花粉症のくすり、飲むと眠くなりますか? 2019/4/30

病院や薬局の薬剤師から薬をもらうとき、副作用で眠くなることがあると説明をうけたことがある方は多いと思います。とくに風邪や花粉症の薬などをもらうときにそのような説明をされたことがありませんか?また、今の季節は花粉症にお困りの方も多いと思います。風邪や花粉症の薬には、抗ヒスタミン薬という成分が含まれており、この成分で眠くなることがあるのです。しかし、中には花粉症の薬を飲んでいるけど眠くならない方や、昔は眠くなったけど最近は眠くならないという方がいるかもしれません。実は、最近の抗ヒスタミン薬は眠くならないものが多いのです。

花粉に対して、生体の免疫機構が過剰に反応してしまう症状を花粉症といいます。花粉が鼻の粘膜などにくっつくと、花粉を異物として認識した免疫機構によってマスト細胞からヒスタミンという物質が分泌され、鼻粘膜を刺激して、くしゃみや鼻水などの症状がでます。このヒスタミンは知覚神経にあるH1受容体にくっつくと、くしゃみを引き起こします。また、ヒスタミンによって血管拡張や血管透過性亢進を引き起こし鼻水が出たり、気管支収縮などを引き起こすと呼吸が苦しくなったりします。抗ヒスタミン薬がこのH1受容体にくっつくと、ヒスタミンがH1受容体にくっつくことができなくなり、くしゃみや鼻水が止まるのです。

このH1受容体は脳内にも存在しており、睡眠・覚醒リズムや注意力・集中力などを制御していると言われています。脳内のH1受容体に抗ヒスタミン薬がくっついてヒスタミンの働きを遮断すると眠気が現れます。薬局で市販されている睡眠導入剤には、この抗ヒスタミン薬による眠気を利用したものもあります。

さて、通常、脳の神経細胞は血液脳関門というバリアーによって、外界の異物から守られています。多くの薬の成分も生体にとっては異物と認識されます。血液中に異物が存在しても、このバリアーによって、異物は脳の神経細胞に到達しにくくなっています。血液脳関門の実態は、脳内の毛細血管の内皮細胞が密着結合することで形成されています。分子量が小さくて親油性(油に溶けやすい性質)の物質は、この血液脳関門を通過しやすいですし、ブドウ糖やアミノ酸やなどの栄養物質も血液脳関門を透過する機構が存在します。古くからある第1世代の抗ヒスタミン薬は、この血液脳関門を透過して、脳実質内のH1受容体を遮断することで眠気の副作用が出やすくなっていますが、最近の第2世代の抗ヒスタミン薬は、血液脳関門を透過しにくいため、眠気などの副作用が出にくくなっています。

薬局で購入する一般薬でも、抗ヒスタミン薬には第1世代のものと眠気の出にくい第2世代のものがあります。車を運転したり危険な作業をしたりする方は、花粉症や風邪の薬を購入する際に、薬剤師から眠気などの副作用についてしっかり説明を受けることが重要です。

林秀樹  岐阜薬科大学 実践薬学大講座 実践社会薬学研究室 准教授

平成8年 名城大学薬学部卒業、平成10年 静岡県立大学大学院薬学研究科修士課程修了、平成20年博士(薬学)取得。平成10年より岐阜大学医学部附属病院薬剤師、平成17年より静岡県立大学薬学部講師、平成26年より現職。

臨床薬物動態学および薬理遺伝学研究に従事。医薬品の効果や副作用の個人差の原因を解明する臨床研究を行っている。

平成23年東日本大震災、平成28年熊本地震において薬剤師として被災地支援に従事。平成27年バヌアツ共和国サイクロン被害に対する国際緊急援助隊医療チームに薬剤師として参加。

日本医療薬学会指導薬剤師、日本臨床薬理学会指導薬剤師、日本災害医学会災害医療認定薬剤師、日本臨床薬理学会評議員、日本医薬品安全性学会評議員、日本災害医学会評議員、日本災害医療薬剤師学会理事、静岡県立大学薬学部客員准教授、岐阜大学医学部非常勤講師、朝日大学保健医療学部非常勤講師。

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