韓国では「大盛り」日本では「お代わり」 【前編】 2014/2/6

韓国では、ある人のために御膳を調える際、その人が食べられると予想される量より多めに食器に盛り付けて出すのは、かなり大きな意味を持ち、礼儀でもあります。

一見、浪費のように思われる韓国人のこのような食風習には合理的な思考では割り切れない韓国人の意識構造が働いています。

朝鮮時代、宮廷の婚礼・還暦などの慶祝宴会用のお膳「고배상 (高排床)」 注)
朝鮮時代、宮廷の婚礼、還暦などの慶祝宴会用の「お茶菓子の膳」

■ 韓国で勤めていた頃、ボス(boss)から「来訪客には必ずお茶(飲み物)を出すように」と言われていた「朴」ですが、出されたお茶に口も付けず帰る方が多かったので、ある日から「朴」は勝手に「お茶、如何でしょうか」と訊いて、「入れてほしい」と返事をするお客のみお出しすることにしました。

それに気づいたボスから「要る要らないは訊かず、とりあえずみんなにお茶を入れてほしい」と言われました。「どうして??私はその指示納得いかないわ」との「朴」の気持ちを察したボスは、「韓国人は偉い人の前では殆どの人が欲しいと言えず遠慮してしまうから」とのご説明を。

■ ある日、ボスのスポンサー(sponsor)である超お金持ち「Hさん」と話をしていたところ、「Hさん」にいきなり「今から帰るけど、君も一緒に来い」と言われ、突然「Hさん」の自宅へ同行し、夕食を……(韓国ではこんなパターンしょっちゅう有り)

思ったより質素な食事ではあったのですが、「Hさん」の奥さんから「もっと召し上がるように」と何度も勧められましたが、「朴」はなぜか 〜 遠慮してしまったんだよ 〜

「Hさん」は、「田舎の貧しい親戚や知人らがよく訪ねて来るんだけど、お腹が空いていたはずなのに皆が遠慮する。」「韓国人は何もない貧しい家では、あれ頂戴、これ頂戴、もっとほしいなど堂々と言うけど、食べ物なんか腐るほどあるお金持ちの家ではイジケテあまり食べない。」「貧しい家では差し控え、暮らしがましな家では遠慮すべきではない。」とのコメント(comment)を。

「韓ドラ」見た限り、韓国人は日本人と比べ自分の意見や思っていることハッキリ言う方で、遠慮のない国民性のように思われているかもしれないけど、それはちょっと誤解!!韓国で生まれ育った「朴」も韓国の社会に「本音」と「建前」の文化が存在すること知らなかったからね 〜

◆ 食べ盛りの日本人男性の皆様!「大盛り」と「お代り自由」どちらがいいでしょうか?との問いに、

★ 「あのお〜、すいまぁせぇーんっ!お代ぁわりぃくださぁあーいっッ!」って、お店の人に声を掛けるのがイヤになる。めんどうでなかなか気が進まない。

★ 定食のお店に置いてあるジャーで、各自が自由にご飯をよそえるなら「お代わり自由」がいいけど、お代わり自由のお店でも、最初から「大盛り」で注文する。

との書き込みが見られるあるサイト。

「和食」では無駄を省くため、少なめに盛り付けをして、足りなかったらお代わりすればいいとの考えのようですが、「韓食」では十分に食べて余るほどの量を盛り付けるのが礼儀。

多めに出された料理は少し食べ残すのがマナー。これはゲストからホストへの気遣いで、「食べ残すほどお腹いっぱい頂きました」との証し〜♪

日本では腹八分で、飽食より小食の方が健康に良いとされているみたいだけど、韓国人は日本人と比べ、一般に満腹になるまで食べがち。経済面や栄養面などから考える際、韓国の食習慣は非合理的と言えます。

「無駄」として排除されるべきと思われる「大盛り」。必要以上の部分は、韓国社会において排除すべきでない重要要素。「無駄の食」には韓国人の「思想」、より具体的に言えば、「思いやり」「徳」「施し」の意味が潜在しているのであります。

韓国の「高盛り」は、祖先から伝承されてきた食の慣わしであり、豊かな心であります。韓国人の祖先にとって「飲食物」とは「富」や「権力」の象徴であり、「富裕層」や「権力層」から「貧困層」や「非権力層」への「思いやり」の意識構造が働いているのです。

(つづく)

現在、韓国の「祭事」(法事)などに用いられる「お供え膳」
「両班」(支配階級)を多く輩出したと言われる「慶尚北道☆安東地方」の伝統的な結婚式に用いられる「お祝いの膳」、「고배상 (高排床)」

注)「고배상 コベッサン (高排床)」とは、婚礼、還暦などを祝う食膳に食品を高く盛り付けて整えたお膳で、韓国の伝統的な献立の中で一番丁重で立派な献立である。高排床は慶祝用献立のみではなく、祭礼の際にも慣用する。この献立は、中国の「周」や日本の「平安」時代にも見られる献立で、朝鮮半島の「高麗」時代以前の文献がないので明らかではないが、16世紀〜17世紀初期から広まったと考えられる。

韓国では「大盛り」日本では「お代わり」 【後編】」へ続く

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韓国ソウル出身。韓国国会事務局退職後、1988年来日。大学で高等学校教諭1種免許(国語)取得。大学院で日本文化専攻。

名古屋市の官公庁などの翻訳・通訳人として活躍後、大学や名古屋市内の生涯学習センターなどで「コリア文化」に関する講座を担当。

現在は愛知大学、中京大学、中日文化センター、愛知大学オープンカレッジなどで韓国語講師をつとめる。

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