気功治療への道案内/十四日目(最終回) 2019/10/7

◆修練に励みましょう

季節は移り、既に10月の声を聞いていた。
私の講習への依頼が幾つか入り、二人の娘たちとの時間的な折り合いがつかず、静観塾も少し間が開いてしまった。

「お久しぶりでーす!」
茉奈と佳与が元気にやってきた。
休んでいた間に起こった様々な話をした後、私は切り出した。
「この気功治療の勉強会も今回で終わりにしようと思っています。」
目を見開き、口をあんぐりと開け、二人の顔が止まった。

「どうして?」
しばらくして佳与が言った。
「私が忙しくなり、お二人に迷惑を掛けてはいけないと感じていますのでね。」
「私たちの方が先生に迷惑をお掛けしているんですから…」
と茉奈が言った。
「その代わりと言っては変ですが、今日は目一杯に、あなた方が一定の治療が出来るようになるための基本をしっかり勉強しますからね。」
「はい!」
と佳与がキリッとした顔で応えた。

●治療の流れ

「治療の流れですが、まず、しっかりと患者さんの話を聞き、状態を診て、大まかな経絡的な情報をインプットします。」
つまり、顔面部の炎症、目の充血、鼻炎、口内炎、歯肉炎などや皮膚のトラブルなら陽明部の大腸経、耳や側頭部、足の側面の症状なら少陽部の三焦経とか胆経、後頭部や後ろ首、背部、腰部、足の後ろ側の症状なら太陽部の小腸経や膀胱経という具合です。」
「目なら肝、鼻なら肺、耳なら腎、口なら脾、ベロなら心というのもあるよね」
と、佳与が続いた。
休みの間に彼女の勉強は進んでいるのがわかった。

「血液やリンパ、内分泌ホルモンの症状なら肝、循環器系の症状なら心、消化器系統なら脾、呼吸器や皮膚のトラブルなら肺、泌尿器や免疫系なら腎というのも考えに入れておいて下さいね。」
そして、
「他にどんな状態を考慮する必要があると思いますか?」
と、私は訊いた。
「腱の症状なら肝、筋腹なら脾、骨なら腎というのもありました。」
佳与が言うと、茉奈が続いた。
「怒りっぽくなったら肝、意味もなく笑うようになったら心、色々考え込むようになったら脾、何だか悲しい気分になり落ち込んでいくようなら肺、不安な気持ちが増してきたら腎とか、決断力がなくなってきたら肝、考えや気持ちがまとまらなくなってきたら心、思いや考えがあちこち行くようなら脾、人間関係がイヤになってきたら肺、何かをやろうという気持ちが持てなくなったら腎などというのもそうですよね。」
「まぁ、そんな感じで良いと思います。」
私はそう言って、話を次に進めた。

「次に脈診ですが、これはもう大丈夫ですね?」
「二つの並んだ虚を見つけて証を立てるんだということはわかりますが、診れるかどうかと言えば、全然だめです。」
佳与が言ったので、私は話した。
「それは沢山の人の脈を診て、沢山の経験を積む必要がありますが、ともかく自分なりに証を立てて、治療してみて、治療後に脈がどう変わったかを診て、何度もやり直せば良いんですよ。」
「脈が良くなればいいんですから、迷っても、とにかくやってみる、そして確かめていくってことですね?」
と、茉奈が言った。

「脈の診方のヒントですが、まずは寸関尺同士比較をし、二つ並んだ虚を見つけることです。
そして、三つ並んでいるような結果が出たら、真ん中を残して、その母と、その子を比較するんです。」
「そうか、その二つは相剋関係なので、どちらかが虚になる訳ですね。」
佳与が言うと、茉奈が具体的な例を出して話し出した。
「寸同士では肺、関同士では脾、尺同士では腎が虚と感じた場合だと、脾、肺、腎と三つが並んで虚になるけれど、脾と腎は相剋なので、それを比較して、脾臥虚なら脾と肺で肺虚証になり、腎が虚なら肺と腎で腎虚証になるって訳ですね?」

「他に注意点はありませんか?」
佳与が訊いた。
「そうですねぇ、比較して同じように感じた場合、陽を診てみるんです。
例えば寸同士で肺と心が同じように感じた場合、その陽である大腸と小腸を比較し、若し大腸が強く感じたら、陰陽もシーソーなので、大腸の陰である肺の方を虚として考えてみるんですね。」
「寸関尺だけでなく、相剋や陰陽や様々な関係から脈を診ていくんですね」
と茉奈が言ったので、私は大きく頷いてみせた。

「次に治療の話に移りますね。」
私は二人の顔を見た。
「治療には基本的に三つの方法があることは既にお話したと思いますが、まずは脈診による本治法で、これは原則として、自経の母穴と母経の自穴を用いて下さい。
その場合の注意点ですが、鍼治療と同じように、ツボに押し手を当て、その間を少し開けて、その間に向けて剣指で右回しにしながら気を入れていくと良いですよ」

「押し手って何ですか?」
佳与が訊ねた。
「左手の親指と人差し指で印を組むようにして指を合わせ、それをツボに当てるんです。
鍼ならその間に鍼を立て、鍼を刺したり押したりするんですが、私たちの場合は、岩は気功鍼なので、押し手を作ってツボに当てた後、指を少し開き、その間から気を入れるようにするんですが、その方が、正確にツボに気を入れられるんですよね。」
「こうですよね!」
と、茉奈が押し手を作り、右手を剣指にして、そこに指先を向けて右回しにしてみせた。
「そうかぁ、その方がツボという目標がしっかりしますよね。」
佳与が首を縦に振りながら言った。

私は話を続けた。
「その後に症状に対する気当てで、これは気のボールを当てるか、包むかにすれば良いでしょうね。」
「邪気はどうやって取るんですか?」
と茉奈が訊いた。
「患部に手を向けたら、そこから手足の先に向かって、手で気を誘導するようにして下ろしていき、最後にパッと払い出すようにするか、患部のところにある邪気を手で握って、外へパッと捨てるようにすれば良いと思います。
一回だけじゃなく、患者さんの痛みが和らぐまで続けた方が良いでしょうね。」
「なーるほどー!」
と佳与が言った。

「そして、最後に丹田に気を入れてあげて下さいね。
これをしっかりすれば、病は回復の方向に向いてくる、その向く力を強くしますからね。」
二人は納得したような顔になった。

「臨床というのは、一対一で、そこに同じものは一つもないので、色々と工夫をしなければならないんですが、だからと言って、基本原則を無視しては治療にならないというか、治療に確信が持てなくなりますので、脈診による本治法と、丹田への気当てを柱に、修練を積み重ねていって下さい。
という訳で、気功治療の勉強はこれで終わりますが、わからないことがありましたら、いつでも訊きに来て下さいね。
あなた方と勉強できたこと、とても楽しかったですよ。
では、これにて終わりにします。」
私が言うと、二人は少し涙目になりながら両手をついて大きく頭を下げた。
「ありがとうございました!」

夕焼け空が暗くなりつつある道を二人は振り返り振り返り帰っていった。
秋の陽が落ちるのは早かった。

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プロフィール

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鍼灸師・気功法講師。

和歌山県出身。日本福祉大卒。名古屋市内に鍼灸院「和気」を開院(2015年、閉院)。林茂美師に師事し気功を習得。愛知県名古屋盲学校専攻科非常勤講師(2016年退職)

現在は名鉄カルチャースクールにて講師活動のほか、名古屋市内にて各種の気功講座、気功教室を担当。

また、2013年より京都、妙心寺内大心院にて気功講習会を開始。現在に至る。

趣味は、陶芸、京都・奈良ウォークなど。

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