日本型では世界に勝てない!東海中教員が今年読んだ教育関連本まとめ 2019/12/20

今週で東海中学の期末試験も終わり、生徒たちは解放感に満ち溢れている。そこで私も一年の振り返りの意味も込め、今年読んだ本を要約しながら“日本の教育の問題点”について考えたい。

教育改革こそがこの国の急務なのだが…たぶん変わらないだろうなあ。残念ながら、崩壊するところまで行かないと(実はとっくの昔に崩壊しているのだが…)、この国は何も変わらないのだと思う。

稲盛和夫『君の思いは必ず実現する』財界研究所


学校のテストなどの成績評価では、どうしても習った知識をどれだけおぼえることができたか、という面だけで判断されがちだ。それでは、こうしたテストの成績がいい人は、それで人生がずっとうまくいくのか?筆者は学校の成績の良し悪しよりも、その後の人生においては、創意工夫が大事になってくると考える。

すぐれた研究成果を上げた科学者たちに対して「京都賞」という国際賞がある。ノーベル賞に勝るとも劣らない評価を受けており、世界中の幅広い分野の科学者が目標としている。受賞する科学者のほとんどは、世界に先駆けて創造的な成果を上げた人ばかりで、ほとんどはアメリカなど海外の人たち。日本の教育ではいかに創造性が育ちにくいか、ということを実感している。欧米、特にアメリカは、創造性の点では日本など問題にならないほど傑出した才能を生み出している。

アメリカの子供たちは日本の子供たちと比べて、高校までは自由にのびのびと、人間性を養うような教育を受けてきたのではないか。その期間は、彼らにとっては「何かをしたい」という意欲、つまりその人の人生目標をゆっくりと考えるためのものではないか。

『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』中公文庫より

日本軍の原点は日露戦争にあった。人事昇進システムは、日本軍は基本的には年功序列。戦時において日本軍には米軍のような能力主義による思い切った抜てき人事はなかった。海軍兵学校では理数系科目が重視され、また成績によって序列が決まったので、大東亜戦争中の提督のほとんどは、理数系能力を評価されて昇進した。陸軍大学卒業者は、記憶力、データ処理、文書作成能力にすぐれ、事務官僚としても優れていた。しかしいずれのタイプにも共通するのは、それらの人々がオリジナリティを奨励するよりは、暗記と記憶力を強調した教育システムを通じて養成されたということである。予測のつかない不測事態が発生した場合に、とっさの臨機応変の対応ができる人物は、定型的知識の記憶にすぐれる学校秀才からは生まれにくいのである。

岩竹美加子『フィンランドの教育はなぜ世界一なのか』新潮社


フィンランドの教育の良さはシンプルさにある。入学式や始業式、運動会などの学校行事がない。授業時間は少なく、学力テストも受験も塾も偏差値もない。統一テストは、高校卒業時だけだ。服装や髪型に関する校則も制服もない。部活も教員の長時間労働もない。教育を支えるのは、徹底した教育無償化と平等、子どもの権利やウェルビーイング(快適さ・満足感・充足感・安心・自信・健康など、幅広い意味を持つ)である。

親にとってもストレスが少ない。小学校から大学に至るまで教育費は無償なので、経済的、精神的にとても楽だ。小中学校では、教科書やノート、教材等も無償で支給される。学級費や諸費用はない。給食も、保育園から高校まで無料である。ランドセルや新しい服など高価な買い物は必要ない。教科書や教材は学校に置いていくので、小さな子どもが、毎日重いカバンを背に通学する必要はない。学校と保護者の連絡にはメールが使われ、学校からの手紙やプリントはほとんどない。平等は理想かもしれない。

しかし、だからこそ、国が平等で無償の教育を提供する。貧富・性別・宗教・年齢・居住地・民族・性別志向などの違いによって差別されることのない、等しい出発点を1人1人に保証する。フィンランドの教育がめざすものは、子どもが自分を発展させ、自分らしく成長していくことである。それは、知識を習得したり、学力を、偏差値を高めたり上げたりすることではない。自分自身の考えを持ち、アクティブで良識ある市民として成長することである。

佐藤優『未来エリートのための最強の学び方』集英社インターナショナル

いわゆる進学校で「将来何になりたいか」と聞くと、弁護士か医者か公認会計士。そこで筆者は言う。「どれも貧困ビジネスに陥る可能性があるよ」公認会計士や弁護士は明らかに作りすぎ。医者はそこまでの状況になっていないが、都市部での競争は激しいから、親の病院を継ぐことでもないと開業は難しい。病院の勤務医はどうかというと、生涯収入は総合商社や新聞社の方がずっといいのが現状だ。親は昔の職業観をそのまま持っているから、子どもを医者や弁護士にさせたがる。子どもに何を与えるべきなのかをよくわかっていない。

「今の大学入試は末期の零戦だ」この零戦、マイナーチェンジだけで終戦までの5年間使った。ゼロ戦は最初の2年間は強い戦闘機だったが、戦争の終わりになると、アメリカの戦闘機には全然対応できなかった。ただひたすら撃ち落される時代遅れな戦闘機になってしまった。今の日本の教育はそれに似ている。我々が学んできた学校教育は1979年型。この年センター試験の前身、全国共通1次試験が導入された。その枠組みはそのままで、いろんなマイナーチェンジをして40年近く続けてきたが、本質は変わっていない。結局は抜本的な解決にはなってはいない。

『起業目指さない日本人 原因は教育と金融だ』

アメリカではどんなに小さな会社でも経営者は尊敬されるが、サラリーマンは所詮家来だろ、という扱いになり、まず尊敬されない。起業のハードルが全く違う。大学卒業して間もなく起業するといってお金を貸してくれる銀行は日本には絶対にない。アメリカでは貸してくれる。退職後の起業も同様です。職場にしがみ付かないと生きていけない日本と、いざとなれば自分で勝負できるアメリカではおのずと生きる方法が変ってくる。だから教育も全然違う。日本の教育は先生の言うことを聞けるかが重視される。上司の言うことをきちんと聞くロボットを育てていると言えるでしょう。
―ぐっちーさんのここだけの話―「AERA」2019.8.5

最後に・・・

私は長年地理の教員をしているので、いろいろな統計の経年変化を見ている。全ての面で今の日本はものすごい勢いで衰退し、負け続けている。マスコミはその事実を報道しない。戦時中と同じだ。7月に行われた参院選の最中に、TVはどこも吉本興業のことばかり報道していた。

また、お盆休みに観た映画『天気の子』パンフレットで、新海誠氏は述べている。「主人公の2人が貧しいというのは、『君の名は。』と大きく違う要素。社会自体があの頃(まだ最近のことなのだが…)とは違っていて、日本は明確に貧しくなってきている。特に若い子にはお金が回らなくなっていて、それが当たり前になってきています。」

衰退(敗戦)が続く状況下で、何も手を打たない(手を打てない・手を打たなかった)各分野の指導者の人たちこそ、“本当に頭が悪いダメな人たち”で、大きな責任があると思う。日本の教育、つまり勉強ができて成績がいいだけではダメなのだという「真実」になぜ気づかないのだろう?

「進化論」で有名なダーウィンの言葉を引用して今回のコラムを締めたい。

“生き残る種は、最も強いものではない。最も知的なものでもない。変化に最もよく適応したものである。”

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東海中学地理教諭

ボーとした小学生で地図を見るのが好きだった。地図は長年の相棒。中学時代はテニス部キャプテン。みかん畑の中の蒲郡東高校。昼食後の授業は「海を見ていた午後」おだやかな三河湾を眺めていた。

FM愛知の深夜放送『コンタクトクラブ』チコさんに「大地主のお坊ちゃん」のペンネームでせっせと投稿。学生時代は“じゃん・だら・りん”の三河郷友会学生寮。最近女子寮が同じ敷地にできてビックリした。

東海生の手荒な洗礼を受け続け早や30年。仕事は好きなので感謝している。勤務校の東海とは不思議な縁を感じています。

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