この先の中国経済はどうなるのだろうか?(7)底をつき始めた住宅用地の適地 2019/6/25

 毎月、国家統計局が公表する統計の一つに、「全国房地产开发投资和销售情况」(全国不動産開発投資と販売状況)があります。国家統計局のサイトは癖のように毎日開くのですが、さまざまな経済関連指標の月あるいは四半期ごとの変化を見るには大事なサイトです。

ほとんどの統計調査には厳密さを要求できないと思っている私ですが、指標そのものの絶対的値ではなく、一定の調査方法によって把握された数字の推移を見る上では参考になるサイトです。

 最近気づいた点の一つに、今年に入って、住宅用土地取引が急速に減少している点があります。これを表と図で説明しましょう。

 まず表は、1998年以降の@年次別、A2018年と2019年の1−5月までの比較、2018年と2019年の3,4,5の3ヶ月ごとの比較を住宅用の土地購入面積(開発業者が住宅用土地として購入する面積)とその取引額(土地開発業者が住宅用地として購入するために支払う額)および1u当たりの土地価格を示したものです。

 図はその説明を分かりやすくするために、表をいくつかに分割してビジュアル化したものです。

まず表を参考に、分かったことを簡単にまとめます。

@年次別に土地購入面積の推移をみると2011年がピークで4億4,327万u、以降傾向的に減少し、とくに2015年以降減少が目立ち、2018年には2億9,412万uとなりました。

A2018年1−5月累計と2019年1−5月累計について、土地購入面積はマイナス33%という大きな減少をみています。

B2018年3月、4月、5月と2019年の同じ月の購入面積比較では、前年同月比2019年3月マイナス32%、4月マイナス35%、5月マイナス36%と減少幅が拡大する傾向にあります。

C同じく年次別に土地取引額(販売額)の推移をみるとほぼ拡大傾向がみられ、2018年にはピークの1兆6,102億元となりました。

D2018年1−5月累計と2019年1−5月累計について、土地取引額はマイナス36%という大きな減少をみています。

E2018年3月、4月、5月と2019年の同じ月の土地取引額比較では、前年同月比2019年3月マイナス40%、4月マイナス48%、5月マイナス40%と大きな減少がみられます。

F1u当たり土地土地引価格は2006年以降年次別の変動を伴いながら傾向的には上昇、2018年3月にはピークの5,765元となりました。しかし2019年に入ると頭打ちから低下の傾向を示し、5月は4,563元と5,765元のマイナス1,200元となっています。

 以上を簡単に要約すると、2019年に入ってから、開発業者の土地購入面積は大きく減少し、単価の低下傾向とあいまって土地取引額も減少している、ということが言えるでしょう。

 これらを図で示したのが図1と2です。上で説明したことを目で確かめてください。年次別にみると2018年まで拡大していた土地取引額さえも、2019年になると減少していることが見て取れるでしょう。 

これまで拡大基調を続けてきた住宅用土地取引ですが、問題は、ここに来て急速に向きを変え始めたのはなぜかという点です。

 一つだれしも思い当たることは、中米貿易戦争のため不動産取引が委嘱し始めたのではないかという点です。これはみなさんが最も納得しやすい回答です。

それもあるでしょうし、小さな理由ではないかもしれませんが、私の見方は少し違っていて、掘り続けた金鉱が底をついたのと似て、過去数十年間、休みなく住宅用地を開発してきたために、それに適した土地がいよいよ底をつき始めたというのが真実です。

上にみた開発業者の土地購入面積の傾向的減少は、そのことを見事に証明しています。だから土地単価が上がり続けてきたのです。

これは現地の様子とも合致します。郊外へ行くと、マンション群を建設するにはいくらなんでも陸の孤島にしかならないという土地以外には、すでにマンション群が立地しているのが現状です。

中国の都市の郊外や農村に足を運ぶと、「こんなところからどうやって勤務先へいくのだろうか、どこで日用生活品の買い物をするのだろうか、子供の学校はどこにあるのだろうか・・・・・」といくつもの疑問が湧いてきます。いうならば、生活限界地にも高層マンションが林立してしまったのが、いまの中国なのです。住宅用地に適した土地(原野、農地、林地)はもう底をついてきています。

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愛知大学教授

専門分野/中国経済、とくに農村経済問題、中国食品安全問題など。

愛知大学名誉教授、愛知大学国際中国学研究センターフェロー

長年、中国各地の農村経済問題を中心とするフィールドワークに従事、毎年、合計すると2か月間は中国へ渡航。そのたびに増える名刺は省別にファイルしています。

中国へ行った際、必ず訪ねるところはスーパーの食品売り場です。その土地の経済やくらし、食文化などの断片を教えてくれる宝庫ですから。

豊富な資料と足を駆使して、変貌しつつある現代中国経済を正面から取り上げてまいります。

著書/『国際社会調査―中国・旅の調査学』『中国経済の構造転換と農業』『農民も土も水も悲惨な中国農業』『新型世界食料危機の時代』『中国社会の基層変化と日中関係の変容(共著)』『日中食品汚染』『デジタル食品の恐怖』『新次元の日中関係(編著)』『チャイナ・トリックス』など。

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