稲作と冷害の悲しい歴史「シャボン玉」の歌詞に隠された意味とは? 2018/5/23

S:愛知生まれ愛知育ちの東海中学3年生。
T:愛知生まれの東海中学地理教師の小田忠市郎。明治大学の学生時代は東京で4年間過ごした。
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東海中学の教室にて

T:今日は意外と知らないお米の話をしよう。袋をいろいろ持って来たよ。きみたちの家庭では、どんなお米を食べているかな?

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あきたこまち・コシヒカリ・ひとめぼれ・はえぬき・つがるロマン・八郎潟干拓地の大潟村・北海道のきらら397。それから新潟県魚沼産コシヒカリなどが机に並ぶ。
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S:うちではコシヒカリとあきたこまちを食べています!

T:それらのお米は銘柄(ブランド)米と呼ばれているね。日本人の生活が豊かになるにつれて、消費者は価格が高くても、味の良い米を望むようになった。新潟県魚沼産コシヒカリはその代表例だ。東北地方は 、日本の穀倉地帯・米どころとして有名だね

S:ぜいたく品なんですね〜。

T:宮城県の「ひとめぼれ」は、ササニシキと並ぶおいしさや優れた耐寒性が評価され、宮城・岩手・福島で奨励品種に指定された。ネーミングは全国から公募「消費者からみて、出会ったとたんに一目ぼれするようなおいしさと外見の美しさを表現している」ことと、マーケティング戦略上から決められたらしいよ。

秋田県の「あきたこまち」はコシヒカリの系統でコシヒカリより早熟。もちもちとした食感があり、もち米のように粘りがあるので、さめてもおいしいと評価かされている。「はえぬき」は、味では魚沼産コシヒカリに全くひけをとらないが、山形県以外に作付けがほとんどないため、味の割りに知名度が低く、安価で取引されている。

S:へえ〜知らなかったなあ。

T:実は近年お米界に波乱があってね。

S:波乱??

T:米の味を格付けする一般財団法人「日本穀物検定協会」は2月28日、2017年産米の「食味ランキング」を発表。最高級ブランドとして知られる新潟県『魚沼産コシヒカリ』が、最高評価の“特A”から下がったんだ。

S:え〜!?コシヒカリが!?

T:2017年産米の食味ランキング「特A」の主なものは、ゆめぴりか・ななつぼし(北海道)、青天の霹靂(青森)、ひとめぼれ、つや姫(宮城・山形など)、あきたこまち、コシヒカリ(福島・茨城・新潟など)、にこまる(高知)、さがびより(佐賀)、森のくまさん(熊本)などがある。お米の世界も風雲急告げ、戦国時代に突入したんだね!

S:「森のくまさん」って面白い名前だな〜

冷害との闘い

T:稲の原産地や稲作の起源は、東南アジア〜中国の長江流域にかけての暖かい地域。寒い東北や北海道で栽培するためには大変な苦労があった。東北地方などに見られる水田地帯は、一番大切な食糧である米をつくる稲作を、長年に渡って一生懸命に作り続けてきた結果なんだ。

S:そうなんだ。寒いから大変そうですね。

T:そう。まさに東北地方の稲作は冷害との戦いの歴史でもあった。江戸時代には、数年に1回の割合で冷害が起きていたんだ。夏に、冷たい北東の風(やませ)が吹き、涼しい夏が続き、作物が祈らず冷害となり、恐ろしい飢饉も起きていたことは歴史の授業で習ったよね。

S:食べ物に溢れた今では考えられないです。

T:当時は食べ物がなくなり、犬・ネコ・ねずみ(さらには生きている人の人肉)まで食べたというよ。道ばたには、飢え死にした人がごろごろしていて、川には上流から死体が流れてきたらしい。

S:そんな...

T:そしてこれが劇団四季の「ユタと不思議な仲間たち」のパンフレット。観たことあるかな?

S:家族で観ました!

T:物語のなかで、東北地方の古い民家に昔から伝わる子どもの妖怪「座敷わらし」が登場したね。あの正体は、凶作や飢饉の中で、生まれてすぐに死んでしまった(生きたくても生きられなかった)子どもなんだ。東北地方各地には、江戸時代(元禄・宝暦・天明・天保)の飢饉で亡くなった人たちの「餓死供養塔」が数多く残されている。

S:悲しいお話なんですね。

T:また、岩手県花巻出身の宮沢賢治は、『グスコーブドリの伝記』で、主人公ブドリは自分を犠牲にして火山を爆発させ、大量の二酸化炭素を放出させる。それによって地球が暖まり、人々を救ったという物語である。他にも、『ざしき童子のはなし』などの作品も残しているよ。読んだことはあるかな?

S:ありません...あ、でも「雨にも負けず」の詩は知ってますよ。

T:そうか!あのなかで「サムサノナツハオロオロアルキ」とあるね。彼は東北に凶作・飢饉が起きた1931(昭和6)年に、生活の糧を求めて上京し、神田の旅館でこの詩を書いたという。

S:ふ〜ん。

T:それに彼は冷害の原因究明のために、太陽の黒点観測も行っているよ。

S:すごいですね。活動が幅広いなあ

T:そして、1932(昭和)7年の東北大凶作が発生。貧窮の極みに達した家では、子捨て、子殺しが頻発し、まだあどけない7,8歳の子どもが家族の飢えを救うために売られていったという。

残された家族たちは、明かりの消えた部屋で、幾夜も泣き続けた。その頃、まだ対面もしないまま闇に葬られた幼い命や、風呂敷包み一つを胸に抱いて峠を越え、どこか遠いところへ連れて行かれた姉や妹、それらへの悲痛な思いを託して唄われていたのがこの「シャボン玉の歌」だそうだ。シャボン玉のはかない命に悲惨な現実を重ね合わせ、精一杯の思いをこめて、「風 風 吹くな」と唄っていたのだろう。(松崎運乃助『学校』より)

  シャボン玉飛んだ 屋根までとんだ 屋根まで飛んで こわれて消えた
  風 風 吹くな シャボン玉飛ばそ 
  シャボン玉消えた 飛ばずに消えた 生まれてすぐに こわれて消えた
  風 風 吹くな シャボン玉 飛ばそ

S:そんな悲しい歴史があったんですね。知らなかった...。

T:今の飽食の時代には考えられないね。

S:最近は温暖化で冷害はもう起こらないのかなあ?

T:そんなことはない。1993年や2003年の夏は寒い夏だった。1993年はお米の大凶作により、大量に米をタイなどから緊急輸入することになった。

S:ということは、これからも冷害は起きるってこと?

T:もちろん!もともと天候は不順で、あてにならない。だから昔から人々は占いに頼ったり(青森県恐山の霊媒師「いたこ」は天候なども占う)、種まきや洪水の時期を知るために、天文学が発達した。要するに、人類の歴史は空腹との戦いの歴史でもある。終戦後、多くの日本人の願いは「お腹一杯ご飯が食べたい!」というものだった。ご飯が食べられるということは、とてもありがたいことなんだよ。

ぼくが行ったケニアでは、子どもたちが本当にうれしそうに、喜んでご飯を食べていた。日本もかつてはそうだった。と、いうことで、食作法(じきさほうー浄土宗の学校でお弁当をいただく前に行う)をしよう。

S:(手を合わせて合掌して)『本当に 生きんが為に 今この食をいただきます。与えられた 天地の恵みに 感謝いたします。いただきます!』

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プロフィール

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東海中学地理教諭

ボーとした小学生で地図を見るのが好きだった。地図は長年の相棒。中学時代はテニス部キャプテン。みかん畑の中の蒲郡東高校。昼食後の授業は「海を見ていた午後」おだやかな三河湾を眺めていた。

FM愛知の深夜放送『コンタクトクラブ』チコさんに「大地主のお坊ちゃん」のペンネームでせっせと投稿。学生時代は“じゃん・だら・りん”の三河郷友会学生寮。最近女子寮が同じ敷地にできてビックリした。

東海生の手荒な洗礼を受け続け早や30年。仕事は好きなので感謝している。勤務校の東海とは不思議な縁を感じています。

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