長寿の星カノープスを見よう 2018/12/29

大晦日の深夜、おおいぬ座のずっと南、地平線すれすれにカノープスは昇る

 何度新年を迎えても、星座たちは何の変化もなくいつもと同じように輝いている。オリオン座を中心に、三つ星を北西の方向に延ばすとおうし座があり、南東の方向に延ばすとおおいぬ座がある。当たり前のことだと言ってしまえばそれまでだが、何もかもがめまぐるしく変化する時代に、おじいさん、ひいおばあさんが見上げた星空を、自分も眺め自分の子供も孫も同じ星空を見上げるのかと思うと、なんだか過去と現在と未来は目に見えない絆でしっかり結ばれているように思えてきて、妙に感動してしまったりする。

  全天で最も明るい恒星、おおいぬ座のシリウスが南中する20分ほど前に、シリウスに次いで2番目に明るい恒星、りゅうこつ座のカノープスが、南の地平線わずか3°の地平線スレスレのところに顔を出す。

カノープスの南中高度は南ほど高い。東海地方では3°程度にしか昇らない

 日本各地で地平線や水平線スレスレに見えるこの星には、昔から気がついていた。代表的な呼び名は、『めらぼし』、これは房総半島南端にある布良(めら)港の名を取ったものだ。『めらぼし』は、嵐のために海で死んだ漁師の魂が海上に現れて、仲間の漁師を呼んでいるという、不気味な言い伝えが残っている。これは海が荒れる2月の宵に姿を見せることから創造されたのだろう。

 同じ星でもところ変れば、全く違う見方をする。特におもしろいのは、少ししか姿を見せないことから、中国四国地方では『横着星』、その他の地方でも『不精星』『道楽星』などと呼ばれ、なまけものの代表格になっている。他に海のしぶきがざぶざぶかかるように見えることから『ざぶざぶ星』という呼び名を与えている地方もある。

カノープスは、シリウスに次いで2番目に明るい星。地平線付近の透明度が良ければ明るく見える

所変わってかつて中国の都であった洛陽や西安では、地平線スレスレのところにほんの短い時間しか見えないカノープスを南極老人星と呼んで、この星が南の地平線上に明るく見えたときは、迎える年は天下泰平・国家安泰のしるしだと慶ばれたという。また、この星が赤く見えることから、七福神の一人で酒好きでいつも赤ら顔をした寿老人に見立てていたため、この星を拝むことができたら、長生きができると尊ばれた。

2018年1月3日に自宅の屋上から見えたカノープス。まさに長寿の架け橋。露出30分

 このカノープスが、東海地方ではちょうど大晦日の新年を迎える23時40分ごろに南中する。このおめでたい星を、除夜の鐘を聞きながら拝むことができたら、きっと迎える年は平和で健康な1年になるだろう。紅白歌合戦が終わるころ、南の空が地平線まで開けたところに出かけて、ぜひカノープスを見つけよう。そして長寿と世界平和を願うことにしよう。

 もし、大晦日の夜に見えなくても大丈夫。1月中旬なら午後11時ごろ、下旬なら午後10時、2月中旬なら午後9時ごろ、下旬なら午後8時ごろが見ごろとなる。

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天文研究家

1953年三重県四日市市に生まれる。学生時代は名古屋市科学館山田卓先生の下で天文普及活動に参加。天体望遠鏡メーカーに勤務の後、1992年にフリーとなり星を見上げる楽しさを広めるべく、あさだ考房を設立。

天文・科学雑誌に記事を連載、単行本・プラネタリウム番組シナリオ執筆のかたわら、天文宇宙関連の講演・講座、プラネタリウム解説を行っている。

最近は、生涯教育を意識した、プラネタリウム運営支援、プラネタリウム解説指導にもかかわっている。日本天文学会会員、NPO法人アイ・プラネッツ理事長。

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