水道水の話@ 〜水道の水はどうやってできるの?〜 2019/5/11

水は私たちの体の約60〜70 %を占めていて、私たちが生きていく上でなくてはならないものです。生命維持に必要な水の摂取量は、成人で1日約2 Lと言われています。この私たちにとって必要不可欠な水を、ほとんどの人は水道の蛇口から得ていると思います。

今日の我が国では、水道の蛇口から当たり前のように水が出てきて、しかもほとんどの人が特に安全性を疑うことなく毎日飲用として使っています。これはとても素晴らしいことです。実際に海外では、水道水の水が飲用としては使えないところが沢山あります。

今回は、皆さんが毎日使っている水道水がどのようにして飲めるように浄化されているかをお話しします。


水道水の水は、水源から取水した水(原水)を基にしています。原水には河川水、湖沼や貯水池の水、浅い地下を流れる伏流水、地下水などが使われます。取水された原水は、一般的には沈殿・ろ過工程と消毒を組み合わせて行われます。沈殿・ろ過の方式には、緩速ろ過と急速ろ過の2種類があり、どちらの方式も砂の層を通して汚染物質を取り除く「砂ろ過」を採用しています。

我が国で最も多い浄化方式は、急速ろ過です。この方式は、最初に薬品(凝集剤)を加えることで、水中の小さい濁りや細菌類などを「ゴミの凝集塊」として凝集させ、沈殿させます。その後上澄みを回収し、沈殿では除けなかった「ゴミの凝集塊」を、一日に120〜150mという速度でろ過池の砂層に通して浄化します。

この方法は、比較的濁りが多い水も処理できる上に、狭い敷地でも多量の水を浄化することができることから、人口が多く用地が限られている多くの都市部で採用されています。現在、日本の年間浄水量の約8割がこの方式で浄化されています。

しかし、汚染物質の中には水に溶け込んでいて、この方式では取り除けないものもあります。またそのような汚染物質にはガンなどの健康被害を引き起こす可能性のあるものや、異臭などを放つものもあります。現在我が国では、このような物質の混入に対する基準値を設けると共に、汚染がある場合にはオゾン処理で分解したり、活性炭などを用いて吸着除去するなどの高度処理を行って水質を維持しています。年間浄水量の約半分は高度処理が行われており、安全でおいしい水の供給に貢献しています。

これに対し緩速ろ過は、一日に4〜5mという緩やかな速度でろ過池の砂層に水を通して浄化する方法です。急速ろ過との違いは、薬品を使用しない点にあります。その代わりにろ過池の砂層表層部には微生物が繁殖しており、これが水中に含まれている汚染物質を分解することで浄化を行います。したがってこの方式では、微生物が汚染物質を十分に分解できるようにゆっくりと時間をかけてろ過する必要があります。

比較的水質が良好で、水質の変化が少ない水の処理に適しており、薬品を使わないので良質の水を得ることができる利点があります。しかし浄化には時間が掛かるため、十分量の水を浄化するためには広い敷地面積が必要であるという欠点も有しています。したがって現在、日本ではこの方式を採用しているところは少なく、年間浄水量の3 %程度の水しかこの方式で浄化されていません。

その一方で、水質の良好な伏流水や地下水が原水として得られるところでは、沈殿・ろ過操作を行わずに消毒のみですませているところもあります。このような水も薬品を使わないので良質でおいしい水となります。我が国は昭和の高度成長期にさまざまな水環境汚染による公害を経験していますが、それから半世紀近く経った現在において、驚くことに年間浄水量の約17 %はこのように消毒のみで十分に飲用できる水として給水されています。私どもの大学のある岐阜市でも、長良川の水を水源とする伏流水を原水として、消毒のみで私たちのもとに給水されています。

今回は、私たちが使っている水道水がどのように浄化されているかをお話ししました。水道水はみんなが毎日使うものであり、また1人1日あたりの平均給水量が約300Lである現状を鑑みると、浄水コストはできる限り抑制する必要があります。それ故に、水の浄化は単に消毒するだけ、もしくは砂層でろ過するだけという、非常にシンプルな方法で行われています。

我が国において今後もコストを抑えつつ、質の高い水道水を維持するためには、原水の汚染を最小限に留める、すなわち河川や湖沼などの水環境を良好な状態に保つことが極めて重要です。この素晴らしい日本の水道水の水質を維持するために、私たちみんなが水環境を守る意識を持つことが必要不可欠だと思います。




中西 剛  岐阜薬科大学 生命薬学大講座 衛生学研究室 教授

平成5年 大阪大学薬学部薬学科卒業。平成7年大阪大学大学院薬学研究科 博士前期課程修了。平成10年同研究科 大阪大学大学院薬学研究科博士後期課程修了 博士(薬学) 号取得。同年4月に 大阪大学大学院薬学研究科 毒性学分野 助手として着任、内分泌かく乱化学物質に関する研究に従事。

平成20年 岐阜薬科大学 衛生学研究室 准教授、平成30年より現職。平成30年 日本薬学会学術振興賞 受賞、日本毒性学会日化協LRI賞 受賞。平成28年より岐阜県環境影響評価審査会 委員を兼任。

現在は、内分泌かく乱化学物質に関する研究に加え、化学物質によって誘発される生殖発生毒性、免疫毒性、脂質代謝異常、神経毒性などに関する分子メカニズムの解明や毒性試験法の開発などを行っている。

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