【地名の由来34】南海トラフ津波-「神社」に逃げよう! 2013/4/20

全国にも珍しい水除けの神様(岐阜県羽島市)

またまた淡路島で大きな地震が起きました。いったい日本列島はどうなっているのでしょう。この列島ではいつどこで地震が起こっても不思議ではないのです。東日本大地震の後、もっぱら福島県・茨城県・千葉県あたりに地震が続いていたのですが、今回は一気に飛んで関西エリアとなったのです。ちょっと心配ですね…。

今回出した『地名に隠された「南海津波」』(講談社プラスアルファ新書)では、津波から逃げる場所として「街道」と「神社」をあげました。「街道」については前回述べたので、今回は「神社」について述べてみましょう。

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直接的なきっかけは昨年11月に出された『神社は警告する』(講談社)という本でした。3名の著者はテレビ番組に携わるジャーナリストで、東日本大地震を追って行く中で、「神社の前で津波が止まったのではないか?」ということに気づき、それを丹念に調べていったものです。

確かに神社の前で津波は止まっているように見えます。その裏をいうと、平地につくられた神社は津波で流されるごとに高台に移っていったということですが、これも1000年以上もの長い歴史を伝えている神様のなせる技とも言えましょう。

日本武尊の拠点となった熱田神宮は、言うまでもなく高台に鎮座しています。どんな津波が来ようと、熱田神宮は安全です。そのことを古代の人々は知っていたのです。

岐阜県羽島市の「江吉良(えぎら)町」に全国でも例がない「水除神社」を発見しました。名鉄竹鼻線・羽島線の駅に「江吉良駅」があります。駅からほど近いところに街道筋の道標があり、その先にその「水除神社」はあります。

素朴な神社で芭蕉の「市人にいで是うらん雪の笠」という句碑が建てられている以外にはこれといった特色があるわけではありません。ところが、神社は明らかに高台に位置しており、洪水などの際には「水除けの地」となり、そこから水除けの神を祀ったものと思われます。

「江吉良」という地名も全国に例がない珍しいものです。「えぎら」とは蘆葭(ろか)の異称で、「葭簀(よしず)」のことを「えぎら」と呼んでいる地域もあるとのことです。したがって、「江吉良」とは「よし」や「あし」の生い茂っていた島、水辺ということになります。そんな地域だからこそ、「水除神社」が必要とされたのでしょう。

東海道線の浜松駅の一つ手前の「高塚駅」のすぐ南に「熊野神社」という小さな神社があります。その境内の奥にこんもりと高くなっている山があり、「高塚」と呼ばれています。その昔、宮司さんが「この地に高い丘を作って人々を救いなさい」という夢を見て、大きな塚を築いたところ、安政の大地震(1854)が起こり、ここに避難した人々は助かったと伝えられています。

戦前の国定教科書にも書かれた「稲むらの火」の話(和歌山県広川町)はあまりにも有名ですが、ここでも高台の神社に逃げて多くの人々が助かっています。

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プロフィール

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ノンフィクション作家

1945年長野県松本市生まれ。東京教育大学(現筑波大学)、同大学院博士課程修了。筑波大学教授、理事・副学長を務めるも、退職と同時にノンフィクション作家に転身。

柳田国男研究をベースに、学問の狭い枠を超えた自由な発想で地名論を展開。最近出した『名古屋 地名の由来を歩く』(ベスト新書)、『地名に隠された「東京津波」』(講談社+α新書)はそれぞれご当地でベストセラーに。新著『名古屋「駅名」の謎』が好評発売中。

その他、「地名を歩く」シリーズでは「京都」「東京・江戸」「奈良」編、「駅名の謎」シリーズでは「大阪」「京都奈良」「東京」がある。テレビ・ラジオなどでも活躍。博士(教育学)。

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