見かけ年齢に大きなインパクトをもつ肌の老化 2019/11/20

 7月20日公開の第2回目のコラムで、見かけ年齢を左右する要因として、「シワ、シミが目立たない」、「肌ツヤが良い」、「タルミが目立たない」という肌の老化に関わる変化をあげました。

7/20記事「実際の年齢より若く見える要因と健康との関係」

顔面や首筋は、衣服で防御される部位よりも常に紫外線や乾燥といった外部環境要因にさらされるので、積年の結果として、シミ、シワ、色むら、くすみ、たるみなどが顕著に現れる一方、人の目にも触れやすいので見かけ年齢に大きく反映されます。

 本題に入る前に、簡単に皮膚についての基礎をお話します。皮膚は、表面から「角層」、「表皮層(顆粒層、有棘層、基底層)」、そして基底膜という膜を境界に真皮層に続きます。基底膜上には表皮細胞の他、色素細胞というメラニンを生み出す細胞も散在しています。角層はわずか0.02mm程度の厚さの死んだ細胞(角質細胞)の層ですが、水分を保持できるレンガと、水分を通さないモルタルで固められたような丈夫な構造で、外的刺激から身体を守り、水分の蒸散も防ぐ重要な層です。表皮層は厚さ0.2mm程度の生きた細胞(表皮細胞)の層で、角層を生み出します。色素細胞は種々の刺激でメラニンを造り、隣接する表皮細胞に送り届けて(転送)、表皮細胞を紫外線から守ります。血管は基底膜の下の真皮層上部にしか来ていません。真皮層はほとんどがコラーゲンやヒアルロン酸などの細胞外マトリックス成分で、中に線維芽細胞が散在しています。

皮膚の構造

シミや色むらは加齢に伴い紫外線によって表皮層の細胞がダメージを受けメラニンの合成と排泄・分解のバランスに異常が出ている状態と言えます。くすみは、加齢に伴い乾燥による角層構造の乱れや基底膜下の血行のよどみなどが影響します。シワやたるみは、真皮層の奥にある筋肉の筋力低下や、真皮層のコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸などの細胞マトリクスの紫外線による変質が関わっています。

「老化」とは加齢に伴って生じる自分にとって不利な生理的病的変化です。肌の老化には紫外線が非常に重要な要素になります。しかし、若者を考えてみましょう。長時間屋外でスポーツを楽しんでも、すぐにはシミだらけになったり、シワだらけになったりしません。なぜなら、皮膚には強い修復機能があるからです。例えば、紫外線は瞬時に遺伝子(DNA)に多くの傷をつけますが、速やかに修復されます。

しかし、最近の研究で、その修復能が加齢とともに低下することが明らかになってきました。このことは、年齢を重ねるほど、同じ紫外線を浴びても肌のダメージが蓄積しやすくなるということになります。肌の老化を防ぐ最も有効な手段は、できるだけ早い時期から帽子、日傘、サンスクリーン化粧品などで紫外線を防御することに他なりません。紫外線は可視光と違い、反射・散乱しやすいので日陰でも注意する必要があります。

もうひとつ、「乾燥」にも注意が必要です。乾燥は皮膚に軽い炎症を引き起こし、角層の不全(バリア機能の低下)を介して、肌に継続的なダメージを与えます。近年では皮膚科の医療現場でもアトピー性皮膚炎などの種々の皮膚疾患で保湿の重要性が認識されてきました。 

早くも次回で最終回となりますが、全身の老化や健康と肌の老化の関係についてお話する予定です。

井上 紳太郎 岐阜薬科大学 香粧品健康学講座 特任教授

昭和52年大阪大学大学院修士課程修了。
同年鐘紡株式会社入社、薬品研究所、生化学研究所を経て、平成12年カネボウ滑礎科学研究所副所長、漢方ヘルスケア研究所副所長。
平成16年より潟Jネボウ化粧品基盤技術研究所長、価値創成研究所長、スキンケア研究所長を歴任し、平成21年同執行役員。同時に花王潟rューティーケア研究センター副センター長および総合美容技術研究所長を兼務。
退社後、平成28年から岐阜薬科大学香粧品健康学講座特任教授として「美と健康」に関する研究と教育に従事。日本病態プロテアーゼ学会理事、日本白斑学会理事。

PR情報

記事一覧

美と健康は表裏一体

前回は、肌の老化に関して紫外線や乾燥の影響をお話ししましたが、実は、肌の老化には全身の健康状態や全身の老化も関わっています。 前回記事「見かけ年齢に大…

2019/11/30

見かけ年齢に大きなインパクトをもつ肌の老化

7月20日公開の第2回目のコラムで、見かけ年齢を左右する要因として、「シワ、シミが目立たない」、「肌ツヤが良い」、「タルミが目立たない」という肌の老化…

2019/11/20

健康情報や美容情報の氾濫に飲み込まれないようにするには

現在、シミ(肝斑に限る)用の医薬品、化粧品的なシミ・シワ・肌荒れには薬用化粧品(医薬部外品)、健康や肌状態を訴求した特定保健用食品、そして、有効性を…

2019/11/10

新しい糖尿病治療薬:経口GLP-1作動薬

第1回記事:新しい糖尿病治療薬 第2回記事:新しい糖尿病治療薬:グリフロジン製剤 筆者が薬学生だった頃、「タンパク質のような高分子は消化管から吸収され…

2019/10/30

食品の安全性を考えるB 〜食品添加物は悪者なのか?〜

今回も前回、前々回に引き続き、食品の安全性についてのお話です。今回は食品添加物について考えてみたいと思います。 前回記事『食品の安全性を考えるA 〜食…

2019/10/23

新しい糖尿病治療薬:グリフロジン製剤

第一回記事:新しい糖尿病治療薬 糖尿病と言うぐらいですから、尿に糖が排泄される病気であることは容易に想像がつくでしょう。実際、糖尿病では尿糖が陽性と…

2019/10/20

新しい糖尿病治療薬

読者の皆さんの中にも、成人病検診などで「耐糖能が悪化していますね」と言われたご経験のある方も居るのでは? かく言う筆者も、年々ヘモグロビンA1c(どの程…

2019/10/10

食品の安全性を考えるA 〜食品中に存在するリスクって何?〜

今回も前回に引き続き、食品の安全性についてのお話です。今回は食品中に存在するリスクについて考えてみたいと思います。 前回記事『食品の安全性を考える@ …

2019/10/4

食品の安全性を考える@ 〜天然由来成分は本当に安全なのか?〜

食物を食べるということは、我々人間が毎日行うごく当たり前の行為であり、また生きていく上で必要不可欠なものです。それ故に、食品は安全なものでなければな…

2019/9/10

クスリにまつわるお金のはなし 〜製薬会社のお弁当〜

日本の国民医療費は、最近では年間42兆円、一人当たり33万円を超えています。これらの費用のほとんどは、私たちが毎月収めている健康保険料や税金、患者自己負…

2019/8/30

プロフィール

19

達人に質問をする

本学は、美しい金華山と長良川などの自然に恵まれ、また歴史と文化の薫漂う岐阜市の北部に位置し、80有余年に及ぶ歴史の中で、建学の精神である「強く、正しく、明朗に」をモットーに、「人と環境に優しいグリーン・ファーマシー」を基本理念とした薬学教育を通じ、安心で安全な医療に貢献できる薬剤師や、人と環境にやさしい方法で薬を創ることのできる研究者や技術者を養成しています。

地域に生き、世界に伸びる大学として、今までの実績を基にさらに発展し続ける努力を重ねております。

関連リンク

  • 会員登録
  • ログイン
今日の天気(17:00発表)
名古屋
曇り時々雨
11 ℃/5 ℃
東京
曇りのち時々雨
8 ℃/4 ℃
大阪
雨のち曇り
13 ℃/8 ℃
  • 現在、渋滞情報はありません。
  • 登録路線が未設定です。

企画特集(PR)

  • 公式 Twitter はこちら
  • 公式 Facebook はこちら
クラウドファンディング 夢チューブ 中日新聞
東京新聞 電子版
中日新聞の人材研修 ビジネストレーニング「ビズトレ」
中日販売サポート
東海テレビ 庄野アナと 新聞を音読してみよう!
中日防災ナビ
こどもウイークリーのこーなー
過去の企画・特集