自然と正しくつきあうために 有毒キノコについて(その3) 2017/9/28

前回2回にわたって毒キノコについて記してきました。今回はその最後として少し変わった毒キノコについて紹介したいと思います。毒キノコの中毒症状は胃腸障害や死亡につながる事例はよく知られていますが、個人的に非常にやっかいな毒キノコ2種についての話です。

まず一つ目はドクササコというキノコです。秋田県で起きた事例です。

「毒キノコで食中毒、秋田市の女性 ドクササコ原因か (秋田魁新報2010年10月21日) 秋田市保健所は21日、同市内の女性(61)が毒キノコを誤って食べ、食中毒になったと発表した。女性はドクササコをナラタケと間違えたとみられ、手足の指先にしびれや痛みの症状があるため同市内の病院に入院している。 同保健所によると、女性は11日に同市太平の山林でキノコを採取し、12日に煮付けにして調理。14日夕に夫と食べた。18日午後4時ごろから手の指先にしびれや痛みなどの症状が現れ、19日に痛みが激しくなったため同市内の病院を受診した。」

このキノコは一般の毒キノコのような消化器症状はありません。しかし、摂取後数日してから、からだの末端が焼けた鉄を押し当てられるような激痛が生じます。問題なのはこの激痛が場合によって数ヶ月続くことです。

この激痛はモルヒネのような鎮痛剤も効力がないとされています。毒成分としてはアクロメリン酸などが知られていますが、この激痛がおこるメカニズムは研究の余地を残しているようです。

二つ目はカエンタケについてです。2013年9月7日の中日新聞の記事です。

「猛毒キノコ カエンタケに注意! 触れるだけでただれ 岐阜県飛騨地域の山間部で、猛毒キノコ「カエンタケ」が見つかっている。キノコ狩りの本格的なシーズンを迎え、自治体などは住民に触れたり、食べないように注意を促している。県森林研究所(美濃市)によると、カエンタケは真っ赤で手のような形をしているのが特徴で、高さは5〜13センチほど。毒成分トリコテセンを含んでおり、食べると頭痛、手足のしびれといった症状が現れ、腎不全、脳障害などを引き起こす。3グラムで致死量に達する。触れるだけでも、炎症で皮膚がただれる危険なキノコだ。(略)この記事以前にもこのような報道がなされています。「猛毒キノコのカエンタケ、東海地方でも急増 (読売新聞 2010.10.3)猛毒のキノコ「カエンタケ」が東海地方でここ数年、急速に増えていることがわかった。触って汁が付くだけで皮膚がただれ、食べた場合は激しい下痢になったり、言語や運動に障害が出たりする。1999年には新潟県で食べた人が死亡する例もあり、自治体が注意を呼びかけている。今のところ被害はないが、先月、「触らないで」との看板を数か所に立てた。キノコの専門家によると、昔は山深い所でしか見られなかったが、この2、3年は愛知県の尾張旭市や春日井市、三重県いなべ市など住宅地に近い里山でも見つかっているという。」

記事では東海地方でも発生する可能性が指摘されましたが、実際に数年前、大学の近くにある岐阜市北部のふれあいの森で発生しました。情報を得て現場に向かったのですがすでに採取・除去された後で現物を見ることはできませんでしたが、数日後注意を喚起する看板が作られました。カエンタケは火炎茸とか火焔茸とかかれるように燃え立つ炎のような形と色を持ったキノコです。その毒性は古くから知られていて有名な岩崎常正(潅園)の本草図譜に「大毒ありといへり」という記述があります。その毒成分はトリコセテン類です。一般に毒キノコというのは食べて毒性を発生する、つまり食中毒にかかわるものですが、このカエンタケは触るだけで重篤な作用を示します。岐阜でも発生事例が増えているのでくれぐれも取り扱いに注意したいものです。

植物にせよキノコにせよ自然とただしくつきあっていくためには、正しい知識が必要なのです。

岐阜薬科大学教授(薬用資源学)
田中稔幸

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