“鉄道のまち”として新幹線開業を待つ敦賀 2019/11/14

敦賀赤レンガ倉庫の脇に保存されたキハ28急行形気動車

北陸本線の敦賀駅から北へ約2キロほどいくと、日本海に面した敦賀湾に出ます。

ここはかつて、東京からロシアを経てヨーロッパに向かう欧州連絡列車「欧亜国際列車」が発着していた地です。そのために敦賀駅から分岐する鶴賀港線があり、鶴賀港駅付近には関連施設が多くありました。

それらの役割を今一度見直し、観光資源にしようとの動きが敦賀市で続いています。いまは金沢止まりの北陸新幹線が2022年度末に敦賀まで延伸される予定で、それに間に合わせるべく準備を進めているところですが、すでにかなり整備がされていて観光地としての魅力が高まっています。

上の写真に写る敦賀赤レンガ倉庫はそのひとつで、明治38年にニューヨークスタンダード石油が建設した石油倉庫だったそうです。国の登録有形文化財となり、いまはカフェ・レストランと巨大鉄道模型ジオラマ見学施設となっています。

その建物脇には、キハ28 3019が保存されています。国鉄急行形気動車を代表する形式で、運転台の窓が側面まで回り込んでいるパノラミックウィンドウ・タイプです。筆者も含めて、このキハ28-キハ58編成を懐かしく思う中高年層は多いものと思います。

復元された旧鶴賀港駅舎

明治35年にシベリア鉄道が開通すると、敦賀〜ウラジオストク間に定期航路が開設されました。この航路に連絡する列車として、新橋〜金ケ崎(のちに鶴賀港駅に改称)の「欧亜国際列車」が明治45年から太平洋戦争勃発まで運転されていたのです。戦時中、杉浦千畝氏による「命のビザ」でナチスドイツの迫害を逃れたユダヤ難民がシベリア鉄道に乗り難を逃れ、日本へ上陸したのもここ鶴賀港駅でした。

その駅舎は上の写真のように復元されています。もとの駅があった場所とは異なりますが、前述の敦賀赤レンガ倉庫から近く、背後が敦賀湾になっているところです。館内も再現されているため、当時の駅舎の様子を感じられます。また鶴賀港駅や鶴賀港線に関する資料が展示されていて、ヨーロッパへの玄関だった当駅の位置づけを確認することもできます。

鶴賀港駅の施設として現存するランプ小屋

鶴賀港駅の関連施設の多くは取り壊されていますが、現存するのがこのランプ小屋です。さほど大きくもないレンガ壁の建物ですが、屋根が瓦葺きになっているところが日本的です。

明治から昭和初期にかけては、次第に電気が普及する時期ではあったものの、列車内の照明はもちろん、信号機にもまだランプが使われている時代でした。そのランプに使う燃料を保管する倉庫がこのランプ小屋でした。

敦賀市のコミュニティバス「ぐるっと敦賀周遊バス」の金崎宮停留所を下車すると目の前にありますが、駐車場のフェンスの先にあるため、意外に目立ちません。敦賀赤レンガ倉庫から歩いても5-10分の距離です。

鶴賀港線跡の踏切はガードで仕切られている

ランプ小屋がある金崎宮停留所に行くときに通るのが、この鶴賀港線の踏切です。ご覧のとおり線路に対して白いガードが設置されていて、列車は走れなくなっています。よく見ると、左上の信号機も線路に対して直角方向に向けられています。ちなみに、右手の立ち木や建物があるところが金崎宮停留所で、その先にランプ小屋があります。

なんだか寂しい光景ですが、いま、ここに蒸気機関車を走らせる検討が進んでいます。日本鉄道保存協会という保存鉄道の関係者がつながる会があり、筆者が代表を務める鉄道フォーラムも同会の賛助会員になっています。

先週記した北陸本線の旧線跡をめぐるD51形バスでのツアーや今回紹介する鶴賀港の鉄道関連施設は、この日本鉄道保存協会の総会で9月末に行ってきたところです。
D51形バスが走る廃線跡

その日本鉄道保存協会が、福井県からの依頼で旧鶴賀港線での蒸気機関車走行検討と、走らせるための車両についての調査業務を昨年度から担っているのです。

同総会であった経過報告によると、上の写真の踏切の先の区間300メートル程度を使い、敦賀駅から移設する転車台も使っての運行を構想しているようです。本物の蒸気を使った運転になるか、蒸気機関車形の車両になるかも含めて、実現に向けての検討が進むことと思います。楽しみですね。

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(有)鉄道フォーラム 代表取締役

1958年愛知県犬山市生まれ。大学卒業後に10年のサラリーマン生活を経て、当時話題だったパソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを設立。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退した際に、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。

一方、鉄道写真の撮影や執筆なども行い、「日本の“珍々”踏切」(2005.2 東邦出版刊)、「鉄道名所の事典」(2012.12 東京堂出版刊)、「トワイライトエクスプレス」食堂車ダイナープレヤデスの輝き−栄光の軌跡と最終列車の記録−(2015.9 創元社刊)など著書多数。

当「達人に訊け!」をまとめた書「東海鉄人散歩」(2018.7)が、中日新聞社から刊行された。

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