新刊「モカに始まり」と「珈琲屋」 2018/8/24

新刊「モカに始まり」産地版と焙煎抽出版(手の間文庫)

いつもありがとうございます。今回は、最近新しく出版された珈琲本をご紹介します。

まずは、昨年末にクラウドファンディングで手の間文庫から刊行された「モカに始まり〜産地版」と今年の5月に刊行された第二弾「モカに始まり〜焙煎、抽出版」です。2016年12月にお亡くなりになられた、福岡博多・珈琲美美の森光宗男さんが2012年に出版した名著「モカに始まり・・・」のリメイク版です。

その本が絶版となり、多くの方から再版して欲しいとの要望がありましたが、森光さんが亡くなったり、資金の問題などでなかなかかないませんでしたが、「クラウドファンディング」によって再版されました。

今回はテーマごとに産地版と焙煎・抽出版の2冊に分け、「手の間文庫」の田中智子さんやスタッフの方々が、残されていた資料や2013年以降に行った産地めぐりの旅なども書き足し、親交のあった珈琲屋さんにも森光さんとの旅の思い出などを寄稿していただき、前著にも増した素晴らしい本に完成しました。

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【解説】クラウドファンディング(英語: Crowdfunding)とは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。ソーシャルファンディングとも呼ばれる。・・・ウィキペデイアより
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2012年に発刊された初代「モカに始まり」絶版
2017年12月に発刊された「モカに始まり・山地版」

昨年12月に出版された第一弾の「モカに始まり・産地版」は、森光氏自身がイエメンやエチオピアなど、モカコーヒーの原点といわれる産地を自らの足と眼で何年にもわたってリサーチしてきた記録や写真で構成されています。

世界でもコーヒーのルーツ、モカコーヒーをこれほどくまなく正確に歴史的観点に立って紹介している本はまずないと思いますので、珈琲の原点を知る貴重な資料本としては世界でも唯一の本といっても良いでしょう!

特に、イエメンは今、内戦の真っただ中ですので行くことが出来ませんので、この本は永久保存版として是非お持ちいただきたい一冊です。

2018年5月に発刊された「モカに始まり・焙煎抽出版」

第2弾の「モカに始まり・焙煎、抽出版」は今年の5月に出版されました。こちらの本は、森光さんが40年に渡りコーヒー創りに邁進し修得した独自の焙煎論とネル布のドリップ抽出論を普遍的な論理の上に立って書いています。コーヒーの技術本というよりは、技術に向かう哲学本といったところでしょうか・・・。森光さんの人となりが綴られている本です。

自家焙煎珈琲屋はとかく技術だけに目が行きがちですが、技術は100人の焙煎士がいれば100の技術、100の方法論があります。技術に至るまでのコーヒーへの思い、カップの味(モノ)がどうのではなく、カップの珈琲になるまでの過程(コト)が大切だと。私達珈琲焙煎屋は、コーヒーという「モノ」を作っていますが、大切な事は「そのモノ」になるまでの「コト」なのだと。ものになるまでの思いや過程など目に見えない部分がいかに大切なのかが書かれています。コーヒーを通じた人生論というところでしょうか。味は人と申します。珈琲を創っている人の人間性が出るのです。自分自身が一杯の珈琲に現れるのです。そんな森光さんの生き様が書かれている一冊です。

イエメン・モカ港

私は、僭越ながら今回の第2弾「モカに始まり・焙煎・抽出版」の最後に、「あとがきにかえて・・」を思い出とともに書かせていただきました。

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あとがきにかえて・・・

私のもとにはいつも、森光さんから贈られた言葉があります。

「眞實を求めて、土と風と手、クリカエシ クリカエス、モカに還る」

1996年、初めて珈琲美美を訪れ珠玉の珈琲を頂きながらお話をしていたら、「来年の正月から2週間イエメンに珈琲の旅にいきますよ!」との話が出ました。以前からコーヒー産地に行くことが夢だった私は即座に、「私もご一緒できませんか?」と口走っていました。すると、「現地で珈琲豆一粒食べるだけでも勉強になりますよ。一緒に行きましょう!」いとも簡単にこんな言葉が返ってきたのです。

 確かに初対面で「連れていって」とお願いする方もどうかと思うのですが、初めて会ったどこの馬の骨ともわからない人物に「OK」を出した森光さんの器の大きさに今さらながら驚いています。私の人生を根底から変えた珈琲の旅はそこから始まったのです。その後、森光さんとご一緒した8回にわたる産地廻りで学んだ日々が、まるで昨日のことのように思い出されます。

 私が心の師と仰ぐ森光さんを一言でいうならば、「珈琲の真実」という一点に眼を向けていた方だと思います。珈琲を大局的にとらえ、原種といわれる珈琲豆の原点に目を向け、自分の足と眼で徹底的に調べ上げ、一つ一つのパズルを紐解き繋ぎ合わせていったのです。

 遠いはるか昔から遠くはるかな未来までに目を向け、時を超えた心眼と珈琲に対する愛情を持って、珈琲の始まりから先々の未来までを見据えていた唯一無二の方でした。その足跡には嘘も偽りも打算もなく、常に生産地側に立って考えて温かな目を向けていました。ゆえに、イエメン、エチオピアの珈琲商社や産地の方々から絶大な信頼を受けていたのです。

 また、森光さんはすべてに「観る」ことを基本においていたように思います。知識だけではなく、まず「観る」。観ることからしか見えてこないものがたくさんあると。すべての旅は「観るコト」だったのです。

 もちろん、そこには事前調査から来る森光さんの膨大な資料、綿密な計画があって、旅をともにした人は何度も訪れる奇跡的な出来事をさも偶然起こったように、「神がかり」と感じていたようですが、実は用意周到な学習による必然であったのではと私は思っています。神がかりというのなら、まったく別次元の心眼(真眼)を持っていましたので、私たちには観えないことまで観えていたように思います。まるで珈琲の神に導かれていたかのように。

 森光さんが歩んだ奇跡を本当の意味で理解するには時間がかかると思います。何年何十年も先になって、「森光さんはこのことを言っていたのだ!」と気が付くのでしょう。残された私たちにできることは、森光さんの足跡を理解し、自分流の珈琲に発展させ未来に繋げていくことだけです。

 私たちはまさしく、森光さんから今バトンを受け取ったのです。その道標となる2冊の「モカに始まり」は、珈琲を目指す人たちに光(ムニール)を照らしてくれるでしょう!刊行していただいた「手の間」の田中智子さんはじめスタッフの方々、森光充子さん、故森光宗男さんに心より、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

──珈琲はモカに始まりモカに還るのでしょう──
待夢珈琲店 今井利夫
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コーヒーを携わる人ならば是非お読みいただきたい一冊です。

新刊「珈琲屋」新潮社

さて、最後に新潮社からようやく出版された本、「珈琲屋」です。南青山で開店していた大坊珈琲店(2013年12月閉店)の大坊勝次さんと、今は亡き博多珈琲美美の森光宗男(2016年12月逝去)さんとの3回に渡る貴重な対談本です。5年以上前からの企画で、3年前には出版できる体制にあったのですが、事情によりのびのびとなっていました。その間に、森光さんがお亡くなりになり発売が危ぶまれましたが、編集された小坂章子さんの尽力によって何とか出版にこぎつけました。

この本は、内容がすべてにおいて大きく偉大すぎて、とてもこのブログで語れるものではありません。お二人の40年もの珈琲屋としての珈琲人生が凝縮されている1冊です。珈琲屋として、珈琲豆、焙煎、抽出、カップ、椅子、カウンター、飾る絵画、流す音楽などなど、一杯の珈琲をお飲み頂くのに一縷の妥協もなく最善のおもてなしをしているのです。

訪れた人々はその空間に身を置き、そのカップコーヒー(人間性)に触れた時、心から温かなくつろぎと感動を覚え癒されるのです。この本からは、珈琲屋になるにはこんなに大変だと読み取れますが、同時に、こんなにも素晴らしい仕事なのだと気付かされます。これから、珈琲店を目指す人には人生をかけるに値する仕事だと教えていますし、すでに珈琲屋を営んでいる方には自分自身を見つめ直す貴重な一冊となるでしょう。

「珈琲の真実」

この普遍の言葉を追求してきたお二人が求めたコーヒーとは、それは珈琲だけではなく、自分に正直に生きる!という自身の生き方そのものの真実だったのでしょう。

この本の終わりに森光氏が、「私は珈琲で嘘をついてこなかった」と綴っていますが、それは、珈琲に対峙して、自分自身に嘘をつかなかったという事だと感じました。皆さんはそんなことは当たり前だと思われるでしょうが、生業として生計をたてなければならない中で真実だけを求めることはなかなかできる事ではありません。私も41年以上珈琲店を営んでいて理想として常々そう思ってはいますが、実際には簡単な事ではありません。

近年、珈琲の本は年間何十冊も新刊が刊行されていますが、ほとんどが技術だけに焦点をあてた本です。それはそれで悪いことではありませんが、技術は常にめまぐるしく変化していきますので一過性の物といわざるをえません。

この3冊は「珈琲の真実を求めて」という普遍的で永遠のテーマに向かっている貴重な本だと思います。是非お読みいただきたいと願います!

これらの本は当店でもお買い求めできますので、ご用命くださいませ

ネルドリップでコーヒーを淹れる大坊勝次氏

≪「モカに始まり」、「珈琲屋」出版記念講演≫(大坊勝次氏のコーヒー一杯付き)
・・を開催します。

≪場所≫ 待夢珈琲店  ≪日にち、時間≫10月1日(珈琲の日)18:30頃〜
≪ゲスト≫
大坊勝次、小坂章子、森光充子(珈琲美美)、藤原隆夫(珈琲折鶴)、
その他・珈琲屋数人予定
≪参加資格≫
「モカに始まり・産地版」、「モカに始まり・焙煎抽出版」、「珈琲屋」
を所有し読まれた方。
≪定員≫
40名

※尚、待夢珈琲店珈琲教室の生徒で満員となっていますが、ご興味のある方はご一報ください。

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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