“美と健康”の好循環による健康長寿の実現 2019/7/30

前回、実際の年齢より若く見える要因のお話と、風が吹いたら桶屋が儲かる的なお話ですが、見かけ年齢が若く見えと、人や社会との接点の増加する ⇒ ライフスタイルの変化により生活習慣が改善される ⇒ QOLが向上する ⇒ 全身の健康が向上する(全体美)⇒ 肌の健康が向上する(肌の美)⇒ 見かけ年齢が若く見える ⇒ 健康長寿が実現する、という好循環のお話をしました。
前回記事:実際の年齢より若く見える要因と健康との関係

今回は、この点をもう少し科学的に説明したいと思います。
 
自分が同世代の人よりも若く見える、キレイに見えるという内面的な自信は、確実に他人との関りや社会活動の頻度を増やします。家に閉じこもりがちな中高年の女性に簡単なヘアーメイクと化粧法の指導を定期的におこなったところ、「より若く、キレイに変われる自分」に気づき、家の外に出る頻度が増し、再就職や社会活動に参加する頻度が増したという研究例もあります。また、外部社会との接点の増加は、確実にライフスタイルの変化や生活習慣の改善につながり、「よりキレイに」、「より健康に」への意識が向上します。日英での高齢者の追跡調査(2012年、2014年)で、社会参加により死亡リスクが28%低下、運動により死亡リスクが29%低下、前向きな気持ちを持つ高齢者は身体機能の低下が遅い、などの結果が報告されています。社会との接点の減少により内向きのストレスが増加するよりは、自分に自信をもって社会との接点を増やした方が確実にQOLの向上と、健康の増進・老化の防止に役立つと考えられます。米国の50〜70歳の男女の評価研究(2,015年)では、日常的にストレスを感じている人は老化関連炎症因子が高いとの報告をしています。老化は静かに進行する慢性炎症と関連しており、老化関連炎症因子とはインターロイキン6(IL-6)、インターロイキン1β(IL-1β)、腫瘍壊死因子α(TNFα)などの炎症性サイトカインをさします。

QOLの向上による健康の向上は、肌の健康に影響しますが、実は、この部分の科学的な証拠やメカニズムはまだまだ解明されていません。たとえば、精神的ストレス、睡眠不足、飲酒、喫煙などが、「お化粧の乗りが悪い」、「シミ・シワが目立つ」、「肌がかさつく」などの肌実感を伴うという話はよく聞きますが、これらの現象を科学的に解明すること、また、慢性炎症と肌との関係について解析することが、私の所属している岐阜薬科大学香粧品健康学講座のテーマとなっています。
( https://koushouhinlabo.wixsite.com/gpu-koushouhin )

 見かけ年齢に大きく関わる10個の要因については前回取り上げましたが、これら要因の多くは、意思をもってライフスタイルに反映させることが可能です。言い換えれば、日々の努力により、実年齢よりも見かけ年齢が若く見える可能性、ひいては健康寿命を延長できる可能性があるということです。見かけ年齢に大きな影響を及ぼす要因のひとつである肌の老化について詳しくお話しする前に、11月からの次回は、私たちを取り巻く健康や美容情報の氾濫に関して少し考えてみたいと思います。

井上 紳太郎 岐阜薬科大学 香粧品健康学講座 特任教授

昭和52年大阪大学大学院修士課程修了。
同年鐘紡株式会社入社、薬品研究所、生化学研究所を経て、平成12年カネボウ滑礎科学研究所副所長、漢方ヘルスケア研究所副所長。
平成16年より潟Jネボウ化粧品基盤技術研究所長、価値創成研究所長、スキンケア研究所長を歴任し、平成21年同執行役員。同時に花王潟rューティーケア研究センター副センター長および総合美容技術研究所長を兼務。
退社後、平成28年から岐阜薬科大学香粧品健康学講座特任教授として「美と健康」に関する研究と教育に従事。日本病態プロテアーゼ学会理事、日本白斑学会理事。

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