達人に訊け!
相続の見直し−民法1980年以来の改正 2018/7/17
相続分野の民法が約40年振りに見直され、2020年7月までに順次施行されることになります。見直しポイントは3つなので確認しておきましょう。
1.残された配偶者の生活を安定する「配偶者居住権」を新設
配偶者をなくした場合、残された配偶者が、遺産に含まれている家に住み続けることができる「居住権」が新しく設置されました。これによって、住み慣れた家から出て行かなくてもよくなり、終身もしくは一定期間、自宅に住むことが認められることになります。法定相続分は遺産の二分の一なので、これまでは、もし評価額が高い自宅を相続して、残った遺産分割の預貯金が少なく生活費が足りなくなると、自宅を売却しなければならないことがありました。今回、「居住権」が新設されたことによって、「所有権」とは別に自宅建物に登記できます。「居住権」は売買できず「所有権」よりも評価額が低いため、遺産分割で預貯金など他の遺産の取り分を増やすことで、生活費を確保することができます。なお「居住権」は相続されません。2
また、配偶者が生前贈与や遺言で与えられた家は、遺産分割の取り分計算からは除外されます。婚姻期間が20年以上の夫婦が対象ですが、配偶者の遺産の取り分が増えることになり、これも高齢の配偶者が生活に困らないようにする優遇措置です。
2.介護や看護をした相続人以外の親族に対する措置
例えば夫をなくした妻が、夫の両親の介護や看護をしていた場合、現行では遺言がない限り、妻は義父母の遺産を相続できません。遺産のために介護や看護をしている訳ではありませんが、全く介護をしなかった音信不通の夫のきょうだい等が、相続時に突然現れて、あなたには相続権はないので、と言って遺産を全て持っていくというのはよくある話で、何となく報われない不公平感がありました。今回は、相続人(被相続人の配偶者、子、親、兄弟姉妹)以外で介護や看護をしていた親族も、相続人に一定の金銭を請求できるように改正されました。
3.自筆証書遺言の変更点
自筆証書遺言は、その名の通り本人が自由に書くことができる反面、公証人と作成する公正証書と違い、信頼性に欠けるという問題点がありました。また自分で保管するか弁護士に預けるなどの必要があり、相続人が遺言の存在を知らないということもありました。今回の改正で、自筆証書遺言作成の利便性を高めるために、財産の一覧を示す目録についてはパソコン等で作成したものでもよくなりました。また作成した自筆証書遺言は、手数料はかかりますが、法務局で保管して貰えるようになりますので紛失や改ざんを防ぐことができますね。
以上、高齢化による高齢配偶者の家と生活費に重点をおいた見直しとなりました。相続前によく確認しておきましょう。
記事一覧
消費増税対策の光と影〜足りるかポイント還元予算〜
明暗を分けたポイント還元 消費増税から一ヶ月が過ぎ、大きな反動減がないと言われている中、いくつかの課題が生じています。その一つが、ポイント還元です。 …
2019/11/9
知らないと損する 消費増税の負担を軽減する3つの制度
消費増税や軽減税率、ポイント還元、キャッシュレス・・・・。ここ一ヶ月はこのような内容の記事を多く新聞やネットで見かけました。 さて、とうとう消費税10%…
2019/10/1
2020年に自動車保険料3%値上げ その理由とは?
■5年ぶりに自動車保険が値上げになります 2020年1月から損害保険大手4社(損害保険ジャパン日本興亜、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、東…
2019/8/16
とうとう成立「幼保無償化」「高等教育無償化」
5月10日、幼児の教育や保育を無償化する「改正子ども・子育て支援法」がとうとう参院本会議で成立しました。これは政府の「全世代型社会保障」の柱の一つで、こ…
2019/5/13
出国税と4月からのサーチャージ値下げ
新しい税金・出国税 お正月休みに海外に行かれた人は、出国する時に千円が余分にかかっていますが、航空チケットの代金に最初から加算されているので、気がつ…
2019/3/14
2019年 自動車の買い時はいつ?
2019年度の与党の税制改正大綱が出そろったので、生活に関わることについて確認しておきましょう。2019年10月に消費税が10%に引き上げられるにあたって、景気が…
2019/1/9
2018年 配偶者控除等の「年末調整」と医療費控除等の「確定申告」
会社員や公務員の人は、そろそろ年末調整の書類が手元に届いているころでしょうか。また保険に加入している人は、保険会社から「保険料控除証明書」がすでに送…
2018/11/19
プロフィール
あなたの家計簿診断します。「達人に質問する」からご応募ください。
岐阜大学教育学部教授・博士
京都市生まれ。ノートルダム女子大学(京都)文学部卒業。大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程修了。
現在、岐阜大学教育学部教授・博士(学術)、放送大学客員教授。
家庭経済学、家庭経営学、家族関係学、アーミッシュ研究等の講義を担当。
放送大学ではラジオで「生活経済学」の講義を担当(2012〜2016年)。
主な著書 『ちほ先生の家計簿診察室』(名古屋リビング新聞社2002年)、名古屋リビング新聞社、大阪リビング新聞社で家計簿相談を20年ほど担当。
『お金と暮らしの生活術』(昭和堂2012年)、『仕事・所得と資産選択』(放送大学教育振興会2008年)、『アーミッシュの謎』(共訳、論創社1996年)、『アーミッシュの学校』(共訳、論創社2004年)、『アーミッシュの昨日・今日・明日』(共訳、論創社2009年)、『生活経済学』(放送大学教育振興会2012年)など。
趣味:毎日家計簿をつけること。ただし買い物好きなので家計チェックは自分にはあまり生かせていないかも・・・・・
月別アーカイブ
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年4月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月