気功治療への道案内/十一日目 2019/8/19

◆診察のヒント

台風10号が西日本に大雨を降らせ、大きな被害をもたらした翌日、お盆休みを終えた茉奈(まな)と佳与(かよ)が愚庵にやって来た。

「今回は、脈診を補足する診察のヒントについて学びましょうか。」

私は二人の娘に、今回の講義の内容を告げた。

「四診法ですね?」
と、自習を進めている茉奈が言った。

「そう、望診、聞診、問診、切診の四つの診察法なんですが、形式的にではなく、実際の臨床の場からの視点で勉強してみようと思うんですよね。」

私の言葉に佳与が手をあげた。

「四診法って何ですか?」

「東洋医学も治療としての体系があり、つまり、診察、診断、治療の体系がある訳で、これまで勉強してきた〔証の決め方〕は診断にあたり、〔経絡への補瀉〕などは治療になるんです。
そして、〔四診法〕が診察法に当たるんですが、その全体については、また後日、まとめて勉強することにして、今日は、それを臨床的な方向から学んでみようということなんですよね。」

「臨床の立場からって?」
と、佳与が訊いた。

「そうですねぇ、大抵の人は、何処かが痛いということを訴えますよね。その場合、その痛みを訴えている場所が体のどの部に当たるのかを訊いて、それが手や足のどの陰陽の支配する場所かを押さえるんです。」

「場所って、頭とか肩とか腰などということですか?」
と、佳与が訊いた。

「それだけではなく、例えば頭なら、前なら陽明、横なら少陽、後ろなら太陽という具合に診るです。体のどの部分も三陰三陽に配当されていますので、それぞれにどこかの経絡に配当できますよね?」

私は答えた。

「私、まだうろ覚えなんですが、例えば、偏頭痛なら、頭の横だから少陽で、頭は手も足も関係してるから、三焦経や胆経に関係あるってことですか?」
と、佳与が言ったので、私は、
「佳与さん、凄い!」
と言って、パチパチパチと手を叩いた。

「そんな風に、患者さんが訴える体の部位がどの経絡の支配するルートに入っているのかを診るのも一つの情報なので、それをインプットしておくんです。」

「そんな方法で診れば、どの経絡に異常があるかを考える上で、かなり役に立ちますね。」

茉奈がメモを取りながら言った。

「他にどんな診方があるんですか?」
と、佳与が訊ねたので、私は、幾つかのポイントを話した。

「そうですねぇ、まず、大ざっぱですが、患者さんの訴える症状が、ホルモンのバランスが崩れていると考えれば〔肝〕、循環器系なら〔心〕、消化器系なら〔脾〕、呼吸器系なら〔肺〕、泌尿器系や免疫力の低下なら〔腎〕という具合に理解したり、顔の中で、目に異常があれば〔肝〕、舌なら〔心〕、口の中や唇なら〔脾〕、鼻なら〔肺〕、耳なら〔腎〕と把握する診方、また、体の組織として、腱の症状なら〔肝〕、血管の症状なら〔心〕、筋肉なら〔脾〕、皮膚のトラブルなら〔肺〕、骨なら〔腎〕などと診る診方もあるんですよ。」

「先生、そんなに一杯、覚えられませーん!」
と、佳与が悲鳴のように言ったので、私はホワイトボードを持ち出した。

--------------------------------------------------------
●肝→ホルモンバランス/目/腱
●心→循環器/舌/血管
●脾→消化器/口、唇/筋肉
●肺→呼吸器/鼻/皮膚
●腎→泌尿器、免疫/耳/骨
--------------------------------------------------------

「他にもね、患者さんの気分や感情、喋り方や精神力なんかも一つの情報として診るんですが、それらは〔四診法〕を学ぶ時にまとめて勉強することにしましょう。」

私が言うと、茉奈も佳与もほっとしたようだった。

「やはり、治療するって、ただ気のボールが作れるようになったから、それを当てるだけなんて単純なものじゃないんですねぇー。」
と、佳与がしみじみと話したので、私は茉奈と顔を見合わせて笑った。

その後、腕が落ちるといけないので、お互いに脈を診合い、一番虚していると思われる経絡の原穴に剣指で気を入れたり、基礎的な元気を付けるために丹田を包むように気を当てたりなど、しばらく二人で「気功治療」の基礎的な練習をしてから愚庵を後にしていったのである。

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プロフィール

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鍼灸師・気功法講師。

和歌山県出身。日本福祉大卒。名古屋市内に鍼灸院「和気」を開院(2015年、閉院)。林茂美師に師事し気功を習得。愛知県名古屋盲学校専攻科非常勤講師(2016年退職)

現在は名鉄カルチャースクールにて講師活動のほか、名古屋市内にて各種の気功講座、気功教室を担当。

また、2013年より京都、妙心寺内大心院にて気功講習会を開始。現在に至る。

趣味は、陶芸、京都・奈良ウォークなど。

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