気功治療への道案内/四日目 2019/6/24

東海地方も梅雨に入り、湿度も高く、少し動くとジワッと汗ばむ陽気になってきたが、茉奈と佳与の二人の娘は元気よく愚庵にやって来た。

◆六部に配当されている経絡の名称

「今回は、脉を診る時の左右の寸関尺の六部に相当する経絡の名前を覚えましょうか。」

佳与が京都に遊びに行ったと、八つ橋を持ってきてくれたので、竜安寺や北野天満宮などに行ったという旅の話を聞きながら、私はお茶を飲み、湯呑みを置きながら今回の勉強の話に入った。

「段々難しくなり、本当に治療師になっていく感じがします。」
と、いつになく佳与が神妙な顔になった。

「左右の寸関尺の六部で脈を診ることについては、前回学びましたが、その部に配当されている経絡の名前ですが、私たちがこれまで診てきた脈は陽の経絡なんですね。実は、実際の治療の場面では、前に茉奈さんが言っていましたが、ぐっと押さえたところの陰の部の経絡が主になるんですよね。」

「軽く脈に触れる処が陽の経絡の脉で、深く押し付けて診る処の脈が陰の経絡の脉でしたよね?」茉奈が言うと、

「陽で六部、陰で六部の計十二の経絡を診ることになるんですね!」と、佳与が納得したような顔になった。

「治療上主になる陰の脉処ですが、患者さんの右手、術者の左手の寸関尺の順に、肺、脾、心包、患者さんの左手の寸から順に、心、肝、腎となっているんです。それに対しての陽の脉ですから、患者さんの右手は、大腸、胃、三焦げ、左手は、小腸、胆、膀胱となるんですね。」私が言うと、

「先生、私、経絡の名前も陰陽の関係も初めてで、何も知らないんです。」と、佳与が手を挙げた。

私は、小さなホワイトボードに、次のように書いた。

--------------------------------------------------------
【右手】
寸→肺/大腸
関→脾/胃
尺→心包/三焦

【左手】
寸→心/小腸
関→肝/胆
尺→腎/膀胱
--------------------------------------------------------

そして、それを二人に見せながら、
「こんな感じで配当されているんですよ。」と言った。

佳与はノートに写しながら、
「右手、左手というのは、患者さんの右手、左手のことですよね?」と訊いたので、私は軽く頷いた。

「言葉のリズムとして、肺、脾、心包、心、肝、腎(はい、ひ、しんぽう、しん、かん、じん)と何度も口にして、頭に叩き込んでおきましょうね。」私はそう告げてから湯呑みに手を伸ばした。

二人は、何度も何度も〔肺、脾、心包、心、肝、腎〕と口の中で呟いていた。

◆経絡と五行の関係

「六部の脈処の経絡の配置を覚えたところで、それらの経絡と五行の関係について覚えましょうか。」私が言うと、佳与が少し眉間にシワを寄せて言った。

「先生、私、そんなに覚えられませんよー!」
「そんなに難しくはありませんから、ノートしておいて、帰ってから覚えればいいですよ。」そう言って、私は話を続けた。

「五行というのは、物をその物たらしめる性質のことで、春夏秋冬も、朝、昼、夕、夜などの経過も東西南北のもつ方向や、青、赤、黄、城、黒の色の性質など、あらゆるものを、「木、火、土、金、水(もく、か、ど、ごん、すい)」の五つの性質的な傾向として捉え、その五行の関係性によって物事の成り立ちと変化を把握するという東洋の哲学なんですね。」

「木、火、土、金、水などと聞くと、何か占いのような、呪(まじな)いのような感じがして非科学的に思えるんですが…。」
と、茉奈が神妙な顔をして告げた。

「しかし、この五行を応用するからこそ鍼灸が単なる外科的な物理作用を越えた東洋医学として成り立っていて、実際に治療的な効果も発揮していて、だからこそ二千年ほどの長い歴史を持つことが出来ているんですよね。」と、私は抑え気味の真剣な口調になった。

「全身を巡る気の流れも、流れる場所によって名前を変えると同時に、五行的な性質も変わり、その経絡的な変化を把握するのが六部定位脈診なので、その関係性を理解し、治療に役立てる為には、各経絡の五行を頭に入れておく必要があるんですね。」そう言って、私は再びホワイトボードを取り出した。

「簡略化して、次のように表してみますね。」

--------------------------------------------------------
●五行→陰経/陽経

1、木→肝/胆
2、火→心/小腸 心包/三焦
3、土→脾/胃
4、金→肺/大腸
5、水→腎/膀胱
--------------------------------------------------------

「こんな風になっているんですよ。」私が言うと、佳与はホワイトボードに何度も顔を向けながら、その図をノートに写していた。

「但し、覚える場合は陰の経絡を木火土金水の順に〔肝心脾肺腎〕と口にして頭に叩き込み、その上で、陰経に対応する陽経を覚え、更に、火のところに心包と三焦を加えるようにすれば良いでしょうね。」

「〔肝心脾肺腎〕という具合に、一つの言葉として覚えていけば善いんですね?」と、茉奈が言った。

「脈を診る場合は、〔肺脾心包心肝腎〕、木火土金水の五行だと〔肝心脾肺腎〕って言葉が出るようになるまで繰り返し声を出して覚えて来ます!」

佳与がノートに目を落としながら決意を込めたような声を出したので、茉奈と私は顔を見合わせて笑ったのである。

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プロフィール

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鍼灸師・気功法講師。

和歌山県出身。日本福祉大卒。名古屋市内に鍼灸院「和気」を開院(2015年、閉院)。林茂美師に師事し気功を習得。愛知県名古屋盲学校専攻科非常勤講師(2016年退職)

現在は名鉄カルチャースクールにて講師活動のほか、名古屋市内にて各種の気功講座、気功教室を担当。

また、2013年より京都、妙心寺内大心院にて気功講習会を開始。現在に至る。

趣味は、陶芸、京都・奈良ウォークなど。

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