明治村の鉄道6…尾西1号・六郷川鉄橋・名電1号 2018/1/12

明治村には、これまでに紹介してきたほかにも鉄道関係の保存車両や設備があります。今回は、それらを紹介します。

鉄橋上に保存されている尾西鉄道1号機

まずは、尾西鉄道の蒸気機関車1号です。

ご覧のとおり、鉄橋上に保存されています。いまは機関車後部が鉄橋にかかっている程度ですが、かつてはもう少し後方にあり、本当に鉄橋上に位置していました。米国ブルックス社製で、見ての通り日本製とはやや異なる外観です。明治30(1897)年に製造した機関車ですから、今年で新製後121年になります。

明治29年創設の尾西鉄道が発注した機関車で、同社は後の名古屋鉄道尾西線や名古屋本線の国府宮〜名鉄一宮間などを開設した鉄道会社です。明治31年に弥富〜津島間が開業しましたが、これが現存する名古屋鉄道の路線としてはもっとも古い開業区間となります。その区間を走った1号機関車なのです。

機関室窓の下に「No.1」とあるほか、先頭部にも赤い「1」というナンバープレートがあります。この「1」の周りには、BROOKS LOCOMOTIVE WORKSとメーカー名も記されています。煙突の下にも丸いプレートがありますが、こちらがメーカーズプレートで、1897年製でブルックス社としては2779番目の製造車両ということが記されています。

尾西鉄道は大正14(1925)年に名古屋鉄道(初代)と合併して、1号機関車も同社の所有となります。昭和10(1935)年からは国鉄信越線の二本木駅(現・えちごトキめき鉄道)に隣接する日本曹達の専用線入換機として活躍しました。戦後の昭和28(1953)年に名古屋鉄道が買い戻し、犬山市内にあった犬山遊園地、続いて同郊外にできた犬山ラインパークで展示されたうえで、昭和40(1965)年の明治村開村から村内に保存展示されています。

赤い鉄橋は、もと東海道線の六郷川鉄橋

先の尾西1号が保存されている鉄橋は、背後に入鹿(いるか)池がある谷間に架かっています。上の写真では、鉄橋の右側の橋台上に尾西1号が写っています。この鉄橋も、もちろん明治時代の鉄道橋です。

明治5年に開業した新橋〜横浜間の鉄道線には、東京都と神奈川県の間を流れる六郷川(多摩川)を超大橋梁で渡る必要がありました。ところが開業当初の橋はすべて木製でした。ちなみに、その2年後に開業した大阪〜神戸間では、鉄橋が造られています。

木製は当時安く造れたのですが、耐久性に乏しいため、当初単線だったのを複線にした明治10年に、六郷川鉄橋は複線用の鉄橋に架け替えられました。日本初の複線用鉄橋です。長さは約500mもありますが、そのうち水の流れが多い川崎側に約30mの英国製ポニー・ワーレン・トラスを6連使いました。この6連のうち1連が、明治村にあるこの赤い鉄橋なのです。ちなみに新橋側は、上部トラスがないプレート・アンダー・ガーダー橋となっていました。

六郷川鉄橋はその後複々線とすることになり、明治45年にこの鉄橋は役目を終えています。その際、単線用に改造したうえで、御殿場線山北〜谷峨(やが)間にかかる第二酒匂川橋梁に転用されました。その役割を終えたのは、昭和40(1965)年という東京オリンピックの翌年でした。

同年に明治村が開村していますので、同橋梁を譲り受けて保存展示することにしたものです。展示にあたっては複線用に復元するとともに、橋台や橋脚も時代背景にあうものを復元設計したとのことです。

2020年まで借入展示をしている名電1号。

もう1両、明治村に展示されている路面電車を紹介しましょう。

名古屋鉄道の前進となる名古屋電気鉄道が、明治31(1898)年5月6日に名古屋市内の笹島〜県庁前間で開業した際に使われた名電1号形です。ただし、現存するこの車両は、開業3年後の増備車です。

名古屋市内の路面電車は私鉄として開業したのですが、その後、名古屋市民の要請を受けて名古屋市電となり、やがて名古屋市営地下鉄へと発展しています。ですから、名古屋市電の前進ともいえる車両です。

このような初期の車両だけに小形です。そのため大正時代には大形になった後継車に役目を追われてしまいます。ちょうどその頃に札幌電気軌道が開業準備を進めていたため、同車を譲受して大正7(1918)年の開業に使用しました。つまり、名電1号形は札幌市電の元祖でもあるのです。

このことから、札幌市は同市が運営する交通資料館で同車を保存していました。それを、名鉄創業120年と明治村開村50周年の記念事業として借りて、2014年6月から2020年3月まで村内で展示しているのです。

同車については、展示をはじめたすぐの2014年7月9日に当コラムで紹介しています。より詳しくは、下にある同コラムのタイトルをクリックしてご覧下さい。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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