夏の終わりの珈琲小旅行 2019/9/19

博多 珈琲美美の森光充子さん

いつもありがとうございます。暑い夏も終わりだんだんと秋の様相になって参りました。

最近、日本と韓国との関係が悪化したとのニュースがよく報道されています。しかし、悪化しているのは政府レベルの話で、個人同士の関係はそれほど悪化しているようには思えません。

韓国はここ数年珈琲ブームで、さまざまな珈琲屋や喫茶店、カフェが新しく出来ているそうです。チェーン店やスタバのようなエスプレッソの店なども多いのですが、自家焙煎珈琲専門店が流行していて、日本の富士ローヤル(株)の焙煎機も順調に売れているそうです。韓国の珈琲店は日本の珈琲店を目標にしていて、多くの珈琲屋の方々が日本に勉強に来ているそうです。

なかでも韓国に一番近い福岡の自家焙煎の名店には連日韓国の珈琲店の方々が押し寄せています。博多の珈琲美美の森光宗男(故人)氏のもとにも韓国の珈琲店主が一堂にツアー(?)で訪れ、行列を作ったとのお話を生前聞いたことがありました。森光さんは韓国でも有名で、富士ローヤルの韓国営業所でネルドリップの講演を頼まれその講演の帰路、空港のロビーでお亡くなりになったのです。

私は、37年前に自家焙煎を始めた頃から年二回ほど、全国の有名な自家焙煎珈琲店を訪ねる珈琲店行脚の旅をしてきました。当時は今のようにネットがあるわけでもなく、唯一の珈琲情報誌「月刊喫茶店経営」に掲載される店の中からなんとなく興味を抱いた店を選んで不定期に訪ねて回りました。なかには本当に素晴らしい店もありましたし、「ちょっと誇張して紹介してるな」という店もあり、やはりその店を知るには訪ねて自分の眼で、舌で感じ取らないと解らない事だという事を知りました。

何十回も回を重ねたある日、心の師と仰ぐ森光宗男氏の珈琲美美を尋ねました。森光氏は「自分の珈琲を創るにはあまり多くを観すぎない方がいいですよ。その時間と費用を自分の珈琲創りに使ってください!」と・・・。これを最後に私の珈琲店行脚の旅は終了しました。

倉敷珈琲館入り口
倉敷珈琲館店内

私は8月の終わりに、故森光宗男さんのお墓参りを兼ねて、久しぶりに岡山、倉敷、博多の珈琲店を数店尋ねる珈琲小旅行に行って参りました。今回は名古屋栄中日文化センターの珈琲教室を毎月手伝っていただいている、岐阜県揖斐郡池田町の自家焙煎珈琲店「カフェ・ブロック・ハウス」の増田和久さんもご一緒しました。

まずは倉敷まで行き、15年ぶりに私の珈琲行脚の原点でもある「倉敷珈琲館」に伺いました。倉敷珈琲館は、関西の珈琲研究家「襟建保博」氏唯一のお弟子さんであった「芳子」さんが昭和47年にはじめられた珈琲店です。私が自家焙煎を始めて5年くらいの時焙煎に悩み、何かにすがる思いで倉敷珈琲館を尋ねました。毎年1回、7年間通いました。忙しい店でしたのでご迷惑だったと思いますが、いつも親切にお話をしていただき、貴重な本までいただきました。その本は今でも私の宝物です。

今は諸事情により芳子さんは退き、穴吹工務店が経営者となり、芳子さんのお弟子さんが焙煎や店を任されて切り盛りしているそうです。焙煎機もメニューも当時のままで、私は経営者が変わってから初めて伺いましたが、深煎り珈琲の魅力を当時のまま見事に継承されていて感激いたしました。店内も昔のままのたたずまいで、何も変わっていないことがとても嬉しく、焙煎に悩み苦しんでいた当時の自分を思い出しました。

物創り、特に珈琲焙煎はいつまでたっても迷いの連続です。人は迷った時に原点回帰します。私にとってのその場所が倉敷珈琲館なのです。ドゥミタッスコーヒーを静かに噛みしめるようにゆっくり飲みながら、当時の自分を思いかえし、通り過ぎた時間を振り返り、今の自分を感じ、これからの時を考える事ができました。

来てよかった!

岡山 折り鶴店内
折り鶴の藤原隆夫氏

その後、岡山に戻り、イエメン、エチオピア、インドネシア、ケニア、タンザニアなどの珈琲の旅をご一緒した藤原隆夫さんのお店「珈琲 折鶴」を尋ねました。重厚感のある欅のカウンター8席の店で、一人でやっていますのでメニューは珈琲だけしかありません。オーダーが入ってから、ゆっくり丁寧にコーヒー豆を挽き、ネルフィルターを使い専用のドリップポットで時間をかけ一滴一滴丁寧に淹れます。

オーダーが入ってからカップコーヒーが出てくるまでに15分くらいかかります。8席しかないですが満席になると大変で、最後の方の珈琲が出て来るまでにかなりの時間がかかります。私の行った時も席はほぼ満席でしたのでコーヒーが出て来るまでに40分くらいかかりました。とても良いお客さんばかりで、皆さん黙って静かに珈琲が出て来るまで穏やかに待っていました。珈琲一杯にこれだけの思いと時間をかける藤原さんの情熱を楽しんでいるようでした。

ブレンドコーヒーはなく、すべてシングルオリジンの上質な豆が用意されていました。味は、コクと苦みが深く、豆が持つ資質を余すことなく抽出したしっかりした味わいの珈琲でした。私の目指す珈琲とは違いますが、どこにでもあるコーヒーではなくオンリーワンの素晴らしい珈琲だと感じました。

店の終了後、夕食をごちそうになりながらいろいろな珈琲話をさせていただきました。藤原さんは森光宗男氏を師と仰ぎ尊敬していて、お彼岸には必ず博多までお参りに行かれるそうです。

一杯の珈琲にかける思いと情熱は森光宗男氏や大坊勝次氏の貴重な後継者で、これからの日本の珈琲界をリードしていく一人です。

能古島フェリー乗り場。ご一緒した増田和久さん
森光宗男氏が眠る能古島の永福寺

その日は岡山で泊り、翌日は朝早く博多に入り、森光宗男氏のお墓参りに行きました。お寺は能古島という離島にあり、フェリーで10分かけて到着しました。能古島は以前コーヒー農園があり、珈琲の会なども催したこともありしたが、今はありません。

珈琲つながりなのかしれませんが、島唯一のお寺 永福寺の納骨堂に眠っています。凛としたお寺で、心より手を合わせ、珈琲美美さんの繁栄と携わる方々のお幸せ、森光氏のモカへの志を少しでも繋げていくという思いと今までの感謝の気持ちなどを伝えてきました。

森光充子さん(珈琲美美にて)

その後、赤坂の珈琲美美に行って珈琲を頂いてきました。久しぶりに来ましたが、森光充子さんはお元気でお仕事をなさっていました。今は娘さんもお手伝いされていて、多くのお客さんが来店されていました。

森光さん亡き後もこうしてしっかりと味も店の運営も引き継いでいることは、本当に素晴らしく心よりホッとすると同時に感服しました。珈琲もコクがあり綺麗でいて味わいがある素晴らしい香味の珈琲で、すでに充子さんは充子さんの味をしっかり確立して、「ニュー珈琲 美美」として多くのお客さんに感動を与えています。
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【告知】
9月30日14:00〜16:00
日本コーヒー文化学会九州北支部主催の珈琲セミナー開催
タイトル:「珈琲や」って何だ!
大坊勝次さんと奥様の恵子さんをお迎えして行われます。
定員30名
場所:珈琲美美(博多)
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私も参加します。

1時間ほどで珈琲美美を後にして、その後予約していた劇団四季の「ライオンキング」をJR福岡駅近郊住吉町にあるキャナルシティー劇場で観ました。以前、名古屋で2回観てすっかりファンになり、博多で開催していることを事前に知って旅の最後に観て帰ろうと、チケットを買っていました。

今回観たのは、博多バージョンで名古屋バージョンとは若干違っていて演出も進化していてとても楽しかったです。来年は久しぶりに名古屋公演が開催されるそうですのでとても楽しみです。

すべての工程を終え、19時の小牧空港行きの飛行機に乗り帰宅しました。「人は何かを忘れるために旅をする」と言いますが、「何かを思い出し自分を確認するために旅をする」もあるのかもしれませんね!

久しぶりの珈琲小旅行は原点回帰の旅となりました。改めて「自分の珈琲とは何か?」が確認できた「珈琲時間」でした。

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プロフィール

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日本コーヒー文化学会 理事、日本スペシャルティーコーヒー協会会員(SCAJ)、SCAJ公認 コーヒーマイスター(NO.169)、前・金沢大学講師 (文部科学省公認)

1977年岐阜県瑞浪市に「待夢珈琲店」開店、コーヒーの歴史書や専門書を読みあさり、独学で焙煎を覚え、自家焙煎の珈琲専門店をスタートさせる。

その後、世界のコーヒー産地を自らの足で回り、納得のいく優良な豆を買い付け、良質で新鮮な体に良いコーヒーを提供しています。

また、現在、中日文化センターの珈琲教室をはじめ、基礎クラスから専門クラスまで12講座をこなしています。

産地歴訪はエチオピア3回、イエメン4回、ブラジル、インドネシア、ケニア、タンザニア、ペルーなど。

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