食品の安全性を考える@ 〜天然由来成分は本当に安全なのか?〜 2019/9/10

 食物を食べるということは、我々人間が毎日行うごく当たり前の行為であり、また生きていく上で必要不可欠なものです。それ故に、食品は安全なものでなければなりません。現在のわが国においては、おそらくほとんどの方が安全性を疑うことなく毎日の食生活を送っていると思いますが、食品には必ずしも体に必要なものばかりが含まれているわけではありません。すなわち体には必要のないものや、体にはよくないものが含まれていることもあります。
 
 つまり食物を食べるという行為は、必ずしもベネフィット(利益)だけでなくリスク(危険性)も伴う可能性もあるのです。今回のシリーズでは、食品の安全性について考えてみたいと思います。

天然着色料と合成着色料

 突然ですが質問です。お菓子屋さんに、キャンディーを買いに行きました。皆さんは、図の@天然着色料を使ったキャンディー、A合成着色料を使ったキャンディー、のどちらのキャンディーを選びますか?おそらく多くの方が、@の天然着色料を使ったキャンディーを選ばれると思います。それはなぜでしょうか?合成品より天然由来のものの方が安全であると考えているからではないでしょうか?しかしその判断には、大きな誤解があると思います。

「天然由来=安全」という幻想

 「天然由来」という宣伝文句は、CMでよく耳にします。それは「天然由来=安全」というイメージがあるからだと思います。果たして本当にそうでしょうか?実は天然由来成分であっても生体にとっていわゆる「毒」になるものは、数多く存在します。

 皆さんがよくご存じの例としましては、毒キノコの成分やフグ毒などがあげられます。このように毒を含む食物を摂取する機会はあまりありませんので、これらは極めて例外的なものと思われるかもしれませんが、私たちが普段からよく食する食品の中にも、毒物が含まれている例があります。例えば、じゃがいもの新芽部分は習慣的に調理前に取り除いていると思いますが、この部分にはソラニンやチャコニンという毒物が含まれており、たくさん摂取すると死に至る場合もあります。他にも代表的な山菜であるワラビには、プタキロシドと呼ばれる発がん性の毒物が含まれています。一般的にワラビは食する前に重曹(炭酸水素ナトリウム)を含む熱湯であく抜きを行いますが、これはプタキロシドなどの毒素を抜く効果があるためです。

 このように我々の身の回りには、天然由来の毒が数多く存在していることから、必ずしも「天然由来」という理由だけで、安全性が担保されるわけではないことがお分かりいただけると思います。食の安全性は、こういった先入観にとらわれるのではなく、常に科学的根拠に基づいて冷静に判断されなければなりません。

 次回は食品中に存在するリスクについてのお話しをする予定です。

中西 剛(ナカニシ ツヨシ)
岐阜薬科大学 生命薬学大講座 衛生学研究室 教授

平成5年 大阪大学薬学部薬学科卒業。平成7年大阪大学大学院薬学研究科 博士 前期課程修了、平成10年同研究科 大阪大学大学院薬学研究科博士後期課程修了 博士(薬学)号取得
同年4月に 大阪大学大学院薬学研究科 毒性学分野 助手として着任、内分泌かく乱化学物質に関する研究に従事。
平成20年 岐阜薬科大学 衛生学研究室 准教授、平成30年より現職。

社会活動:
内閣府食品安全委員会 専門委員(令和元年10月より)
岐阜県環境影響評価審査会 委員

賞罰:
平成30年 日本薬学会学術振興賞 受賞、日本毒性学会日化協LRI賞 受賞 他

現在は、内分泌かく乱化学物質に関する研究に加え、化学物質によって誘発される生殖発生毒性、免疫毒性、脂質代謝異常、神経毒性などに関する分子メカニズムの解明や毒性試験法の開発などを行っている。

PR情報

記事一覧

健康情報や美容情報の氾濫に飲み込まれないようにするには

現在、シミ(肝斑に限る)用の医薬品、化粧品的なシミ・シワ・肌荒れには薬用化粧品(医薬部外品)、健康や肌状態を訴求した特定保健用食品、そして、有効性を…

2019/11/10

新しい糖尿病治療薬:経口GLP-1作動薬

第1回記事:新しい糖尿病治療薬 第2回記事:新しい糖尿病治療薬:グリフロジン製剤 筆者が薬学生だった頃、「タンパク質のような高分子は消化管から吸収され…

2019/10/30

食品の安全性を考えるB 〜食品添加物は悪者なのか?〜

今回も前回、前々回に引き続き、食品の安全性についてのお話です。今回は食品添加物について考えてみたいと思います。 前回記事『食品の安全性を考えるA 〜食…

2019/10/23

新しい糖尿病治療薬:グリフロジン製剤

第一回記事:新しい糖尿病治療薬 糖尿病と言うぐらいですから、尿に糖が排泄される病気であることは容易に想像がつくでしょう。実際、糖尿病では尿糖が陽性と…

2019/10/20

新しい糖尿病治療薬

読者の皆さんの中にも、成人病検診などで「耐糖能が悪化していますね」と言われたご経験のある方も居るのでは? かく言う筆者も、年々ヘモグロビンA1c(どの程…

2019/10/10

食品の安全性を考えるA 〜食品中に存在するリスクって何?〜

今回も前回に引き続き、食品の安全性についてのお話です。今回は食品中に存在するリスクについて考えてみたいと思います。 前回記事『食品の安全性を考える@ …

2019/10/4

食品の安全性を考える@ 〜天然由来成分は本当に安全なのか?〜

食物を食べるということは、我々人間が毎日行うごく当たり前の行為であり、また生きていく上で必要不可欠なものです。それ故に、食品は安全なものでなければな…

2019/9/10

クスリにまつわるお金のはなし 〜製薬会社のお弁当〜

日本の国民医療費は、最近では年間42兆円、一人当たり33万円を超えています。これらの費用のほとんどは、私たちが毎月収めている健康保険料や税金、患者自己負…

2019/8/30

スポーツと薬のはなし〜防ごう!うっかりドーピング〜

東京オリンピック・パラリンピックまであと1年。楽しみにしている人も多いと思います。東京での開催は56年ぶり2回目です。しかし、いまから79年前、実は幻の東…

2019/8/21

登山を健康に楽しむために注意すること

明日8月11日は「山の日」です。山の日は2016年に新設された新しい祝日で、祝日法という法律では「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」と定義されてい…

2019/8/10

プロフィール

19

達人に質問をする

本学は、美しい金華山と長良川などの自然に恵まれ、また歴史と文化の薫漂う岐阜市の北部に位置し、80有余年に及ぶ歴史の中で、建学の精神である「強く、正しく、明朗に」をモットーに、「人と環境に優しいグリーン・ファーマシー」を基本理念とした薬学教育を通じ、安心で安全な医療に貢献できる薬剤師や、人と環境にやさしい方法で薬を創ることのできる研究者や技術者を養成しています。

地域に生き、世界に伸びる大学として、今までの実績を基にさらに発展し続ける努力を重ねております。

関連リンク

ピックアップ

  • 中日ボイス『首相の政治手腕、評価する?』
  • 会員登録
  • ログイン
今日の天気(17:00発表)
名古屋
晴れ
15 ℃/7 ℃
東京
晴れ
15 ℃/9 ℃
大阪
晴れ時々曇り
14 ℃/9 ℃
  • 東名で渋滞情報あり。
  • 登録路線が未設定です。
  • 公式 Twitter はこちら
  • 公式 Facebook はこちら
クラウドファンディング 夢チューブ 中日新聞
東京新聞 電子版
中日新聞の人材研修 ビジネストレーニング「ビズトレ」
中日販売サポート
東海テレビ 庄野アナと 新聞を音読してみよう!
中日防災ナビ
こどもウイークリーのこーなー
過去の企画・特集