副作用のない“夢の薬”を目指して 〜薬物送達システム(DDS)って何?〜(2) 2018/9/20

 前回はDDSが目指す効率的な薬物療法についてその概要を説明しました。今回は、DDSの要素技術について先ず紹介します。

 DDSの要素技術としては、(1)薬物放出制御、(2)標的指向性(ターゲッティング)、(3)吸収制御の3つがあります。(図3)
(1) 薬物放出制御とは、錠剤などから薬物をある速度で放出したり、ある環境下におかれると薬物を放出するように制御するものです。例えば、前回お話ししましたが、血中濃度が治療域にある場合に治療効果があるので、長時間にわたって治療域の濃度範囲になるようにする技術が該当します。

(2)標的指向性(ターゲッティング)とは、疾患部位や標的部位に薬物を到達させる技術です。大きく分けて、受動的ターゲッティングと能動的ターゲッティングの2つがあり、前者は薬物を運ぶキャリアーの物性によって制御するもので、後者は標的部位に親和性の高い仕組みをキャリアーに結合させて標的部位に到達する方法です。

(3)吸収制御とは、貼り薬のように皮膚や粘膜から薬物を吸収するときに、吸収速度を制御する技術となります。

 錠剤などの経口投与の場合では、薬物放出制御技術が良く用いられています。様々な薬物放出制御技術がありますが、ここでは2つ紹介します。(図4)

 図4 の1)は、速やかに薬物を放出する粒子とゆっくり薬物を放出する粒子から出来ている錠剤です。消化管で錠剤が崩壊後、赤の粒子から薬物が速やかに放出されて血中薬物濃度が治療域まで達した後、青の粒子から緩やかに薬物が放出されることで血中薬物濃度を治療域に留めることができるお薬となります。

 一方、図4の2)は、高分子マトリックスという物の中に薬物が分散している錠剤です。高分子マトリックスは水には溶けませんが、水が浸み込むことができる材料で、水がゆっくりと浸み込んでゆき、中の薬物を溶かして、薬物を少しずつ放出します。

 このような錠剤は、身近な例であれば、1日1回服用のお薬が当てはまります。1日3回よりも1回の方が、簡便であり利便性も高くなります。経口投与ですと1日1回が限度かと思いますが、注射剤であれば1回の投与で1週間持続するようなお薬も開発されています。

 次回は標的指向性を利用したDDSについて紹介します。

近藤伸一 (岐阜薬科大学 薬物送達学大講座 薬品物理化学研究室 教授)

平成3年 岐阜薬科大学大学院博士後期課程修了。同年 岐阜薬科大学 薬品物理化学教室助手。その後、講師、助教授を経て、平成19年より現職の岐阜薬科大学 薬物送達学大講座 薬品物理化学研究室教授。主な研究テーマとして、pHなどの外部刺激により物性が変化する機能性高分子の合成とその特性を活かした医薬品開発への応用研究、並びにプラズマ表面処理を利用した高分子材料表面の機能化とその表面への細胞膜の成分であるリン脂質自己組織化膜の構築などの新しい医療用材料等の開発を行っている。

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本学は、美しい金華山と長良川などの自然に恵まれ、また歴史と文化の薫漂う岐阜市の北部に位置し、80有余年に及ぶ歴史の中で、建学の精神である「強く、正しく、明朗に」をモットーに、「人と環境に優しいグリーン・ファーマシー」を基本理念とした薬学教育を通じ、安心で安全な医療に貢献できる薬剤師や、人と環境にやさしい方法で薬を創ることのできる研究者や技術者を養成しています。

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