短命だった桃花台新交通(ピーチライナー) 廃線跡探訪(3) 2019/4/4

「16年間ありがとう」の記念ヘッドマークを掲げて走る、運行最終日のピーチライナー

新交通システムの廃線跡…なんだか変ですよね。

でも、小牧市にはそんな廃線跡があります。桃花台新交通システムが運営していたピーチライナーです。

1991(平成3)年3月25日に開業し、2006(平成18)年9月30日をもって廃止された新交通システムです。名鉄小牧線小牧駅から桃花台東までの7.4キロの路線で、筆頭株主は46%を出資した愛知県、続いて小牧市と名鉄が各10%を出資する第三セクター鉄道でした。

日本の人口が増加の一途を辿っていた戦後、愛知県には高蔵寺ニュータウンができて人気となり、続いて計画されたのが桃花台ニュータウンでした。その住民の足としてできた桃花台新交通ですが、接続する名鉄小牧線は、当時まだ上飯田止まりの盲腸線でした。

いまのように平安通まで開通し、名古屋市営地下鉄に乗り継げるようになったのは2003(平成15)年3月27日のことで、あまりに遅すぎました。高蔵寺への路線構想もあったものの中央線の混雑が激しく、国鉄が高蔵寺接続に難色を示したという話もあります。また、JRとなり輸送力が増強された頃になると、桃花台新交通は赤字続きで延伸どころではありませんでした。

中央のガイドレールが撤去されている以外、ほとんど廃止時の状態のままの桃花台新交通廃線跡。見えているのは小牧原駅跡。

名古屋へ通勤するには交通の便が良くないため、桃花台ニュータウンの入居者数は目標にはるかに届かず、その影響で桃花台新交通も利用者が増えません。1964(昭和39)年に廃止された名鉄岩倉線(岩倉〜小牧間)が残っていれば名鉄犬山線経由で名古屋へ行けたので、また違った展開になっていたのではと思われます。

廃止後はバスが代替輸送を担うのですが、輸送人員が多くなかったのが幸いでした。通勤通学輸送の需要が多い場合、バスでは相当の便数が必要になるためです。

桃花台東にあるループ線。4両編成の車両に乗降扉がないことが見て取れる。

上の写真は、桃花台東駅の高蔵寺側にあったループ線を写したものです。

駅に到着した列車は乗客を降ろしたあと、このループを一周して小牧方面のホームに入線します。同様に、小牧駅側にもループ線がありました。このため進行方向は常に一定で、運転席は編成の一方にあれば良く、運転士さんは運転席を離れることなく運転を続けられたのでした。

また、全駅を島式ホームに統一したため、ホームは必ず進行方向右手にあります。そのため進行方向左側には乗降扉がないという、珍しい構造をした車両でもありました。上の写真に写っているのが、乗降扉のない側です。

乗降扉が片方にしかない車両は、ヨーロッパ等の路面電車では見られるものの、国内では極めて珍しい仕様でした。

廃止後年月が経っても、ループ線の様子は変わっていない

この写真は、今年撮影したものです。

先の写真と比べても、太陽の位置が違うために日影が違う程度で、ループ線そのものは大きく変わっていないことがわかると思います。

廃止に際して代替バスの手配はできたものの、構造物については一筋縄でいきませんでした。廃止前年となる2005年に愛知万博(愛・地球博)が開催され、同会場で無人運転技術が披露されたトヨタ自動車のIMTSが廃線跡を活用する案がありました。しかし、軌道改修が簡単でないことなどから実現しませんでした。

しっかりした構造の廃線跡は解体するのにも莫大な費用がかかることから、愛知県も小牧市も対応に消極的です。そこで、廃線敷きを活用した大規模ソーラー発電の話も新聞記事になりましたが、これも実現にはいたらなかったようです。

結果、廃線跡は今日までほぼ廃止時の様子をそのまま伝える形になりました。ちなみに、桃花台新交通の営業期間は15年6ヶ月でしたが、廃止されて今日まですでに12年6ヶ月が経っています。

シャッターが閉まったまま時が経った桃花台西駅の現状

この写真は、桃花台西駅の現状です。

駅の入口にシャッターが下りてますが、その上に掲げられている駅名は現役当時のままです。建物外壁に汚れはあるものの、10年以上放置されていたにしてはきれいです。また、駅前広場もきれいに整備されています。

全7駅がいずれもこのようにほぼ手つかずとなっていて、時が経つのを忘れているかのようです。

高架橋が切断された中央自動車道ふきんの廃線跡

ところが、その廃線跡に変化が現れました。

路線最東端となる桃花台センター〜桃花台東間では中央自動車道(中央高速)をオーバークロスしているのですが、ついにこの高速道路を越える部分が撤去されました。

上の写真は、その撤去された部分と既存部分の境目で、高架橋の断面が見えています。これまでこのような状況は見られませんでしたので、その意味では貴重な光景といえましょう。

営業開始からだと28年を超えた建造物ですが、鉄筋コンクリートの標準的な寿命からみるとまだまだ大丈夫です。とはいえ、放置による劣化はあることでしょうし、劣化の確認には定期的な検査が必要となりますから、やはり費用がかかります。

このようなことから、今後、徐々に解体撤去が進むことが予想されます。廃線跡を全線にわたって探訪できるのは今のうちと考えて良いでしょう。

ちなみに、桃花台東の近くにあった車両基地はすでに更地となっています。廃止後の代替バスは「ピーチバス」の名称であおい交通が運行しています。ほぼ廃線跡に沿った道を、日中でも30分ごとに走っていますのでアクセスは容易です。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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