているそうです。これらいずれも、文明開化と称して西洋文明を取り入れつつ、日本の技術を向上させていた時代ならではのものです。御料車を見学する際には、ぜひ車両を取り囲んでいる建物にも注目してくださいね。

鉄道寮新橋工場の外観

明治村には、もう一つの新橋工場の建物があります。

それが、この鉄道寮新橋工場です。日本の鉄道は明治5(1872)年に新橋〜横浜間で開業したことが知られていますが、その開業時には工場も必要でした。その機関車修復所がこの建物です。

明治政府は鉄道を建設することになった際、民部大蔵省に鉄道掛をおきました。すぐに工部省ができて鉄道掛は同省に属することになりますが、改組により鉄道寮と称すようになって鉄道開業を迎えます。ですから、鉄道開業時の鉄道“寮”新橋工場となっています。

明治10年になると廃寮置局が行われて、鉄道局が誕生しました。先に紹介した新橋工場は明治22年製ですので、鉄道“局”新橋工場となっています。このことから、明治村にある2つの新橋工場は、鉄道開業時の鉄道寮新橋工場と、その後に増築された鉄道局新橋工場と呼ばれているわけです。

さて、鉄道寮新橋工場ですが、鉄道開業に合わせて造ったものだけに、すべてイギリスからの輸入品を使用しました。

建物内部の柱の刻印をみると、イギリス製のものとともに、明治15年製と同34年製の国産鉄柱も使われていることから、増改築や移築の際に国内の新しい技術を用いた製品を用いるなど、この建物からも日本の近代化の跡をたどることもできます。その内部は機械館として、重要文化財2つを含む明治期の機械を多数展示しています。

鉄道寮新橋工場のかたわらに展示されている台車等

鉄道寮新橋工場の側面の壁に沿ったところに、上の写真にある台車等が保存展示されています。目立たないところなので、見過ごしてしまう入村者も多いようですが、鉄道好きであれば、ぜひ足を止めてご覧下さい。

これらは、もちろん鉄道車両に使用されていた由緒正しいものたちです。以前は放置されているような感じもあったのですが、5年前に整備して簡単な説明も付けられました。

写真の一番手前は、明治32(1899)年東京車輌製造天野工場製ハ29の台車で、九州鉄道を経て、大分交通耶馬溪線で使われました。天野工場は後の日本車輌製造東京支店です。また、九州鉄道はいまJR九州となっている鹿児島本線等です。コイルバネと板バネを組合せ、松葉車輪を使用しているなど、特徴のある台車です。

その先にあるのは明治31(1988)年イギリスのリーズ・フォージ社製の台車で、東北本線などを造った日本鉄道大宮工場でいろ61用として組み立てられました。戦後まで国鉄で活躍し、昭和27(1952)年に留萌鉄道に譲渡され、ホハニ201として昭和44年の同鉄道運休まで使われていたものです。

もっとも通路寄りに置かれているのは、明治20年代に造られたとされる九州鉄道ハフ26の車輪と車軸2組です。2軸車だったので、台車ではなく車軸の形で残っています。前述のハ29とともに大分交通耶馬溪線に譲渡されたうえで、明治村にやってきています。これも松葉車輪を使用しています。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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