美と健康は表裏一体 2019/11/30

 前回は、肌の老化に関して紫外線や乾燥の影響をお話ししましたが、実は、肌の老化には全身の健康状態や全身の老化も関わっています。
前回記事「見かけ年齢に大きなインパクトをもつ肌の老化 」

全身の老化は、各臓器の個々の細胞内成分(例:遺伝子の変異蓄積)の老化、細胞外成分(例:コラーゲン)の老化、それに伴う個々細胞の老化、そして結果的に皮膚などの各臓器の老化、によって進行します。また、最近の研究で、細胞の老化は、細胞からの慢性炎症因子(7月30日コラム参照)の放出を介して全身の老化に影響することが分かってきました。ここでは、コラーゲンの老化を例に、食生活改善による全身の健康が肌の老化にどう関わるかをお話しします。
 

コラーゲンは真皮層の主なタンパク質成分であると同時に、他の臓器や骨の成分として全身に分布しています。また、線維芽細胞などの足場となり活動のための環境を提供しています。その特徴は、3重らせん構造をもつので分解されにくく非常に丈夫なことです。そのため、体内での存在時間が他のタンパク質よりも長く、周りの糖分と反応して変質したコラーゲンが生じます(糖化コラーゲンまたはAGE化コラーゲンと言います)。

糖尿病の検査で測定されるHbA1cとは糖化ヘモグロビンのことで、高血糖が続くとヘモグロビンが糖化されるために利用されています。健常者でも加齢に伴って皮膚の糖化コラーゲン量が増加しますが、実は糖尿の病患さんの皮膚では若くして糖化コラーゲン量が増える一方で弾力性が低下することが明らかになっており、高血糖が皮膚老化を加速することになります。なぜなら、糖化コラーゲンは、真皮層の線維芽細胞の足場としての環境を乱して細胞活動や機能を低下させるからです。また、これとは別に、私たちは、糖尿病皮膚は老化肌に類似していること、糖尿病の患者さんの肌は、高血糖時に乾燥していることを明らかにしています。これらの結果は、食生活の改善により高血糖を避けることが、肌の老化や乾燥を防ぐことを示しています。

食生活と言えば、肥満も老化に関わります。脂肪組織は炎症型のマクロファージという細胞種を増加させ、全身老化に関わる慢性炎症因子の増加を引き起こします。一方で、肥満は体重増加と膝関節負担増に伴う運動量の低下により、見かけ年齢の要素である姿勢、歩幅、歩行速度(7月20日コラム参照)に影響します。
7/20コラム「実際の年齢より若く見える要因と健康との関係 」

以上、7月と11月の計6回のコラムでお伝えしたかったことは、食生活などのライフスタイルの改善により健康を目指し、紫外線や乾燥から肌を防御して肌の老化を防ぐことが、結果的に見かけ年齢が若く見えることにつながり、それが社会との接点や活動を増やし、ライフスタイルの改善につながるということです。

まだまだ解明すべきことはたくさんある香粧品健康学の分野ですが、皆さんの美と健康の実現に向けての一助となるようご紹介させて頂きました。

井上 紳太郎 岐阜薬科大学 香粧品健康学講座 特任教授

昭和52年大阪大学大学院修士課程修了。
同年鐘紡株式会社入社、薬品研究所、生化学研究所を経て、平成12年カネボウ滑礎科学研究所副所長、漢方ヘルスケア研究所副所長。
平成16年より潟Jネボウ化粧品基盤技術研究所長、価値創成研究所長、スキンケア研究所長を歴任し、平成21年同執行役員。同時に花王潟rューティーケア研究センター副センター長および総合美容技術研究所長を兼務。
退社後、平成28年から岐阜薬科大学香粧品健康学講座特任教授として「美と健康」に関する研究と教育に従事。日本病態プロテアーゼ学会理事、日本白斑学会理事。

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