鉄道“超”基礎知識(11) 曲線標 2018/12/6

白丸内にある曲線標は小さく目立たないが、カーブには必ずある。

前回、速度制限標識について記しました。

この速度制限の多くは、カーブによるものです。カーブが急であればあるほど速度を落とさなければ曲がりきれないのは当然のことですよね。

そこで、鉄道線路のカーブ区間には必ず曲線標という、そのカーブがどういった内容のものかを記した標が建っています。上の写真で、右下の白い○の中に写っている小さな標識です。

前回紹介した速度制限標識には、カーブの半径(曲率半径)が最下部に記されていました。しかし、カーブの内容は曲率半径だけではありません。カーブを曲がるときに、カーブ外側のレールが内側より高くなっていることに気づいている方は多いと思います。カーブ外側を高くすることで車両を内側に傾けて、遠心力で車体も乗客もカーブ外側に引っ張られる力を消そうとしているのです。自転車でカーブを曲がるときに自転車自体を曲がろうと思う方向に傾けますが、それと同じ原理です。

カープの外側を高くすればするほど高速での通過が容易になりますが、あまりに高くし過ぎるとカーブ途中で停車したときに車体が傾きによって転覆しかねません。それほど極端でなくても、乗客は傾いた車内で不快な思いをします。

このように、2本のレールの内側と外側の高さはカーブによって適切な値にしてあるのですが、その高さの違いをカントと呼びます。

曲線標は三角柱で、3面それぞれに別個の数字が記されている。

上の写真は、JR東海武豊線の亀崎駅ホームから撮った曲線標です。近づけないので拡大してあります。

曲線標が三角柱になっていることが分かっていただけると思います。左右同じ曲線標ですが、両端は同じ内容ですので、各内側がそれぞれの見えない側ということになります。

左側に写っている「300」は、このカーブが半径300メートルということを表しています。カーブのもっとも重要な数字ですので、大きく書くことになっているのでしょう。両端の同じ内容は「C=20 S=10」と記されていますね。

Cはカントを表し、前述したとおり外側のレールが内側のレールより20mm…つまり2cm上がっていることを表しています。

Sはスラックといいます。いまの鉄道車両の多くはボギー台車という2軸4輪を一組にした台車を車両前後に一つずつつけています。これを、レールの間隔(軌間)をそのままにしてカーブに進めると、詰まって動けなくなります。少しレール間隔を広げることでスムーズに通過できるようになります。この基準より広くすることがスラックです。

ここでは、1067mmの軌間をカーブ区間では10mm広げて1077mmにしてあると表示しているわけです。

もう一面のTCLは緩和曲線長、CCLはカーブの全長です。直線からカーブ区間になるときに、一気に半径300mのカーブになるわけではなく、徐々にカーブを強くして半径300mにしています。カーブから直線に戻るときも同様です。この徐々にカーブを変化させるところを緩和曲線といいます。

ここでは、緩和曲線が10メートル、カーブ全体では30メートルということを表しているわけです。

矢印の先にある白丸内に曲線標が建っている

これらカーブの様子を、運転士は熟知している必要がありません。運転士は、そのカーブに設定された制限速度標の速度以下で走れば安全です。ですから、前回紹介した制限速度標は運転士に向けて大きく表示しています。

その制限速度で安全に通過するには、緩和曲線も含めて適切な値を保っていく必要があります。こちらは保線掛の担当ですので、存在感にやや欠ける小柄な標識になっているわけです。

ちなみに、先に写真で大きく紹介した曲線標は、ホームも含めて写すと、上の写真のようにとても小さいものです。白い矢印の先にある白丸の中にあります。カーブ全体が30メートルと短かったのは、ホーム途中からホーム端にかけてのカーブだからなのでした。

こんな小さな標識も、機会があれば見てあげてくださいね。

◇今回のまとめ◇
・曲線標は曲線の内容を記した三角柱
・曲線中にはカントとスラックがあり、曲線前後には緩和曲線がある。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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